一緒にいる時間 「私も譲君と働きたい」 「え!?」 望美が突然、譲がバイトしているレストラン で働くことになった。 「おー!!いいねぇ。有坂の彼女もまた・・・ 制服が似合う」 「ありがとうございます」 店長から渡された制服を着た望美。 店長は望美が気に入ったのか制服姿にご満悦。 「なぁ望美ちゃん。よかったら仕事終わったら 俺と・・・」 「ゴホン!」 譲が大きく咳払い。 「・・・っと・・・。じゃあさ、メアドだけでも・・・」 「店長!!さっさと店に出てください」 店長にドアップで迫る譲。 「はいはーい。んじゃ有坂君、彼女に手取り足取り 仕事教えてあげて・・・。手取り足取りね☆」 「やらしく笑わないでくださいッ(怒)」 バタン! 店長は二人にウィンクして厨房へ出て行った。 「うふふ。いい店長さんね」 「まぁ・・・。若い女性に目がない点を除けば」 「うふふ」 店長の女癖は少し気になる譲だが 内心は嬉しい。 (・・・先輩と・・・一緒に居られる) 「じゃあよろしく譲先輩」 「え・・・。そんな・・・。こちらこそ」 握手・・・。 お互いに違う学校へ行ってしまった。 共に居る時間が増えた・・・ (譲君・・・) (先輩・・・) 見詰め合う二人・・・ 「こらこら。職場デートは禁止だよ〜!!」 店長からかわかわれながら 譲と望美は共に働き始めた。 「・・・で。オーダーを聞いたらこちらで・・・」 「はい」 譲と望美のコンビは店の中でも公認(?)となって。 飲み込みの早い望美はたちまち店の看板ウェトレスとなり・・・ 「せんぱ・・・じゃなくて春日さん、3番テーブルお願いします!」 「はい!」 (何よ。あれ。みつめあっちゃってさ・・・!) だが、その働きぶりは譲ファンの女子ウェイトレスたちの反感を 買っていたのだ・・・ 「春日さん。ちょっと」 「はい」 「店長がね。ワイン貯蔵庫、そうじしといってさ」 「わかりました」 望美は同じウエイトレスの同僚に言われるまま 地下の貯蔵庫へ行く。 (真っ暗だわ・・・変ね) ガチャン! (!?) 入り口の扉がしまった。 (え・・・うそ!) ガチャガチャ。 外側から鍵を掛けられて内側からは開かない・・・ (・・・ど、どうしよう!) 「だ・・・。だれか!!だれか・・・!」 押してみるがびくともしない。 「だれかいませんかー!!」 何度も叫んでも誰もこない・・・ (どうしよう・・・。もうみんな帰ったはずだし・・・。 そうだ!携帯・・・) 携帯を取り出してみるが地下のせいか電波が圏外になって かからない。 (どうしよう・・・。譲くんにも連絡取れない・・・) 望美は真っ暗なワイン貯蔵庫に座り込む・・・。 (・・・店長か誰か・・・残ってくれてないかな・・・) 望美はしばらく誰かこないかと1時間近く待ってみた。 暗い貯蔵庫。 ワインボトルがいっぱい置かれている。 (高そうなものなんだな・・・割ったりしたら大変。 じっとしてよう・・・) それにしても・・・。自分を閉じ込めた同僚。 (多分・・・。譲君がすきなんだな・・・) されたことは腹が立つけれど・・・。 彼女と公認されていきなり店に入ってきたら そりゃ面白くないだろう・・・。 (・・・私のわがままだったかな・・・) 譲に迷惑がかかるんじゃないか・・・ そう思い始めた。そのとき。 ドンドン 「先輩!先輩!」 「譲君!?」 「いるんですね・・・!今開けますから!!」 ガチャ。 譲は急いで鍵を開けた。 「先輩・・・!よかった!無事でしたか・・・!」 ぎゅっと望美を抱きしめる譲。 「譲君・・・。どうして・・・?わかったの?」 「先輩の携帯が繋がらなくて・・・。なんだか嫌な予感がしたんです。 でもアパートにも戻ってないみたいだから・・・。もしやと 思って店に戻ってきたんです。そしたら貯蔵庫へのドアが開いていたから・・・」 「・・・譲君・・・。じゃあ私の想いが伝わったのね。 早く譲君に会いたい・・・って」 「///そ、そんな悠長なことじゃないですよ。先輩は 閉じ込められたんですから・・・!」 譲は照れながら眼鏡をくいっとあげた。 「一体誰がこんなことを・・・!店長に言って犯人を捜さなければ」 「それはやめて」 「え?何故です?」 望美は少し言葉を溜めてから譲に話す。 「・・・譲君の彼女・・・なんて新参者が入って・・・。 周囲にはちはほやされる風に見えるのよ。きっと・・・」 「だからってこんな酷い真似・・・」 「いいの・・・。お願い大事にしないで。こうして譲君が 助けに来てくれたんだから・・・」 「先輩・・・」 譲は望美を抱き寄せる・・・ (・・・迂闊だった・・・。オレのしらないことろで 先輩を目の敵にする人がいたなんて・・・) 「すみません。先輩・・・。オレ・・・。先輩のこと ちゃんと守りますから・・・」 「うん・・・。私も譲君に迷惑かからないように 頑張る・・・。嫌なことされたって負けないから!」 拳を握ってウィンクする望美・・・ そんな望美がいじらしく・・・ 強く強く抱きしめる・・・ 「先輩・・・。何があってもオレが先輩守りますから・・・。 先輩・・・だからこれからもオレと一緒に・・・ここで 働いてくれますか?」 「・・・喜んで・・・。っていうかやっぱり私・・・。 譲君と一緒にいたい・・・。少しでも長く・・・長く・・・」 「先輩・・・」 普段、大学と高校・・・。別々の環境で過ごしている。 同じ時間。同じ環境で一緒に居られたら・・・。 「・・・一緒にいたいの・・・。譲君・・・」 「・・・先輩・・・。オレだって・・・。オレだって・・・!」 ギュウッ 望美を抱きしめる譲の腕に 力が入る・・・。 「・・・先輩・・・。オレ・・・。来年、先輩の大学の 近くの大学受けます・・・少しでも先輩の近くに居たいんだ・・・」 「譲君・・・」 「・・・先輩・・・。先輩の時間・・・オレにください・・・。 先輩の生きる時間をオレに・・・」 (譲君それって・・・) 譲は静かに・・・望美の薬指にキスした・・・ 「仮のエンゲージリング・・・なんて・・・(照)」 「うん・・・。私の薬指は・・・譲くんのものだよ」 「先輩・・・」 ワイン貯蔵庫。 ライトに反射して ワイングラスに キスする二人が映る・・・。 ワイン色のキス ・・・少し大人の 味がする・・・ (ちっ・・・これじゃあオレはお邪魔虫じゃねぇか) 貯蔵庫の扉の後ろで店長が様子を伺っていた。 (ふ・・・。譲。今日は貸しにしといてやる。彼女を 大切にな・・・) 扉の前に肉まんの入った袋をそっと置いていく店長。 二人が、店長の粋な計らいだということに気づくのは もう少し先だ。 今は・・・ ワインの香りに包まれて 二人はさらに絆を深めているのだから・・・。 ワインレッドのキス。 二人は何度も確かめ合うように 口付けを交わしたのだった・・・。