第15話 守りたいもの (風馬さん、風馬さん・・・!) 嫌な胸騒ぎを感じながらかごめは風馬がいる屋敷に走る。 (風馬さん・・・!) ガタン! 引き戸を荒々しく開け、靴を脱ぎ捨てて屋敷の中に入る。 「風馬さん!!」 居間、土間、屋敷の中を走って風馬の姿を必死にさがすかごめ。 「風馬さん、どこ!?」 かごめが縁側の廊下に出たとき・・・。 「風馬さん!!」 仰向けに風馬が倒れていた。 また少し血を吐いたのか着物が赤く染まって・・・。 「しっかりして!風馬さん!」 すぐに風馬を抱き起こすかごめ。 「風馬さん!!」 「う・・・。かご・・・め・・・」 薄っすらと目をあける風馬・・・。 息が少し荒い・・・。 「どう・・・して・・・。お前・・・」 「どうしてって・・・。言ったでしょう?今、私がのそばにいたいのは風馬さんのそばだって・・・」 「・・・。でもそれじゃあ仲間の人たちが・・・」 「何度も言わせないで・・・。私は風馬さんをほおっておけないの。風馬さんが苦しいと私も苦しい・・・。だから私は貴方のそばにいる。誰が何を言ってもそばにいるの・・・。」 「かごめ・・・。いいのか・・・。本当にいいいのか・・・」
自分を見つめるかごめの瞳は透明な雫で潤んで・・・。
「かご・・・め・・・」
触れる・・・。 「あったかい・・・。人の涙は・・・あったかいな・・・」 「風馬さん・・・」 かごめの涙に触れる風馬の手もまた・・・暖かい・・・。 「風馬さんも温かいよ・・・。私はそれが嬉しい・・・」
風馬が生きていることを確かに感じられる・・・。
※ 一方・・・。犬夜叉一行は小夜の宿にいた。 弥勒はかごめとの再会の一部始終を小夜に話した。 「それで・・・。かごめは風馬の元に行ったんだね?で。いいのかい?あんたらはそれで」 「ええ。それがかごめ様のご意思なのですから仕方ありません。でも約一名、ふてくされて落ち込んでいる奴がおりまして・・・」 「その『ふてくされている奴』の姿が見えないようだけど?」 部屋を見回す小夜。 犬夜叉の姿がない。 「弥勒。犬夜叉の奴、かごめに振られたショックで家出したんじゃろか!?」 弥勒の肩から七宝は尋ねた。 「・・・七宝。犬夜叉の前で今の台詞を言ったらタンコブひとつじゃすみませんよ。くれぐれも余計な口出し無用です」 「わ、わかった・・・(汗)」 七宝はおどおどしながら顔を引っ込めた。 「で、あんたらはどうするんだい。このまま旅を続けるのかい?」 「・・・。それは犬夜叉次第ですな。かごめ様のいないあいつは使い物になりませんし。かえって旅の足手まといです」 「ほ、法師さま何もそこまで言わなくても・・・」 「確かに言い過ぎましたな。だが・・・。かごめ様を風馬殿に所にむかわせた犬夜叉はとても切ない心境でしょう。察するに余りある。でも今のあいつは自分の刹那さしか見えていない」 「どういうこと?法師様」 弥勒はズズっとお茶をすすった。 「本当にかごめ様を想うなら・・・。かごめ様の本当の居場所はどこか考えなければいけない。かごめ様の国は別にある。もし、かごめ様の記憶が戻ったとき、一体『誰』がかごめ様を自分の国に帰すんです?かごめ様のご家族の事もかんがえねば。それに井戸を通れるのは犬夜叉しかいないではないか・・・」 「それはそうだけど・・・。でも法師様、記憶が戻ってもかごめちゃんが風馬さんと一緒に居たいって言ったらどうするの?」 「・・・それはかごめ様と犬夜叉の判断さ・・・。だが少なくともかごめ様がどういう選択をするか、記憶がないかごめ様に変わって私達仲間がいろいろな選択肢を用意しておくことが大切だ・・・と私は思うのです」 弥勒はさらにお茶をすする。 パチパチパチ!! 「え?」 弥勒の意見に、小夜は何故だか大拍手。 「法師さん、あんた、ただのスケベ法師かと思ったけどいい事いうじゃないか!あたしゃ見直したよ!」 「そ、そうですか?ふっ。仲間として当然のことを言ったまでです」 きりっと眉をあげる弥勒。 「いいねぇ。その謙虚さがまた。気に入ったよ!さ、沢山飲みな。あたしのおごりだ!」 どこから取り出したのか弥勒に杯を勧める小夜。 「あ、いや、法師は酒は駄目なのです。一応まだ私も未成年ですし・・・」 「未成年!?あんた年は幾つだい!いろいろ話を聞かせておくれ!」 何だかもりあがってきた弥勒と小夜。 そんな二人に弥勒はってきり珊瑚の雷が落ちるかと思ったのだが・・・。 「法師様・・・。私、犬夜叉探してくる!雲母!おいで!」 珊瑚は少し思いつめた顔で宿を飛び出していった・・・。 (珊瑚・・・) 「風の傷!!!」 ザッパーン!! 風の傷が海の水を真っ二つに割る。 「風の傷!!風の傷!風の傷ーーーーッ!!!!!」
やり場がなくて
だけど何発風の傷をうっても、うっても届かない。
波のように・・・
”私は風馬さんのそばにいたんです・・・” 確かに記憶がないかごめだけれど・・・。 かごめはかごめなのに・・・。 かごめの心には自分はいない・・・。居ないどころか・・・。 他の誰かがいる・・・。
ぐっと砂をつかむ犬夜叉・・・。 「こんなところで憂さ晴らし?」 「珊瑚・・・」 犬夜叉の隣に静かに座る珊瑚。 犬夜叉は今の自分の顔を誰にも見られたくないのか珊瑚に背を向けてあぐらをかく。 静かに海を眺める珊瑚。 「・・・。あの島にかごめちゃんはいるんだね・・・、雲母に乗ればひとっとびだよ」 「・・・」 「かごめちゃん・・・。今どうしてるかな・・・」 珊瑚の言葉がチクリチクリ・・・刺す。 「なんだよ珊瑚!お前は・・・!!何がいいたんだ!!」 「あんたこそ、これからどうしたいのさ!!かごめちゃんの事をさッ!!」 「うっ・・・」 応えられない犬夜叉・・・。 「こんなところで海に八つ当たりして・・・。かごめちゃんのこと、本当にこのままでいいの!ねぇいいの!??」」 「お、俺にどうしろって言うんだよ!かごめが選んだことだ・・・。これ以上俺にどうしろってんだ!!」 「・・・。犬夜叉。逃げるのやめなよ」 「なっ・・・」 珊瑚の一言は犬夜叉の心の患部をぐさっと突いた。
”一緒にいてくれるのか・・・?” そう聞き返してかごめは・・・。
「かごめちゃんが今、誰を想ってたってあたし達の大切な仲間には変わりないじゃない。あんたにとってかごめちゃんは掛け替えのない女の子なのは変わらないじゃない・・・。かごめちゃんのために何かしたい・・・そう思う気持ちが一番大切なんじゃないの・・・?」 「珊瑚・・・」 「・・・ごめん・・・。ちょっと言いすぎた・・・。 でも犬夜叉・・・。辛くても『今』のかごめちゃんと向き合わなくちゃ・・・。『答え』を出すのはそれからでしょ・・・?」 「・・・」 珊瑚の一言一言がすうっと心に入ってくる・・・。 海に八つ当たりしても、何発風の傷をうっても応えなんてでない。 例えかごめが今、誰を想っていても。 自分のことを忘れても・・・。 変わらないのは・・・。 かごめの優しいの匂い・・・。 そして大好きなかごめの笑顔。 自分はそれを・・・何よりもかごめの笑顔を守りたい・・・。 守りたいと思っているのに・・・。 「珊瑚・・・。俺・・・俺は・・・」
二人の頭上を大きな羽を持った化け鳥たちの群れが通り過ぎていく! 「大変じゃー!!」 血相抱えた七宝と弥勒が走ってきた。 「どうした!弥勒!何があった!?」 「村が化け鳥に襲われて・・・。大半は私が退治しましたが逃した何匹かが飛び去って・・・」 見ると、かごめ達がいる小島にむかっている・・・! (かごめが危ねぇッ・・・!!!!)
「」 「犬夜叉!」 「何だよ!急いでんだ!!」 「犬夜叉・・・!かごめちゃんを・・・守れ!何があっても・・・な!」 「珊瑚・・・」
何があってもそれは変わらないから・・・。 (かごめ・・・。待ってろ・・・!)
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