永遠の白い羽根 最終話・勇気編 エピローグ
かごめ・・・。 元気ですごしているか・・・? ちゃんと食べているか・・・? 今日もとてもいい天気だ・・・。 真っ青な気持ちのいい空・・・。 まるでお前みたいだ・・・。 同じ空の下でお前もこの空を見ていると思うと元気がでてくる・・・。 かごめ・・・。 本当に大切な人と幸せか・・・? 笑って・・・いるか・・・? かごめ・・・。 「ふあ・・・」 かごめの大きなアクビ。 昨日、不思議な夢を見た。 背の高い、髪の綺麗な男が出てきていた・・・。 犬夜叉じゃない・・・。 とても優しい瞳の人だった・・・。 ”かごめ・・・。ありがとう・・・。ずっと見守っているから・・・” そう言っていた・・・。 そしてその手には・・・ 自分が持っている同じ白い羽根が・・・。 じっと羽根を見つめ、昨晩の夢を思い出すかごめ・・・。 「なぁに眺めてやがるんだ?」 「わッ・・・!」 川原で羽根を見つめていたかごめの背後からぬっと犬夜叉が登場。 「な、なんでもないわよ!」 「・・・。なんか妙だな。おめー。なんかオレにかくしてるだろ!」 「か、隠してなんか・・・(汗)」 犬夜叉じゃない別の男の夢を見たなどと、言おうものならまた喧嘩が始まると、かごめは 夢のことは内緒にしようと思った。 「いーや!かくしてるな!言え!何隠してんだ!」 「何もないったら!うるさいわね!」 「うるせーとはなんだ!昨晩、オレはずっとおめーのそばにいてやったってのに・・・」 突然、照れて言葉を止める犬夜叉。 昨晩はずっとかごめと手をつないだまま朝を迎えた。 犬夜叉とかごめはもじもじ君になる。 「・・・。あ、あたし、上流の方でお水汲んでくるね・・・!」 かごめも頬を赤らめながら、ペットボトルを持ってかごめは水を汲みに走った・・・。 「けッ・・・」 ちょっとつまらなそうに石ころを蹴る犬夜叉だった・・・。 チャプン・・・。 透明でキラキラ光る川の水・・・。 ペットボトルいっぱいに水を入れ、きゅっと蓋を閉めた。 「ふう・・・。これでいいわね」 かごめが立ち上がったその時。 「あッ・・・」 胸元から羽根がぽとりと落ち、風に舞い上がった。 「ま、待ってよ!」 羽根はひらひらと蝶のように舞いながら飛んでいく。 まるで・・・。 かごめをどこかに導くように。 「ま、まってたらぁ・・・!」 走って羽根を追うかごめ。 どんどん川の上流の方にむかっている。 「はぁ・・・はぁ・・・。どこまで飛んでくのよ・・・」 かごめは羽根を追っていくとそこには 小さな滝つぼがあった。 白い飛沫が岩にぶつかり雪のよう・・・。 「羽根・・・。どこだろう・・・」 かごめがキョロキョロあたりをさがしていると・・・。 サク・・・。 サク・・・。 誰かが近づいてくる・・・。 そして・・・。 「あの・・・もし・・・」 「え・・・」 かごめがゆっくり振り向くと・・・。 そこには・・・。 (あ・・・。この人は・・・) 優しげな瞳。長い髪・・・。背が高くて・・・。 夢に出てきた男、そっくりだ・・・。 腰には長い刀をさして・・・。 藍色の着物を着て、旅人のようないでたちだ・・・。 「娘さん・・・。貴方がお探しのものはもしやこれでは・・・?」 男は懐から白い羽根を取り出してかごめに手渡した。 「そうです!風にとばされちゃって・・・。あ、ありがとうございます・・・!とても大切なものだったんです・・・」 「そうですか。それはよかった・・・」 男は穏やかに笑った・・・。 (あれ・・・この笑顔どこかで見たことがあるきがする・・・) 初めて会う感覚がしない・・・。 どこかであったような・・・。 「その白い羽根・・・。とても綺麗ですね・・・」 「え・・・ええ。でもいつから持っていたのか・・・。どうして持っているのか分からないんです・・・。気がついたら手にしてて・・・。って変ですよね・・・」 「いえ・・・。きっとその羽根は自ら貴方に舞い降りたのかもしれませんね・・・。きっと深い何か意味があって・・・」 「はい。私もそう思います・・・。理由がわからないけど・・・。この羽根はずっと持っていなきゃいけないって気がするんです・・・」 羽根をぎゅっと胸元で両手で大事に包むかごめ。 「実は・・・。僕も持っているのです・・・」 男はもう一枚同じ形の羽根を取り出した。 「僕の宝物なんです」 「そうなんですか・・・」 「はい・・・。この羽根は僕をずっと支えてくれた・・・。持っているだけで力が沸いてくるんです・・・。僕の希望そのものだった・・・」 「私も・・・」 同じ羽根、2枚・・・。 これは何かの偶然だろうか・・・? 優しい男の声に 鼓動が止まらない・・・。 激しい懐かしさと温かさで・・・。 「顔色がいい・・・。ちゃんと食べているのか・・・?かごめ」 男はかごめの頬にすっと手添えた・・・。 あたたかい・・・。 うなずくかごめ・・・。 かごめはドキドキし、声が出ない。 「よかった・・・。旅は・・・辛くはないか・・・?」 想っていた人にやっと会えた時のように なんだか涙が出そうな気持ち・・・ 「オレは・・・。お前が元気で笑っていてくれたらそれでいいんだ・・・。 仲間と、それから・・・大切な人のそばで・・・」 男の言葉一つ一つ・・・かごめを慈しむ想いが伝わってくる・・・。 「かごめ・・・。オレはお前と出会えたから今のオレがいるんだ・・・。 お前に助けられた・・・」 「・・・え?・・・」 男はかごめの胸元にそっと手をあてた・・・。 「お前のこころにオレはいなくても、俺は絶対に忘れない・・・」 トクントクン・・・。 かごめの心が騒ぐ。 何か大切なことを思い出そうとしているような・・・。 「嬉しかった・・・。お前ともう一度会えて・・・。この羽根のおかげだ・・・」 ”貴方は誰・・・?” と問いたいけど言葉が出てこない・・・。 男はただ静かにかごめを見つめて・・・。 優しい瞳で・・・。 「かごめ・・・。オレは・・・」 一瞬・・・。 時が止まる・・・。 まるで世界に二人しかいないような・・・。 「おーい!かごめー!」 犬夜叉の声が見詰め合う二人を遮った。 「・・・。あ、あの・・・ッ」 「行って・・」 「で、でも・・・」 「オレは大丈夫だから・・・。行ってくれ。本当に好きな人の元へ・・・。そして幸せに・・・」 男はかごめを最後にぎゅっと抱きしめる・・・。 大きくたくましい腕・・・。 犬夜叉とは違う感覚・・・。 「ずっと・・・お前の幸せを祈ってる・・・。ずっと・・・」 かごめの耳にそっとほつれた髪をかけて耳元で囁く・・・。 とろけるような低く優しい声に・・・。 涙が出そう・・・。 「あ、あの・・・」 「さよならは言わない・・・。その羽を持っている限り俺達はまたきっと会える。 信じてる・・・」 大きな手が静かにかごめの髪を撫でて・・・。 男はごめを解放した・・・。 「・・・オレはこの先もずっとお前だけ想ってる・・・」 かごめは胸の鼓動の大きさに言葉がでない・・・。 「・・・愛して・・・いる・・・。ありがとう。かごめ・・・」 男はそう告げると・・・。 静かに森の中に 消えていった・・・。 ただ・・・。 立ち尽くすかごめ・・・。 今の人は誰・・・? 思い出せない。でも・・・。 確実に知っている・・・。 「かごめ。おい、どーしたんだよ!」 「え、あ、犬夜叉。うん・・・」 「ん・・・?この匂い・・・」 微かに覚えの在る匂い。 これは・・・。 (風馬の匂いだ・・・) 「おい、かごめ、今、ここに誰かいたのか?」 「うん・・・。とっても綺麗な髪の長い男の人が・・・」 「・・・」 やっぱり風馬だと犬夜叉は確信した。 「それで・・・。何話したんだよ」 「な、何って・・・。その・・・”ありがとう””ずっと見守ってる”って・・・。それから・・・」 ”ずっとお前だけを想ってる・・・” 最後の台詞だけはいえないかごめ・・・。 「何黙ってんだよ」 「な、なんでもいいでしょ!それよりねぇ犬夜叉。あの男の人、知ってるの?誰なの?」 「え・・・誰って・・・」 「犬夜叉や私の名前、知ってたわ」 なんとなくいえない犬夜叉。 「し、しらねぇよ!」 「まあいいか・・・。でもきっとまた会える気がするんだ・・・」 「なんでそんなことわかるんだ・・・」 「なんでだろうね・・・。でも、きっと信じていれば会えるよ。ね・・・」 気がつくとかごめの瞳から涙が・・・。 「あれ・・・?何これ・・・どうして・・・」 なんの涙・・・? どうして・・・? 「かごめ。お前・・・」 かごめの記憶には風馬はいない。 だがやっぱり人をまっすぐに愛する・・・。 その心は風馬を覚えている・・・。 激しい嫉妬を覚えるが・・・。 ”幸せに・・・。ずっと見守っているから・・・” 風馬がかごめに伝えた言葉は犬夜叉への言葉でもある・・・。 生きて、生き抜いて誰より大切なものを守りそして支えて欲しいと・・・。 「かごめ・・・」 犬夜叉はかごめを抱きしめた。 「犬夜叉・・・?」 「・・・。なんでもねぇよ。なくんじゃねぇって」 「うん。ごめん・・・。でも止まらないの・・・」 風馬の記憶がなくなっても かごめの心にはしっかり風馬が刻み込まれていのだと犬夜叉は実感した。 嫉妬心はやはり沸く。 他の男の影が少しでもあることが。 だが・・・。 「オレ・・・。何があってもお前の事・・・。守るからな・・・。お前の全部・・・」 「うん。信じてるよ・・・」 大切なものを守りたい、その気持ちは同じだ・・・。 どこからかきっと自分たちを見守っている風馬に向かって犬夜叉は誓った・・・。 (・・・。風馬・・・。お前の分もかごめを守るから・・・。だからてめぇも・・・) 踏ん張って生きれ・・・。 同じ女を好きになった男。 その想いは同じ・・・。 ”かごめが一番大好き”と・・・。 青い青い空。 白馬にまたがった風馬は見上げる。 澄み切った空に 真っ白な羽根をかざす風馬・・・。 透き通るような青い空に かごめの笑顔が浮かぶ。 「かごめ・・・。大好きだ・・・!」 臆面もなくそう胸をはってそういえる。 その気持ちだけで生きていける。 生きていく勇気で心が満たされる。 なにがあっても・・・くじけない・・・。 そして願う。 「大好きなかごめがずっと・・・。幸せでありますように・・・」 そして。もう一つ願えるなら、もう一度かごめと出会いたい・・・。 その時は真正面からかごめを・・・。 「愛したい・・・」 青空がまぶしい。 風馬は颯爽と愛馬に乗り 新しい道を走り出した・・・。 永遠の白い羽根をずっと心に しまって・・・。 |