アイツ〜毎日恋してる〜
アイツ
〜毎日恋してる〜
ジリリリリ・・・!
ベットの上の目覚ましがけたたましくなる。
「う・・・ん・・・」
新米教師日暮かごめ。
眠そうに目をこすりながら起きる。
「おう。かごめ。起きたのか?」
目の前に長髪の少年一人。
綺麗な瞳でかごめを見つめ、そして。
「きゃあッ!」
ドサッ。
いきなり両手をつかんで押し倒す。
「あ、あんた。朝からなにする気!?」
「”何”って・・・。ふッ。かごめ、お前、”する気”なのか」
「なっ・・・(照)」
「オレは充分”する気”だぜ?え・・・?」
年下のはずなのに。
その鋭く、自分を射抜く瞳に見つめられると・・・なんだか
おかしくなりそうで・・・。
「かごめ・・・」
甘く耳元で囁かれ、胸がとろけそうになる・・・。
が。
”犬夜叉はまだ17歳”
かごめの理性が蘇る。
「駄目・・・。駄目だって言ってるでしょーーー!」
バッコーン!
目覚まし時計で一撃され、倒れる犬夜叉。
「何でだよッ!!オレ、ここに住み始めてもう一ヶ月たつんだぜ?我慢の限界・・・」
ぬっとかごめが仁王立ち・・・。
「あのね!一緒に住むって決めたとき、約束したでしょ!あんたが高校卒業するまでは
絶対に清い関係でいようねって!」
「んじゃあと1年も待てってのか!?」
「一年ぐらいどうってことないでしょ!」
「・・・。あのな。健康な17歳の男に向かって・・・」
「・・・17歳だからよ。それにあたしは教師。けじめだけはつけなきゃ!」
きりっとかごめは言った。
「・・・ふぅ。しゃあねぇなぁ・・・。約束は約束だから。オレも守るよ。でも・・・。
オレが18の誕生日には・・・」
犬夜叉はかごめの腕をぐいっとぴっぱった。
「かごめの全部を・・・。もらっちまうからな。約束だ・・・」
また、耳元で囁く・・・。
かごめの髪をそっと掻き分けて・・・。
「あ・・・」
息がかかってかごめの体はゾクっと反応・・・。
(だ、駄目・・・。この流れに身をまかせちゃ・・・)
「け・・・けじめは守るのーーッ!」
バッコーン!
犬夜叉は二発目を食らい、しばらく失神していた・・・。
※
おでこに絆創膏。
Tシャツ姿の犬夜叉とかごめはコンビニにいた。
「・・・何よ。いつまでもへそまげてないでよ」
「けっ。曲げてねーよ・・・」
だけど犬夜叉の顔は怒っている。
そんな犬夜叉を無視してかごめは買い物。
「えーと。買うものは・・・」
洗剤や歯ブラシ、シャンプーをかごに入れていくかごめ。
1ヶ月前までは一人分だったのに。
今は歯ブラシも二本買って・・・。
なんだかそんなささいなことがうれしい。
「お前は嬉しそうだな」
「だって。なんかさ・・・。あんたと一緒に住んでるんだなーって
実感できるっていうか・・・」
「歯ブラシがそんなに嬉しいのか?女ってわかんねーな」
「・・・」
わがままで、独占欲が強い。
その割にはいまいち女心にはうとい犬夜叉。
誰かに”似ている”
「あ、『サタデー』出てる♪」
かごめは雑誌コーナーに行って少年雑誌『サタデー』を立ち読み。
お気に入りの漫画が連載されているから毎週買っている。
「んまぁ!『犬夜叉』ってばまた”かごめちゃん”を置いてけぼりにしちゃってる」
興奮しながら読むかごめ。
「ねぇ。ちょっと、犬夜叉。どう思う?」
「・・・おい。オレのこと、『犬夜叉』って呼ぶのいい加減やめろよ」
呆れ顔の”犬夜叉”
偶然なんとなく読んだ漫画のヒロインの名前と同じだった。
苗字はさすがに違うけれど感情移入はすぐしてしまった。
「だって。”他人”とは思えないのよ。それに、主人公があんたにそっくりなんだもん。
わがままで、独占欲強いし。短気だし・・・」
「だからってなぁ。本名で呼べよ。俺にはれっきとした名前が・・・」
犬夜叉の口を人差し指をあててとめるかごめ。
「あたしの前では”犬夜叉”でいて?ねッ♪」
かごめの笑顔に弱い犬夜叉。
「・・・けっ。好きにしろよ」
「ふふっ。その”けっ”っていうのも同じだ。漫画の『犬夜叉』と・・・」
「だー・・・!女ってホント、わっかんねぇッ!」
「うふふ・・・」
ぷいっとすねる犬夜叉。
そんなしぐさが全部すき。
かごめはそう思う・・・。
コンビニを出た二人は近くの川原に。
「お気に入りの場所が在るの」
かごめはそう言って、近くの城跡の公園に犬夜叉連れてきた。
小高い丘のそこには一本のイチョウの木が生えていた。
「漫画の”かごめちゃんと犬夜叉”がであったご神木みたいでしょ?木の種類は違うけど(笑)」
「・・・。漫画の読みすぎだっての・・・」
やっぱり呆れ顔の犬夜叉。
二人はイチョウの木によりかかって座る。
かごめはさっきコンビニで読みかけだった漫画の『犬夜叉』の
続きを読み始めた。
「ったく。この”犬夜叉”と来たらいつまで二股してんのかしらね」
漫画の話ばかりでこちらの犬夜叉はごろんと寝転がりすね気味。
「・・・。”犬夜叉”はやっぱり・・・。桔梗のことが忘れられないのかな・・・」
「・・・だから。漫画の中に入り込みすぎだって・・・」
「だって・・・。好きな人の心に他に誰かがいてそれでも側にいる・・・。切なくて・・・。
好きな人の態度一つ一つに嫉妬して・・・その繰り返しで・・・」
もし。自分の側にいる『犬夜叉』に他に好きな人がいたとしたら・・・。
そう思うと耐えられない。
相手の全てを受け入れることなんて果たして出来るだろうか・・・。
「お、おい・・・。何も泣くことねーだろ・・・」
犬夜叉はあわてて起き上がった。
「ご、ごめん・・・。ちょっと感情移入しすぎちゃった・・・。変だよね」
「・・・。心配すんなよ。少なくともオレは、お前だけしか見てねぇから。な?
だから泣くな・・・」
かごめの涙をTシャツの裾でそっと拭う。
その手つきは大人っぽくて。
そっと背後からかごめを両手に包み二人で木に寄りかかる・・・。
17歳にしてはがっちりした体格の犬夜叉の腕は
思ったよりも頼もしくて・・・。
「この木の下で誓ってやるよ。世界がなくなったって俺はお前をはなさねぇって・・・」
「・・・。気障・・・。でもやっぱり嬉しいな・・・」
かごめを包む犬夜叉の腕の力が強まる・・・。
手の内におさめたいほどに愛しいから・・・。
言葉でいいから、確認したい・・・。
本気の恋を。
「・・・。オレ、思うけどよ。こっちの・・・”犬夜叉”も・・・。きっとオレと同じ気持ちだと思うぜ・・・」
雑誌を指差して言う犬夜叉。
「うん。きっとそうよ。きっと・・・」
ひらひら落ちるイチョウが一枚かごめの髪につく。
そっと取る犬夜叉。
かごめが犬夜叉の方を見つめて・・・。
「・・・。あのさ・・・。今、すっげ・・・キスしたいんだけど・・・」
「・・・どうしようかな・・・」
「・・・キスならいいだろ」
「・・・駄目」
ぷいっと顔をそむけたかごめ。
「そうか・・・」
しゅんとする犬夜叉。
「う、そ。許可します」
「・・・生徒扱いすんな。ばか・・・」
犬夜叉はかごめの頬に手をあて
少し強引に口を塞いだ・・・。
我慢してきたものを吐き出すように
熱い熱いキスだった・・・。
夜。
「じゃ、おやすみ。犬夜叉」
別々の部屋で眠る二人。
犬夜叉が高校卒業するまで一緒には眠らないと決めている。
「ちっ。いいさ。夢の中で思いっきりかごめ、抱いてやるから」
犬夜叉の刺激的な台詞に真っ赤なかごめ。
「早くねなさい!もうッ・・・」
バタン!
17歳なのに。
翻弄されてしまう。
「ふう・・・」
ベランダに出るかごめ。
夜風が気持ちいい。
天涯孤独の犬夜叉が住んでいた高校の寮が火事になった。
そして犬夜叉と一緒に住みだして一ヶ月。
(あたし・・・。前よりずっとあいつのこと)
好きになってた・・・。
だから。
もしあいつに他に好きな人ができたり、いたりしたら・・・。
胸が痛くなる。
恋をするってこういうことなのかな・・・。
『サタデー』をベランダでペラペラめくるかごめ。
「・・・。お互い、大変な彼氏をもっちゃったけど、頑張ろうね!”かごめ”ちゃん」
そうつぶやいて夜空の月をながめたのだった・・・。
なんか突発的に書いちゃったんです(汗)びみょーにパロディだけどオリジナルみたいな感じ。三角関係とかそういうのなしのもの急に書きたくなりまして。
かごちゃんだけしか見ていない男を。キャラ違ってしまいましたが余力があったらまた書いてみたいと思います。