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第12話 離せない温もり

”風馬さん死なないで・・・。お願い死なないで・・・”

(誰の声・・・だ・・・?)


”死なないで・・・ッ”

(かごめの・・・声・・・?)


とても安心する声・・・。


温かい・・・。

この温もりは・・・。


「風馬さん!!」

「・・・かご・・・め・・・」

「風馬さん・・・っ。よかった・・・!!」

「・・・!」

客間の布団で眠っていた目覚めた風馬に思わず抱きつくかごめ・・・。

(そうか俺は海で・・・)

気がつくとかごめは頭に包帯をまいているのに風馬は気づいた。

「かごめ・・・お前の方こそ頭に怪我を・・・」

「何、人のこと心配してるんですか・・・!風馬さん、しばらく息してなかったんですよ!?あたしもう、どうしようかと・・・」

涙目のかごめ・・・。

「かごめ・・・」


肌で感じるこの温もり・・・。


冷たい海の水さえ温かく感じた・・・。

(あたたかい・・・。とても・・・。体の力が抜けるよう・・・涙が出るほどに・・・あたたかい・・・)

自分はこの温もりに助けらたことを・・・。

かごめをだきしめて肌で確認する・・・。


「かごめ・・・。お前が助けてくれたんだな・・・」


「風馬さん・・・」


お互いが助かったことを確認し会う二人・・・。

「ウオォホン!」


小夜の咳払いでパッと離れる二人。

「あのさ。いい雰囲気の所ぶちこわしてごめんよ。だけどね、あんた達・・・!!無茶しすぎなんだよ!わかってのかい!?倒れた舟に二人掴まって漂流状態だったんだよ!?全く今の時期は晴れていても海の波は激しいんだ無鉄砲も良いところだよ・・・!!」

おもいっきり小夜に怒鳴られ、風馬もかごめもうつむく。

「ご、ごめんなさい。 小夜さん・・・」

「すまん・・・小夜・・・」

二人揃って謝る。

「そんな二人同時に謝るなっての・・・。なんか怒る気なくなるよ・・・。たっく本当にあんた達は似たもの同士ね・・・。参ったよ。ふう・・・」

呆れ顔の小夜。でも二人を一番しんぱいしたのは小夜だった・・・。

「でも風馬さん、どうして弱った体で海なんかに出たんですか!?」

「・・・。彗に・・・好物の魚を釣ってやろうと思ってな・・・。栄養をつけねば・・・」

「・・・」

かごめは脱力・・・。

てっきりかごめは風馬が死のうと海に出たのではと思っていた・・・。

「どうしたかごめ、そんな力の抜けたかおをして」

「力抜けますよ!もう・・・!!私がどれだけ心配したか・・・!!」

「すまない・・・」

「・・・すこし反省してください!私、お水かえてきますッ!」

桶をもってかごめはパタパタと部屋を出ていった・・・。

「あーあ怒らせたね。でもかごめの気持ち分かるよ。お前も佐助の奴も残されるものがどう思うかなんてこれっぽちも考えてないんだ」

「小夜・・・」


小夜は静かに座り、核心部分をつくようにまっすぐに訪ねる。

「・・・風馬。嘘だろ?『魚』とりにいったんなんて」

「・・・!」

「どこの誰があの海域に魚釣りにいくもんか。あの海域は潮の流れがいつも変化するからこの辺りの者は絶対に行かないよ。そう・・・死にたいなんて事思ってるやつ以外はね・・・」

「・・・」


風馬は話をしたくないのか小夜に背を向ける。

「ったく・・・。やんなっちゃうよ。武士の思考パターンはどうしてこう根暗なのかね!!人の死に対しては必死に救おうとするくせに、自分の死に対しては腹が立つ程に無頓着で適当で・・・!特に風馬アンタの場合は優しすぎるからすぐ『自分がいないほうが』とか考えちまうだろ!!どーせ『魚釣りに出て嵐にあって・・・』なんて下手な筋書き風馬あんたの頭の中ではできあがってたんだろうけど。ひとりかごめの元を去るならもっとサラッと去れっていうの!」

機関銃のように小夜は怒りを風馬の背中にぶつける。

もう・・・たくさんなのだ。

自分の信頼をおく人間がしんでいくことが・・・。

「小夜・・・。お前容赦ないな・・・」

「フン・・・!風馬。もう二度と妙な考えおこすんじゃないよ。 かごめが体はって守った命だ。命の重さはあんたが一番よく知ってるはずだ」


「・・・」

生きているかごめのあの温もり・・・。

それを感じられたということが生きているということ・・・。

弱気になった自分がひどく恥ずかしい・・・。


風馬は自分の両手をじっと見つめ、かごめの温もりを思い出す・・・。


「・・・風馬。正直に応えな」


「何だ」


小夜は少し間をおいてそして訪ねた・・・。



「・・・かごめに・・・惚れてるだろ・・・?」




ヒュウ・・・っ。


海の風が吹き込んで・・・


風馬の下ろした長い髪を静かに揺らす・・・。


「風馬・・・そうだろ・・・?」



「骨の髄まで惚れてるだろ・・・?」



「・・・」



風馬は深く、でも確かに頷いた・・・。


「かごめに救われた命だ。今度は風馬の毒と闘って今度こそ風馬がかごめを守る番だ。それが武士ってもんだろ」

「・・・」


小夜の一言一言は風馬の痛い部分を幾つも突いた。


だが・・・。


(かごめにこれ以上迷惑はかけられない・・・)

バタバタバタ・・・。

かごめが桶に水をたんまり汲んでもどってきた。

そして、風馬の額の布を冷やした・・・。

「風馬さん、どうですか?」

「ああ・・・。とても気持ちがいい・・・」

「よかった・・・。風馬さん、毒なんかに負けないで。きっと大丈夫だから・・・!」

「かごめ・・・」

かごめは力強く風馬の手を握った。


「あたし・・・。そばにいるから・・・。嫌だっていってもそばにいるから・・・」


握られた手のあたたかさが離せない・・・。


このままかごめに甘えてはいけないとわかっているのに・・・。


離せない・・・。


欲しているぬくもりを・・・。


風馬の心はかごめへの想いと自分の病の事で葛藤していた・・・。



その頃。犬一行は・・・。

「間違いねぇ!!この城下にかごめはいる!!」

この城下で一番に賑わい場所、野菜や果物、反物・・・様々な 品物を売っている出店が立ち並ぶ大通りに犬夜叉達は来ていた。

買い物をする人間、荷車をひいて野菜を運ぶ者、沢山の人間達でごったがえしている。

「でもこれだけの人混みからかごめちゃんを探すなんて・・・。探してるうちに夜が明けそうだよ。」

「心配するな。珊瑚。かごめ様はずっと旅をしてこられたのだ。ならばいる場所は検討がつくだろ?」

「あ、そっか。宿を虱潰しに当たれば・・・」

珊瑚の言葉に犬夜叉は一人先に宿の方へ突っ走っていった。

「やれやれ・・・。犬夜叉のきたら・・・」

「仕方ないよ。かごめちゃん探してやっとここまで来たんだから・・・。さ、あたし達も行こう!法師様!」

「そうじゃぞッ!乱暴者の犬夜叉一人では宿ごと怖しそうじゃッ行くぞ!」


珊瑚達も犬夜叉達のあとを追う。

「ったく・・・。珊瑚や犬夜叉達じゃあ話がややこしくなるではないか。私がいなければ!」

そして弥勒も・・・。

大切な仲間を見つけるために・・・。

そんな犬夜叉一行を・・・。

影から見ている男が一人・・・。

「急いで小夜女将に知らせねぇと・・・!」

犬夜叉達の事を男は急いで宿に戻り小夜に告げた。


「何!?かごめを探している妙な奴らがいる!?」

「そうなんでさぁ・・・。一人は法師、一人は妙なでかい武器をもった女で・・・。そして一番妙なのが赤い着物をきた犬みてぇな耳つけた男で・・・。多分半妖かと・・・」

「・・・。おい、いいかい。何人が着たとしてもかごめの事は秘密だ。他の宿の者全部にそう伝えるんだよ!」

「へ、へいッ」


小夜はこうして宿の者にかごめの事は一切だれにも漏らさないように犬夜叉達より先回りして他の宿にも伝えた。

(かごめの探してる連中には悪いが・・・。今かごめを渡すわけにはいかない・・・。風馬にはかごめが必要なんだ・・・)


小夜の機転が効いたのか犬夜叉達がどれだけ町の者にかごめのことを聞いて回っても一向に情報は入らない。どの宿を回っても、「そんな女はしらん」の一点張りで・・・。

怒った犬夜叉が宿の中をあら探ししてもかごめの痕跡すら見つからない。


「くそ!何でかごめの匂いは感じてるのにどこにもいねぇんだ!!」

地面に拳を打ち付けて怒る犬夜叉。

「妙ですな。これだけ人に聞いて回っているのに何もかごめ様の手がかりが掴めないなんて。それよりどの宿屋の態度が・・・。まるで私達が来るのを察知していた様な口振りでしたね」

「うん。訪ねていったらいきなり『妖怪連れの客はお断り』だなんて言う宿もあったよ」

「ま・・・。どちらにしてもこの宿が最後・・・ということになりますな」


その最後の宿というのは・・・。


赤い瓦の屋根・・・。

入り口には竜の彫り物がおかれ・・・。

そう、最後の宿は小夜の宿だった・・・。