アイツ
〜毎日恋してる〜
17歳
17歳。
それは少年から大人の男へと階段を登る時期である。
であるから、思春期の欲望はかなりまっすぐで・・・。
「〜♪」
エプロン姿で台所にたつかごめ。
今日は犬夜叉の好きなハムエッグを作っている。
パンに半熟卵を挟んで・・・。
そのかごめに近づく影・・・。
「かーごめッ♪」
「きゃッ!!」
犬夜叉は背後からかごめを抱きしめた。
「もう!びっくりするじゃない・・・」
「だって。かごめの後姿があんまり可愛いから」
「(照)・・・だ、だからって・・・。ハッ」
かごめは犬夜叉の体から石鹸の香りがするのに気づく。
シャワーからあがったばかりだった。
振り返ると犬夜叉は上半身裸で・・・。
かごめの頬は一気に真っ赤になる。
「は、離してよ・・・。朝食つくれないじゃない・・・。アンタのすきな
ハムエッグなのよ」
「ブー!俺の一番の好物は、か・ご・め。かごめ自身だもーん!」
「・・・ば、馬鹿いわないでッ(照れる)」
朝から思い切り犬夜叉ペースにかごめの理性もクラクラ・・・。
「はぁ〜・・・。早く食べたいなー・・・。一年もまてねぇよー・・・。
今すぐ食べたい・・・」
「駄目ったら駄目・・・」
「じゃ・・・。つまみ食い・・・。どんな”味”がするか・・・」
「駄目・・・」
必死に犬夜叉の腕を払おうとするが払えない・・・。
17歳でも男は男・・・。
力強い腕から解放されない・・・。
「いただきます・・・俺のかごめ・・・」
かごめのふわりとした髪を右肩に流すように寄せ・・・。
露わになった細く白い首筋に・・・
唇を這わす・・・。
(・・・ッ!)
背中にゾクッした感覚が走る・・・。
まるでかごめの急所を知って攻めるように
長く長く
強くキスされて・・・。
かごめの膝が震えるほど・・・。
「なぁかごめ・・・。俺に食わして・・・。
お前を・・・」
甘い言葉が耳にかかりかごめの理性が粉々になりそうだ・・・。
だが。
焦げ臭い匂いに気づくかごめ。
「あ!!目玉焼き焼いてるの忘れてた!!」
「ぐえッ!」
フライパンをあわてて手に取るかごめの肘が
犬夜叉の顔面にHIT!
犬夜叉、赤鼻のトナカイならぬ赤鼻の犬と化す。
「・・・ちぇ・・・」
制服を着て、鼻の頭に絆創膏を貼った犬夜叉。
拗ねた顔でハムエッグをほおばる。
「あんたがいけないんでしょ。朝からあんな・・・」
「わかってるさ。約束は守るって。でもかごめの後姿みてたら
なんかもうクラクラしてきちまって・・・」
「・・・(///)」
さわやかな朝食の会話じゃないと思いつつ
かごめは結構嬉しい。
「ごめんね。でもね。こういうことはなんていうかその・・・。
もっと心と心が結びついてからっていうか、私はそのあの・・・」
まるで自分が年下になったようにもじもじ
しながら言う。
「ーったく・・・。そんな可愛いかごめみたら約束まもらねーとな・・・」
「うん」
「一年後。もっといい男になってるから。覚悟しとけよ。かごめ」
「うん・・・」
強引でわがままで・・・。
でも犬夜叉はどんなにいつもノリで
迫ってきても”約束”は必ず守る。
かごめにはそれが分かっていた・・・。
だれより優しいから・・・。
「あ、犬夜叉!早くいかないと遅れるわよ!」
時計は既に八時近く。かごめの学校は休みだが犬夜叉の学校は
授業がある。
「いっけね!俺、今日日直なんだ!ごちそうさま!」
犬夜叉は慌ててリュックを持って
玄関に走っていった。
「全くもう・・・」
かごめが皿を片付けていると・・・。
バタバタバタ・・・!
犬夜叉が戻ってきた。
「どうしたの?忘れ物?」
「ああ、大事なワスレモン・・・」
チュ・・・ッ。
「なッ・・・」
不意打ちのキスにかごめは呆然・・・。
「んじゃ、行ってくるぜ!俺のかわいいかごめちゃん!」
バタバタバ・・・。
バタン!
「・・・」
やっぱり犬夜叉に翻弄される自分が情けないと思うかごめだけど・・・。
元気いっぱいの犬夜叉が一番好きだと思うかごめだった・・・。
「フウ・・・」
ベランダで布団を干すかごめ。
久しぶりの晴天に洗濯物日和でもある。
「あ。そうだ。犬夜叉のお布団も干さなくちゃ」
かごめは犬夜叉の部屋に入ろうとドアの前まで行くが。
(そういえば・・・。私、犬夜叉の部屋入るの初めて・・・)
引っ越して一ヶ月。
家具を部屋の中に運びこんだっきり一度もない。
(幾ら恋人でも・・・。勝手にはいっちゃいけないよね・・・)
教師であるかごめ。
プライベートでもけじめだけは守らないといけないと思う。
が。
(お布団干すだけだもの。そうよ。うん。そう・・・)
自分にそう言い聞かせる。
でも本音は・・・。
「お、おじゃまします・・・」
犬夜叉の部屋。
中は案外綺麗でソファベットとテレビデオ、ゲーム、
あとは机と本棚・・・
割と普通の部屋だった。
が。
「・・・なッ・・・」
バーン。
目に入ってきたのは等身大の自分のパネル・・・。
「い、いつのまにこんなの作ったのよ・・・ッ(汗)」
一体、犬夜叉はこのパネルをどのように使用しているだろうか。
もしかして抱きしめて眠っているとか・・・。
(・・・(赤面))
かごめは煩悩を振り払い、犬夜叉の布団をたたんだ。
ヒラッ。
一枚の写真がじゅうたんの上に落ちた。
「なにこれ・・・」
映っていたのは若い女の写真。
年は二十歳ほどでかなり美人だ・・・。
(誰・・・?それに布団の下に隠していたってことは・・・)
自分には見せられないもの・・・?
女の勘は鋭い。
更に恋をしている女は・・・。
(犬夜叉・・・もしかして・・・他に好きな人が・・・)
想像力が倍に働き、嫉妬につながっていく・・・。
かごめは暫く写真を持ったまま立ち尽くしていた・・・。
夕方。
「たっだいまー!俺のかごめちゃんは何処ー!」
学校から帰り、真っ先にかごめを探す犬夜叉。
「おかえり・・・」
「あー。腹減った。かごめ。今日の夕食はなに?」
「・・・ハンバーグ」
「そう。じゃあ、夕食の前にメイン(かごめ)をちょいとつまみ食い・・・」
かごめを抱きしめようとしたが。
しゃキーン。
「わッ」
なんだか殺気だったかごめ。包丁を手に犬夜叉を睨みつける。
「何よ。悪いけど、今、料理作ってる最中なの!!静かに待ってて!」
「・・・は、ハイ・・・」
犬夜叉、その場に鎮座して、夕食を待った・・・。
ほかほかほか。
テーブルにはおいしそうなハンバーグとサラダ。
ごはんとわかめのお味噌汁がならぶ。
バクバクとなんだか”やけ食い”するかごめ。
「・・・」
怒りモード全開に犬夜叉、近づけず・・・。
「あ、あの・・・かごめちゃん。お、オレ、何か悪いことしたのかな〜・・・」
「さあ。自分の胸に手を当てて聞いてみたら?」
かごめの睨みは犬夜叉の心臓をつらぬく。
(こ、怖い・・・。い、今は静かにしていたほうがいいな・・・)
かごめの様子をうかがいながら犬夜叉はちっちゃくなって
夕食を食べた・・・。
「・・・。ごちそうさまでした」
かごめが食べ終えた皿を持って台所へ行こうとしたとき。
ヒラッ。
ポケットから一枚の写真が落ちた。
「ん・・・?これは・・・」
拾う犬夜叉。
犬夜叉の反応をかごめはじっと観察。
「オフクロの写真。なっつかしいな〜。どこにあったんだ?かごめ」
「お母さんの写真・・・?」
写真の疑惑の真相が判明し、
かごめのジェラシーの炎は一気に鎮火した。
「そっ。でもなんでかごめが持ってんだ?」
「え、あ、あの偶然拾ったのよ。犬夜叉のお布団干してたら・・・」
もじもじするかごめ。
「そっか・・・。探してたんだ。失くしたと思って。何せたった一枚のお袋の
写真だからさ・・・」
天涯孤独の犬夜叉。幼いときに母をなくした・・・かごめはそのくらいしか
犬夜叉の過去はしらない。
「でも・・・。とっても綺麗なお母さんね・・・。それに優しそう・・・」
「おぼろげにしか覚えてねぇんだけど・・・。なんかすっげいいにおいしたな・・・」
笑顔で写真を見つめる犬夜叉。
だがその瞳奥は寂しさが見え隠れる・・・。
「犬夜叉。大丈夫。きっとお母さんあんたのこと、
いつも見守っててくれるから・・・」
かごめはぎゅっと犬夜叉の手を握った。
「かごめ・・・」
「もう、一人じゃないでしょ?ね!」
犬夜叉の一番好きなもの。
それはかごめの笑顔。
そして温もり。
母がいなくとも、かごめがいれば・・・。
一人じゃないと思える。
「なぁ。もしかしてさ♪かごめちゃんのご機嫌斜めの原因はこれだったのかなー?」
ギクり、かごめちゃん。
「ち、違うわよ!」
「もしかして、オレに他に好きな女がいたとかって勘違いしちゃったりー?」
「ち、違うっていってるでしょー!もー!!」
真っ赤になってソファに正座して
犬夜叉に背を向けて否定する。
だが背中は『そうよ。やきもちよ』と
言っているように見える。
「ふふー♪そっかー。かごめちゃんのジェラシーだったのか。焼き餅だ♪」
「だ、誰がッ」
「いいの。俺、すっげー嬉しい。そんだけかごめちゃんの愛が深いってことじゃないですか♪」
「違うったらー!ちが・・・。きゃッ・・・」
ドサ・・・ッ。
両手を犬夜叉は押さえ、かごめはソファに押し倒された・・・。
「ナ・・・なんなの。この”体勢”は・・・」
「ふふ・・・。オレ、まだ、メイン(かごめ)が残ってたんだよな・・・」
「なッ(真っ赤)は、離しなさい!」
「オレと一緒にいるときは教師は駄目。男と女。わかってるだろ・・・?
かごめ、お前だって・・・」
ソファに流れるかごめの髪を長い指がすくう。
かごめの上にはまだあどけなさが残る犬夜叉の顔が。
自分を射抜くその瞳につかまったら最後・・・。
もう体は動かない・・・。
「かごめ・・・」
「だ、駄目だってば・・」
犬夜叉はかごめを完全に長い足で挟み、身動きを止めた。
そして頬に手をあて・・・。
「大丈夫・・・。オレが今”味わう”のはかごめの唇だけだから・・・。他は一年後だもんな・・・」
唇を静かになぞった。
「なッ・・・」
「じゃあ、いただきます・・・」
(きゃああーー・・・)
犬夜叉の顔が近づいてきた。
その時。
ピンポーン。
「宅配便でーす!」
「は・・・はーい」
ドカ!!
「ぐえッ!!」
起き上がったかごめの肘が見事に犬夜叉の顔面HIT。
かごめは知らん顔で乱れたブラウスのボタンをなおしながら玄関に
走った・・・。
「ごくろうさまでした」
印鑑を持ってかごめがリビングに戻ってくると犬夜叉は拗ねた顔であぐらをかいていた。
「・・・なんでいっつもいいところで!」
「仕方ないじゃない。拗ねてないで洗物手伝って」
エプロンをつけなおすかごめ。
だが犬夜叉の機嫌はなおらず・・・。
「じゃあ”朝チュウ”を許可してくれたら手伝う」
朝チュウとはまぁ呼んで字の如く朝、犬夜叉が出て行く前の
キスのこと
「・・・(照)。わかったわよ」
「ホントカ!?じゃあ、明日の朝のチュウ、今、前借りー」
バキ!!
お盆で返り討ちにあう犬夜叉・・・。
「いい加減にしなさーい!!」
結局、朝チュウもおあずけだった・・・。
これが私の彼。
わがままで短気で嫉妬深くて。
漫画の仲”かごめちゃん”はどう?
私は毎日、彼に・・・振り回されっぱなし。
だけど、この気持ちは一緒よね。
”犬夜叉が大好き”って気持ちがね・・・。