一番美味しい朝食 先輩の家に泊まってしまった。 朝、目が覚めて隣にこの世で一番大好きな人が居るなんて・・・ 先輩の長い髪が・・・オレの頬をくすぐる。 あ・・・。先輩が目を覚ました。 「お、おはよ・・・」 「あ、お、おはようございます」 先輩は少し恥ずかしそうにシーツを鼻の頭までかぶった。 ・・・可愛い。 年上のはずなのに・・・ 妹みたいな感じがして・・・ 「・・・あ、あんまり見つめないで・・・。今、 すごく変な顔してる」 「先輩の全部みたいです。ふふ」 オレは強引に先輩のシーツをまくった。 「も、もう!譲君!わ、私何にも着てないのよ」 「ふふ。分かってますよ。昨晩全部みてますから」 「やっ。恥ずかしい」 オレはシーツで先輩を包み、抱きしめた。 「・・・しばらく・・・。こうしていていいですか?」 「・・・うん・・・」 先輩の全部を抱きしめる・・・ 頭の芯がくらくらして・・・ 強引に押し倒したくなってきた・・・ でもさすがにもう朝だ・・・ オレは欲を抑える・・・ 「先輩・・・愛してます・・・」 朝だもんな・・・。キスで・・・我慢しないと・・・ 少し長めのキスをした後・・・ 二人で朝食をつくる。 先輩は一人暮らし。 二人で台所にたっているなんてなんだか・・・ 「新婚さんの朝みたいだね」 「・・・!」 一瞬、オレの心の声が読まれたのかと思った。 「どうかした?」 「いえ・・・。先輩と同じこと考えてたんだなって思ったら嬉しくて・・・」 「・・・譲君・・・」 エプロン姿の先輩がうつむいて頬を染める・・・ ・・・先輩。可愛すぎです・・・ 「先輩。エプロン似合ってます」 「ありがとう」 気障っぽい台詞がぽんぽんでてくる。 トントントン・・・ 先輩がにんじんを切っている。 結構上手なんだな。 「きゃッ」 「先輩!?」 先輩の指から血がでている・・・ 「あはは。ちょっと調子に乗った包丁さばきしちゃった」 「そんな場合じゃないでしょう!」 オレは即座に先輩の指を口にふくんだ。 チュッ・・・ 「・・・っ」 先輩がびくっと肩をすくませる。 こんなときなのに先輩のリアクションにオレはゾクッとするなんて本当に・・・ 怪我した部分に絆創膏を張った。 「先輩は座っていてください。あとはオレが作りますから」 先輩を座らせ、オレは朝食をつくる。 先輩は頬杖をついて俺を見ている。 ・・・なんか緊張するな。 卵を割り、ボールで溶かし、熱したフライパンに 流す・・・ 「ふふ・・・。何だかあの世界で作ってくれたオムレツを 思い出すね」 「え?ああ、そうですね・・・」 「譲君ってほんとすごいなぁって思ったよ。 材料とか違うのにつくちゃって」 「はは。先輩こそ異世界だというのに食欲だけは 健在でしたよね」 「そんなことばっかり覚えてるんだから」 ジュー。 溶かし卵を楕円形に包んで皿に乗せた。 「はい。できましたよ」 「うわ。美味しそう♪」 先輩ったら子供みたいにはしゃいじゃって・・・ ・・・この気持ちって父親的なのだろうか。 ふふ。それも先輩がオレの恋人って特権だよな。きっと。 「ではいただきまーす」 「はい、どうぞ」 スプーンでオレがつくったオムレツをほお張る先輩。 「・・・ふふ」 「?なあに?」 「いえ・・・。本当に先輩があの恐ろしい怨霊と戦った人なのかなって 思って」 「・・・どういう意味。もう。譲君今日なんか毒舌だよ」 口を尖らせて拗ねる先輩。 ・・・可愛いな。怒った顔も。 「でもオムレツとっても美味しいから許しちゃう」 「はい。それはありがとうございます」 先輩ってば・・・ 口元にケチャップつけちゃって・・・ 「先輩。口元、ついてますよ。動かないで」 オレは指を伸ばして先輩のケチャップをふき取って舐めた。 「・・・。先輩の味がする・・・」 「なッ・・・何言ってるの」 先輩の頬が真っ赤に染まっていく。 それがとても快感なのはオレはかなり悪い男かな。 「・・・どんなにオレが美味いオムレツを作れても・・・。 オレが一番食べたいのは・・・」 ちらっと先輩に視線を送る。 「・・・先輩だから」 「・・・っ。も、もう〜!!と、年上をからかうんじゃないの!」 「・・・今・・・食べちゃいたいな。先輩が可愛いから」 「〜ッ!!!」 オレの一言一言に一喜一憂する先輩を閉じ込めておきたい気持ちだ。 「・・・先輩」 「なあに」 「・・・ずっと・・・。先輩のために朝食つくりたいな。オレ・・・。 ずっと・・・先輩のそばで・・・」 遠まわしなプロポーズだけど・・・ 先輩、気づくかな。 「・・・それって・・・」 鈍い先輩でも分かってくれたらしい。 「・・・。今はまだ青い子供だけど・・・。強い男になります。 だから・・・。先輩の未来をおれにください」 「譲君・・・」 「・・・プロポーズの予約です。オレ、せっかちだから・・・」 先輩の返事が聞きたい。 「・・・。私のほうこそ・・・。いつか譲君のお嫁さんにしてください」 先輩はうつむいてもじもじさせている。 「・・・先輩・・・。ありがとう」 「も、もう・・・。今朝は完全に譲君のペースね・・・」 嗚呼先輩。 先輩。 可愛すぎます。 「・・・譲君、”あれ”しようか」 「あれ?」 一瞬、オレは妙な想像をした。 こんなに・・・助平だったか?オレ。 先輩がいったあれ、とは・・・ 「はい。あーん・・・」 フォークにさしたにんじんをオレの口に入れる先輩・・・ 新婚がやるお約束のあれ、だった。 「ったく・・・先輩って本当に・・・可愛い人ですね・・・」 「はい、あーん・・・」 ポリ。 先輩が運んできたにんじんをオレは食べた。 「・・・先輩の味がする・・・ふふ・・・」 「もうっ。そういう表現やめてよね・・・」 照れる貴方が大好きです。先輩。 将来・・・結婚したらいやってほど、しましょう。 オレの可愛い未来の・・・ 奥さんへ・・・。