恋は自転車に乗って 最近、オレは自転車にはまっている。 ・・・理由ははずかしいけど先輩と二人乗りしたいからだ。 「じゃあよろしくお願いします」 自転車をまたぐ俺の腰に先輩が両手を回す。 ・・・かすかに先輩の甘い香に反応して・・・。 「じゃあしっかりつかまってくださいね」 「うん」 ・・・! 先輩がぎゅっと体を密着させてきた。 ・・・密着って自転車乗るんだから仕方ないんだろうけど・・・。 「・・・譲君?どうかした?」 「い、いえ・・・。じゃ、しっかりつかまっていてくださいね」 ペダルを漕ぐ・・・。 「きゃーきもちいいー!」 少し坂道。 先輩は長い髪をなびかせて・・・ けどオレは さわやかな風より 背中の真ん中に感じるやわらかい感触に 神経がいってしまう。 「ねぇねぇ、譲君!もっとスピードだそうよ」 「え?もう。先輩ったら相変わらずなんだから・・・」 先輩の我侭。 ・・・可愛い。 「じゃあもう少しスピード上げますよ」 オレはペダルに力を入れ、漕ぎ出す。 「きゃああ〜♪」 緩やかな坂道。 スピードが出てまっすぐに降りていく。 「わっ!!」 ドサン!! 俺と先輩はたおれてしまった。 オレは下敷きなって。 先輩は!? 「先輩!?大丈夫ですか!?」 「や、ちょっとこっちみないで!」 「え?」 先輩のスカートがおもいっきりめくれて 太ももが・・・ それに・・・/// 「あ、す、すみませんっ」 見えてしまった。 ・・・いや、見てしまった(汗) (白だった) などと覚えている俺はただの助平親父だと自己嫌悪。 「そ、それより先輩、怪我は!?」 「うん。大丈夫それより・・・。自転車が・・・」 ペダルの部分が折れ曲がり チェーンがはずれている。 「・・・ごめんね。私がスピード出してって言ったから・・・」 「いえ、気にしないで下さい」 先輩は心配そうに自転車を覗き込む。 ・・・そういう顔されるとなんか・・・ クるんだよな。 「このくらいならすぐ直りますよ」 男の意地というかなんというか かっこいいところを見せようという心理が働く。 オレはチェーンをはずして 自転車のべたるの部分を少し分解した。 前にも自分で直したことがあったから自信はある。 「わぁ。すごいね、譲君」 「この自転車には・・・。色々と思い出があるんです」 「思い出・・・?」 そう。 先輩は忘れているだろうけど この自転車は・・・ 先輩が・・・ ”わぁ・・・。あの自転車かわいいね。 好きな人が出来たら・・・二人乗りしたいな” そう言っていた自転車なんだ。 ・・・現実にしたかった。 「よし。これで・・・」 ガちゃん。 オレはペダルを試しに足でこいでみた。 「完全に直ってるね〜!!すごい!私の自転車が壊れたら 譲君に直してももらおうっと」 「はは。いつでもいいですよ。何回でも」 先輩のためならなんどでも。 「じゃあ先輩いきましょうか」 だが先輩は後ろに乗ろうとしない。 「先輩・・・?もう乗らないんですか?」 「うん。一緒に歩きたいなって思って。 譲君の隣でゆっくり歩きたいの・・・」 先輩はそういって 俺の横に寄り添って歩く。 「そうですね・・・。二人乗りもいいけれど・・・。 一緒の速度であるいて一緒の風景を見て・・・」 「うん。一緒の速度で・・・」 スピード感もスリルがあっていいけれど やっぱり俺もこちらの方がいい。 同じ景色をゆっくり堪能しながら 二人で同じ道を歩く・・・。 「そうだ。先輩。今度は二人でツーリングしましょう」 「うん!お弁当つくっていくね!」 同じ速度で ずっと二人で 歩んで生きたい・・・。 ずっと・・・。