彼女の部屋T 〜月よりも星よりも〜 春。 先輩が志望してた大学に無事合格し・・・大学生活が始まった。 オレも進級して高3になって・・・。 「・・・先輩・・・」 いるはずがないのに先輩の姿を探す。 いつも昼休みになったら一緒に校庭で弁当を食べた。 ”私のお弁当より譲君の方がおいしそう” そう言っておれの弁当をつまみ食いした先輩。 「・・・。男一人で弁当か・・・。寂しい限りだな」 先輩の分までつい、多めにつくってきてしまった。 ”譲君、一緒に帰ろう!” 同じ学校にいれば同じ時間を過ごしていた。 ”譲君!” 「・・・先輩・・・」 (・・・先輩に会いたい・・・) 目を閉じると・・・思い浮かぶのは先輩の姿ばかり。 ”譲君・・・” 先輩の笑顔・・・ ”譲君・・・っ譲・・・っ” (だぁああ!!ち、違うだろ。オレに抱かれる 先輩が浮かぶなんて・・・これじゃあ・・・) ただの・・・欲求不満の男だろ・・・何だか自己嫌悪・・・(汗) PPPPP〜! 「わっ」 先輩からメール。着メロが鳴って・・・。 ・・・な、なんかやらしいオレの想像をかぎつけたかのような タイミング・・・(汗) それでも先輩からのメール。 嬉しくないはずがない。 『今度の休み、私のマンションに遊びに来てね』 と書いてあったが・・・。 ・・・先輩。 今のオレにこんなメールよこすなんて。 ああ、またよからぬ妄想が始まりそうだ(汗) つーか始まってるかも・・・。 でも嬉しい。 一人暮らしをはじめた先輩。その先輩の部屋に行けるんだ。 ・・・なんかオレは”彼氏”っていう証拠みたいで・・・。 嬉しい。 ・・・先輩の・・・部屋か。 「おい。譲。お前、なんか、やらしい顔してるぞ」 「えっ」 同級生に突っ込まれててるオレ。 ・・・かなりやばいかもしれない・・・(汗) こんな調子で先輩の部屋に行ったら・・・。 行ったら・・・。 そして休日。 「譲君!いらっしゃい!」 ドアが開くと先輩の満面の笑顔にオレは出迎えられ・・・。 ドキドキ緊張が早速走った。 「・・・どうしたの?入って?」 「いや・・・。久しぶりに先輩の笑顔が見られたから・・・。 なんか・・・。嬉しくて・・・」 お、オレ。オレらしくない台詞が一発目から出るとは・・・。 「・・・や、やだ・・・。譲君たら・・・」 (・・・っ) 玄関先で・・・先輩がはにかむ・・・ だぁああ。先輩。なんて顔するんですか。 頬を染めた先輩にドキドキしすぎだ・・・。 しょっぱなからこんな調子でどうするんだ。 この先には先輩のプライベートルームが・・・。 「そこに座ってて」 「あ、お構いなく・・・」 2LDK・・・。まぁ女子大生の一人暮らしでは定番な広さだろう。 カーテンの色は薄いピンク。無地。 フローリングの床にやっぱり薄いピンクのじゅうたんが・・・。 ああ、どれも先輩色だな。 部屋中から 先輩を感じる。先輩の匂いを感じる・・・。 オレの好奇心が部屋をまじまじと見させる。 「やだ・・・。あんまり見ないで」 「あ、す、すいません・・・」 先輩が珈琲が入ったマグカップを置いた。 可愛らしい動物の絵柄のカップ・・・。 これで毎日先輩、珈琲飲んでるんだ・・・。 マグカップさえ愛しく思える。 「どうしたの?飲まないの?」 「いや・・・。なんか・・・。このカップ可愛いなって思って」 「え?」 「・・・先輩が使ってるカップだから・・・。 なんかドキドキして・・・。間接キス・・・」 うわ・・・オレ、なんてらしくないことをまた・・・。 「・・・もう。ゆ、譲君たら・・・」 先輩が照れる。 オレはそれをみて倍に照れて・・・。 照れる先輩が愛しい。 くそ・・・。 今日のオレはいつにも増してエンジン全開みたいだ・・・。 「・・・せ、先輩、だ、大学のほうはどうですか?慣れましたか?」 「う、うん」 今はまだ昼・・・。 変な雰囲気になる前に何気ない会話で和ませないと・・・。 それからオレと先輩はお互いの学校生活を話した。 でもオレの心はそれより・・・。 一層綺麗になった先輩の微笑みにドキドキして・・・。 何気ない話どころではない。 「ねぇ。譲君」 「はい」 「夕食食べていくよね?」 「え?」 「私の部屋からね。とっても眺めがいいの。夜になると星が 綺麗で・・・。だから譲君一緒に星が見たいな」 ・・・。 今夜?? 星・・・? 一緒に見たい・・・? 嗚呼。オレの頭の中で邪まな妄想に変換されていく・・・。 普通、常識ある男なら断るのが筋なのだろうが。 今のオレにはそんな常識など超えてしまって・・・。 「先輩。料理、上達しましたね」 「ほんと?嬉しい!」 和やかムードで夕食を終えた・・・。 だんだんと外が暗くなっていく・・・。 同時にオレの妙なテンションも上がってきて・・・。 「ほら・・・。見て。譲君」 「ほんとうだ・・・」 先輩が窓を開けると・・・。 ちょうと北斗七星が夜空に光って・・・。 「ふふ。私ね。この部屋に決めたのは星が綺麗だったのが 決定打なの」 「そうですね・・・」 星も綺麗だけど・・・ 先輩の方がもっと・・・ 「部屋の電気消したほうがもっと綺麗かもね」 「えっ」 先輩はそういって電気のスイッチを消した・・・。 薄暗い部屋・・・。 「ね?ムードばっちり♪天然プラネタリウム」 「そ、そうですね・・・」 む、ムードはばっちりでも・・・。オレにとっては”別”のムードです。先輩(汗) 「本当に綺麗・・・」 先輩の横顔・・・。 久しぶりに間近で見てる・・・。 綺麗だ・・・ 見惚れてしまう。 「・・・。綺麗です・・・。先輩・・・」 「えっ」 「あ、いや・・・。星が・・・」 「あ、そ、そうよね。ふふ・・・」 ・・・明らかに今、先輩は自分のことだと思ったはず。 くすぐったい空気が 心地いい・・・。 「譲君。私、嬉しい」 「え?」 「・・・好きな人とこうして・・・。同じ星を見てるなんて・・・。 幸せだなって・・・」 「・・・。オレもです・・・」 先輩の言葉に オレのテンションはさらに上がる・・・。 ”もしかしたら誘ってるのか” そんな期待するほどに・・・。 「・・・先輩・・・。手・・・。つないでいいですか・・・?」 「えっ。う、うん・・・」 やばい・・・。 俺の中の狼が・・・ 顔を出し始めてる・・・。 そっとオレは先輩の手をとった・・・。 「・・・温かい・・・」 「・・・譲君も・・・」 っ・・・!! 駄目だ・・・。 これ以上、先輩に触れたら。 おれは本当にただの狼に・・・。 オレはすんでのところで自分の気持ちを抑え、先輩の手を離した・・・。 「・・・どうして・・・?どうして離すの・・・?」 「・・・だって・・・。なんか・・・。止まらなくなる・・・」 手が震えだした・・・。 なのに先輩はオレの手を握り返してきた・・・。 「私・・・譲君が・・・。すきだよ・・・。本当に好き・・・」 「せ、先輩・・・っ」 「星より・・・ずっと好き・・・」 「・・・っ」 バサ・・・!! 禁を解かれた・・・。 オレは先輩を押し倒して むさぼる様に口付ける・・・ 「・・・先輩・・・。オレ・・・。ずっと先輩が恋しかった・・・」 「譲君・・・」 「教室に・・・。廊下に・・・。先輩の姿ばかり探して・・・。 先輩がいなくて・・・苦しかった・・・」 「うん・・・」 子供のように オレは先輩の胸に顔をうずめてに甘える・・・ 「・・・先輩・・・。会いたかった・・・。ずっと・・・!ずっと・・・!」 「うん・・・」 寂しかった。 オレの独占欲は本当に果てしない・・・。 先輩に会えない時間なんて オレは死ねといわれている様なものだ・・・。 「・・・会えなかった時間の分・・・。愛しても・・・いいですか・・・?」 オレの首に手を回して先輩は・・・ 頷いた・・・ 「先輩・・・ッ!!」 会えなかった時間。 愛し合う激しさも増す・・・。 ベットのシーツが乱れるほどに・・・。 星よりも 月よりも 貴方を愛しています。 そんな想いを先輩にぶつけた・・・。 窓に映る綺麗に輝く星空は オレと先輩を優しく 照らし続けていてくれたのだった・・・。