永遠に続く甘い夢 男って奴は・・・。 最近本当にそう思う。 好きな女性がいたら。 その想いが強ければ強いほど。 髪の毛の先まで自分のものにしたいなんてそんな独占欲と 常に闘わなくてはいけない。 「譲君。じゃあまたね」 夜。 望美と携帯でいつものように話をして・・・ (・・・。携帯から先輩が飛び出てきたらいいのに) 「おやすみなさい。先輩」 「おやすみ」 携帯を切る瞬間ほど切ない時は無い。 心地いい優しい声が途絶えてしまう。 「はあ・・・」 もうすぐ試験というのに 机に戻っても上の空。 ぺんを持っても浮かぶのは・・・ ”譲君” 望美の笑顔・・・ 笑顔・・・。 「先輩・・・。先輩・・・。会いたいです。会いたいです・・・」 (・・・夢でいいから・・・) 強い想いは 夢となって形に現れる。 (・・・ん?どこだ・・・?) はっと我に返れば そこは自分の部屋で・・・。 (え?え?) 自分は何故だか服をきていない 真下には裸身の望美がシーツに・・・ (え?お、俺・・・?) 「あ・・・。譲君・・・」 (せ、先輩・・・!?) 見たことも無い 色っぽい声と瞳・・・ 「・・・。せ、先輩・・・」 「・・・。あ、あれ・・・。なんで私 こんな格好を・・・?」 望美もはっと我に返ったようで・・・。 「な、なんで・・・って」 この状況は・・・ 「と、とにかくふ、服きてくださいッ///」 「え、で、でも・・・服が見当たらないよ・・・?」 「え・・・?」 譲は辺りを見回した。 ベットの周りにも部屋の中にも女物の服はなく・・・。 (・・・し、仕方ないお、オレの服で・・・) 箪笥を開けるが・・・ (な・・・ない!??) 下着はおろか、タオルすら見当たらず・・・。 (い、一体どうなってるんだ!??) 「ゆ、譲君・・・いいよ。私大丈夫だから・・・」 「だ、大丈夫ってあのですね・・・わッ」 つるんっとすべって そのままベットに落下。 (なっ。なんだ・・・) ふわり。 「・・・!!」 メガネの谷間にやわらかい谷間が・・・ (わ、わわわわ!) あたふた。 慌てて顔を上げると真下に 望美の全身をまたいで・・・ (・・・) お約束的な展開だが 譲の全身が硬直・・・。 「あ・・・ああ、す、すみませんッすみません・・・」 「・・・。ふふ。ふふふ・・・」 「どっどうしてわらうんですか・・・」 「だって・・・。あんまり慌てるから・・・」 (こ、子供扱いして・・・) 好きな女が目の前で 素肌を露にしている・・・ (・・・。何もしない感じない男なんていない・・・) 「言いましたね・・・。先輩オレだって男ですよ・・・?」 「きゃ・・・ッ」 望美の両手をばんざいさせて押さえつける。 「・・・ゆ、譲君・・・」 「このシーツを・・・剥がして・・・。 先輩の全部を俺のものにって・・・。思ってるんですよ・・・? 男って奴は・・・」 電話の向こうから聞こえた声 今・・・ 目の前には 確かな温もりと 色白の肌が 焦がれ焦がれてやまない肌が 在る・・・。 「・・・。もう・・・先輩を誰にも渡したくない・・・」 「譲君」 「先輩・・・。先輩・・・」 焦がれたものが 目の前に 長い髪も 触れたら離せなくなるほどに心地よさそうな ・・・胸元。 「先輩の声・・・。聞かせてください・・・。オレだけに・・・ オレだけに」 「譲君・・・」 望美が手を回す。 「先輩ッ」 「え?」 「譲君。起きて」 「・・・!?????」 ガタン! 「わっ」 気がつくと目の前には教科書と参考書が散乱。 「徹夜してたんだね。ずーっと眠ってたみたいだね」 「え・・・。ああ、そ、そうだったんですか・・・」 ようやくあの甘い時間は夢だと自覚した譲。 どこからが夢でどこからが現実だったかさえ分からないが 目の前にいるのは現実の望美だ。 今日の昼、遊びに来ると約束していたことを思い出した。 (昼まで寝てて・・・なんという夢を・・・。男って奴は・・・) 湧き上がる想いの強さに男としての 本能も混じって (・・・。何だか自分が嫌になってきた・・・) 「ふぅ・・・」 重い重いため息が・・・ 「?どうしたの・・・?」 「いえあの・・・。勉強に身が入らない自分が 情けなくて・・・」 俯く譲に望美は・・・。 チュ! 「・・・!」 「へへ。これで・・・。元気、デナイ?」 「・・・」 譲の頬は一片にカァッと染まって 熱くなった。 「・・・無理しないでね。じゃあね!」 (・・・嫌だ。行かないで・・・!) 夢の続きがまた見たい。 「先輩・・・!」 ドア越しに 帰ろうとした望美の背中から両手で抱きしめる譲・・・ 「譲・・・くん?」 「先輩・・・。俺・・・。幸せです」 「え?」 「・・・先輩が好きです。好きです。好き、好き、好き・・。 好きだ・・・」 ぎゅっと 望美を包む手が 強まる・・・ 「嗚呼・・・。どうしよう・・・。先輩が 好きすぎて・・・。好きすぎて・・・心が壊れそうです・・・」 「譲君・・・」 「・・・オレの治せるのは・・・。先輩だけ・・・。 こうして・・・オレの腕の中にいて・・・。 ずっといて・・・」 望美は深く頷き・・・ 譲の方を見上げる・・・ 「・・・。譲君。ずっといるよ。ずっと一緒に・・・」 「・・・。よかった・・・。オレは壊れなくてすむ・・・。 先輩がいてくれる限り・・・」 硝子に映る二人。 ずっと抱きしめあったまま 離れない。 譲の甘い夢は また続く。 愛しい人が生きている限り・・・。