目薬と恋人 「あー。入らない」 望美は最近、花粉症デビューし、目薬が手放せない。 学校の休憩時間は目薬をさすことが仕事となっている。 だが。 「あー。駄目だ。苦手だわ。目薬差すのって」 芝生広場で悪戦苦闘している望美。 譲がそばで見守っていたが・・・。 「しょうがないなぁ。もう・・・。ほら先輩、僕がやってあげます」 「うん。ごめんね。お願いします」 見兼ねて譲が目薬を受け取った。 望美は正座して顔をあげた。 「じゃあ差しますよ」 「うん」 「目、閉じないでくださいね」 「はあい」 譲は望美の首を手で支え、目薬を差そうとしたが・・・ (・・・) 瞳を閉じて じっと動かない望美・・・。 譲の心は動揺した。 まるで (・・・キスを・・・) しようとしてしまいそうな したくなるような 気持ちがあふれて・・・。 「・・・?どうしたの?」 「!!え、あ、いや、別にっ。じゃ、じゃあ いきますよ・・・?」 ぐっと感情を抑えて 2、3滴、目薬を落として無事に望美の目の中に命中。 「わー。命中!さすがだねー。譲くん」 「・・・い、いえ・・・」 (駄目だ・・・。なんてこと考えるんだ。すぐに・・・) ただ目薬を差すだけなのに ・・・触れたくなってしまう。 「ふふ。じゃあ今度、私がやってあげる・・・っていうか 実験台になってくれないかな」 「え?」 「ほら。いつも譲君に頼むわけに行かないし。 練習しないと」 「・・・。ったく先輩って人は・・・」 男としての衝動をかき消すように 望美はあどけなく笑った。 「仕方ないですね。実験台になってあげましょう」 譲は眼鏡をはずし、芝生の上に置いた。 「じゃあここに寝転がって」 「え・・・ちょ・・・」 望美は自分の膝に譲の頭を強引に乗せた。 「ふふ。どう?この方が入りやすいと思って」 「・・・。あ、あの・・・」 (せっかく気持ちを抑えているのに・・・) 望美の膝のやわらかさが 再び譲の心を揺らす・・・。 「じゃあいくよー」 「・・・お、お願いします・・・(汗)」 自分を見下ろす 望美の瞳・・・。 長い髪が譲の頬にあたって・・・。 (駄目だ・・・。先輩ってひとは・・) グラグラゆれる 焦がれるひとの瞳と唇がそこに・・・。 (けど・・・我慢・・・衝動に負けたら・・・) ただの獣だ。 グッと譲は抑える 「・・・?先輩?どうしたんですか?」 待っても望美は目薬を差そうとしない。 「・・・。な、なんか・・・。譲君の目、見てたら・・・ ドキドキしちゃって・・・」 (・・・っ) 頬を染める望美の 愛らしさに・・・。 「・・・じゃあおあいこだ」 「え?」 譲は起き上がり、目薬を持つ望美の手をとって・・・ やわらかい・・・唇に触れた・・・ 望美もそれを自然に・・・ 静かに口付けの時を受け入れた・・・ 「・・・。おあいこです・・・。 オレだって・・・。ずっとドキドキしてたんだから・・・」 「・・・譲君・・・」 「・・・。先輩。先輩って・・・。オレの心のツボしってるんじゃないですか・・・?ったく・・・」 「・・・。そんなこと・・・」 身をよじって照れる望美。 「これから目薬差す前は・・・一度こうしてから しましょうね。ふふ・・・でないと命中しない」 「・・・譲君ったら・・・。もう・・・っ。花粉症が治るまで しなきゃいけないじゃない」 「オレはそれでもいいですよ?ふふ・・・」 「もうっ・・・///」 くすっと笑い合う二人。 何気ないことで ドキドキして 笑いあって・・・。 こんなときがずっとつづけばいいと 二人は思ったのだった・・・。