愛の予習復習 ふぅ。 先輩が受験する大学はかなりレベルが高い。 だから予習復習は念入りに。 学校から帰ってすぐに机に向かう。 でもノートに浮かぶのは・・・ ”譲君・・・” 「あーくそ!」 集中できない。 オレを呼ぶ先輩の声が・・・耳の奥で響く。 それも甘くオレの背中をくすぐるような声で・・・。 「今は勉強が第一!恋愛は・・・」 ”譲君” 「だああ!!しっかしろ!!」 髪をぐしゃぐしゃにしたって俺の幻聴は消えない。 勉強第一と言っている理性と好きな人を思い浮かべてしまう本能が オレの箍をはずさせる。 ”譲君” ああ駄目だやっぱり消えない・・・ 「ゆーずーるくん!」 「わあ!」 ガタン! な、なんで先輩がいきなり背後に現れるんだ・・・! 「あんまりべんきょーばっかりしてるとおつむがかたくなっちゃうよ」 いつのまに部屋に入ってきたのか・・・。 そういえば今日は家にはオレ一人・・・。 「何度もインターホン鳴らしたんだよ?気がつかなかった?」 ・・・。先輩の妄想をしていて気がつかなかったいえやしないさ。 「せ、先輩の方こそ・・・。今日は友達と図書館で勉強じゃ・・・」 「うん。でもなんかね、周囲がカップルばっかりで・・・。何だか 勉強する雰囲気じゃなかったの・・・」 「そ、そうですか・・・」 ”カップルばかりで・・・”と言ったときの先輩の流し目、 一瞬、オレを誘っているように見えた・・・ やっぱりオレ・・・なんか重症だ・・・。 「譲君。譲君の好きなケーキ買ってきたんだ。食べようよ」 「え、あ、はい・・・」 オレは先輩にコーヒーを淹れ、勉強は一休みすることにした。 そうだな。 少し休憩して・・・。理性的になろう。 コーヒーの香りが落ち着きさと取り戻させる・・・。 「いっただきまーす!うふ」 先輩は食欲旺盛。 フォーク片手にうまそうにパクパクほおばる・・・。 ふふ。 あどけない先輩にオレの中の浅ましい欲は薄れる。 「ほおら。先輩。口元についてますよ。クリーム」 「あ、ははは。そうだね」 先輩は口元のクリームを人差し指でぬぐってぺロッと・・・ (・・・!!) ペチャ・・・ッという生音にオレの血がざわっと騒ぐ・・・。 先輩の舌が・・・艶かしく・・・。 こ、このぐらいのことでオレは反応するのか・・・!? 「・・・?どうかした?」 「い、いえ、何でも・・・」 先輩は食欲旺盛。 オレは・・・ 性欲旺盛・・・? 嗚呼!そんな自分が嫌だ。 「ふあぁあ・・・。食べた食べた・・・。食べたら眠たくなってきた」 先輩はあくびをしながら背伸び・・・ って!! 背伸びしたとき、体のラインがくっきりと現れ オレの視線はふくよかそうな胸に・・・ ・・・少し・・・大きくなった気が・・・ 「?さっきからどうかしたの?」 「い、いえッ。な、なんでもないですッ・・・」 後ろめたい心が声を裏がえらせる。 ・・・嗚呼もうこんな自分が嫌だ。 ただの助平な男じゃないか・・・。 これなら、一人でいたほうがずっと楽だ・・・。 「・・・譲君。もしかして私、急に来ちゃって・・・迷惑だった?」 「い、いえッ。そ、そんなことは・・・、た、ただ・・・。オレ一人 なんか動揺して・・・」 「動揺?私・・・。何かした」 きょとん・・・とした顔で先輩は言いのける・・・。 せ、先輩そのものがオレを動揺・・・させるなんていえるわけない。 それもやらしい動揺なんて・・・。 「・・・。やっぱり・・・。私迷惑だったみたいだね。ごめん。 帰るよ」 「えっ」 先輩はジャケットを手に取り立ち上がった。 「ま、待って!!違・・・ッ」 オレは必死に先輩の手を掴んだ。 本当は一緒にいたい。 「譲君・・・」 「先輩・・・。先輩は分かってません・・・」 「何を・・・?」 「・・・お、男の気持ち・・・です・・・」 オレと先輩は正座して向き合う・・・。 「男の人の気持ち?」 「・・・お、男って奴は・・・。そ、その・・・。好きな人のことを いつも・・・考えてて・・・」 「私も考えてるよ・・・。譲君のこと・・・」 「あ、ありがとうございます。で、でも先輩のとオレのは・・・ 違うっていうか・・・。浅ましいっていうか・・・」 きっとオレはまた先輩の前で赤面してずれたメガネをなんども なおしているんだろうな。 なんだか情けない・・・。 「何だか私が譲君を困らせてるみたいね・・・」 「だから違うんです!オレは一緒にいてもやらしいことばっか考えるし 先輩の体ばっかり目がいくし・・・。そ、そんな自分が嫌なだけなんですッ!!」 はっ・・・。 オレは・・・。勢いでとんでもなく恥ずかしい台詞を・・・。 その証拠に先輩は頬を赤く染めて俯いてるし・・・。 嗚呼もう・・・。穴があったら入りたいどころか埋まりたい。 「・・・う、うれしい・・・かも」 「えっ」 「す、好きな人に・・・。意識してもらうのは・・・。嫌じゃないよ・・・?」 「・・・」 先輩。 貴方は本当にオレの心を揺さぶることがうまい。 そんな風に言われて俺が自分を抑えられると思いますか? 引き金をひいたのは先輩、貴方です。 「・・・先輩・・・」 オレはそのまま先輩の方を引き寄せた・・・。 「・・・あ、あの・・・。でも・・・ね。きょ、今日は・・・」 「・・・わかってます。”最後”までは・・・。でも少しだけ・・・」 オレはそのまま先輩の頬に手をあてて 唇をふさいだ・・・。 ・・・甘い。 ケーキの甘さなのかそれとも・・・ 先輩の甘さなのか・・・。 このまま押し倒したい衝動が俺の中で渦巻いているが オレは必死で抑える。 ・・・今日は・・・我慢する。 「・・・ゆ、譲く・・・。な、なんかクラクラするよ・・・」 「オレなんかいつもクラクラです・・・。先輩の香りと・・・。 感触で・・・」 チュ・・・っと耳にキスしたら先輩がビクッと肩をすくませる・・・。 先輩の反応にオレはさらに血が騒ぐけど・・・。 ”今日は”我慢。 「先輩・・・。今度の日曜日・・・。また会いましょう・・・。 今日のは”予習”です・・・」 「うん・・・」 「今日の続きを・・・今度は・・・。激しく・・・。そして もっとやらしい”復習”をね・・・」 「///」 長い間、オレの恋は”予習”だった・・・。 けれど今は・・・ ”復習”だ・・・。 もっともっと先輩を知りたい。 切ない”予習”だった分だけ・・・。 オレの恋愛はこれからだから・・・。