井戸からかごめはいつものように大きなリュックを担いではい出てきた。 「よっこらしょっと。大分遅くなっちゃった。それにしても多すぎたかな・・・。花火・・・」 七宝が喜ぶかと思い、かごめは現代で花火を沢山買ってきた。 七宝だけではなく、犬夜叉や珊瑚、弥勒達とも楽しく花火をして楽しもうと思っていた。 「えっ・・・。死魂虫が・・・?」 「そうなのじゃ・・・。ついかごめが来るちょっと前に・・・。犬夜叉は行ってしまったんじゃ・・・」 七宝の言葉に、かごめの心は一瞬にして切なさで溢れそうになる・・・。 死魂虫と行ってしまった・・・。 その行き先は・・・。 知っている・・・。 そして、行って欲しくない所・・・。 弥勒と珊瑚はかごめに気持ちをすぐ察っする。 「そうですな、そうですな。やりましょうやりましょう!」 弥勒と珊瑚の気遣いがかごめに伝わる・・・。 「そうね!やっちゃおう!犬夜叉と一緒にやったら絶対に暴れそうだし。みんなで楽しもう!!」 かごめ達は、まだ薄暗い中、小屋の前で花火で楽しみ始める。 「いいから弥勒様。火を付けたらすぐ離れてね!」 ぐるぐる地面をまわるネズミ花火をしゃがんでじっと見つめる。 パアンッ!! 「わあッ!!」 突然の発砲音に弥勒は腰を抜かす。 「あー。びっくりした。何です今のは・・・」 「うふふふ・・・。弥勒さまったら・・・」 珊瑚とかごめは弥勒の姿に大笑い。 「弥勒、お前、今ものすごい情けない格好じゃぞ。わははは」 七宝にまで笑われ、弥勒かたなし。 「ふっ。どうぞお笑い下され・・・。私はそれで仲間の笑顔が見られるならばそれが本望・・・ってあれ?」 気取る弥勒を無視してかごめ達は、小さな花火で楽しんでいる。 「・・・。無視なんてひどい・・・」 幼い子供のように、思い切り、笑って笑って 珊瑚と弥勒と楓は囲炉裏を囲んでじっと火を見つめている・・・。 「かごめ様は?」 「外にいたよ・・・。もう少し花火してるって」 「そうか・・・」 “犬夜叉と花火をするため待っている・・・” かごめの気持ちは痛いほどわかっている。 自分達にはどうしようもない。 二人の恋路は二人にしか動かせないから・・・。 横には犬夜叉の分の花火が取り分けてあった・・・。 カチッ・・・。 「や・・・。やだ・・・ついてよ。お願いだから・・・。あれ・・・あれ・・・」 かごめは意地になりライターをこする・・・。 「!」 長い爪の手がライターを拾う・・・。 かごめはあわてて後ろを振り向き、涙を拭いた。 そしてかごめは犬夜叉に振り向き笑顔でこういった。 自分が“還るべき場所”がある事を実感する・・・。 「花火?」 かごめは犬夜叉に一本花火を持たせ、ライターをこする。 シュッ。 するとなぜか今度は一発でついた・・・。 かごめはネズミ花火を取り出し、犬夜叉に火をつけてと頼む。 「つけたぞ」 シュルシュルシュル・・・。 「ん〜。きえちまったのか?」 犬夜叉がのぞき込んだ瞬間。 パアン!! 「わッ!!なんだ!!」 犬夜叉も弥勒同様、腰をぬかして驚く。 「きゃはははは・・・!犬夜叉ったら・・・」 「あ、てめぇッ!図ったな!」 「きゃははは・・・」 犬夜叉、完全にむくれ、すねる。 二人はしゃがみ、2本の線香花火に火を付けた。 かごめの線香花火が・・・ポトリ・・・。 かごめに近づこうとする犬夜叉。 それを拒むかごめ。 「わかってるから・・・!あたし・・・大丈夫だから・・・!」 かごめの背中には・・・。 終わるはずがない・・・。 もしかしたら、今、一緒にいる時間が花火の様に一瞬に 小さな花が咲く・・・。 それでも咲く・・・。 「うん・・・」
だが・・・。
犬夜叉が必ず行かなくてはならないところ・・・。
“彼女”の元へ・・・。
「あ・・・。ね、ねぇ。今すぐやろうよ!!花火!ね、弥勒さま!」
「ほほう。ネズミ花火。どんな花火なんです?」
弥勒は小さなネズミ花火のしっぽに火をつけた。
シュルシュルシュル・・・。
「ほほう。なかなか面白い動きをするな・・・」
「キャハハハハ・・・!」
かごめは思い切り笑った。
切なさなんて消し去る様に・・・。
花火を両手に持ち、はしゃぐかごめ。
笑い続けた。
寂しさを埋めるように・・・。
笑い続けた・・・。
犬夜叉が来るまで・・・。
辺りはすっかり闇夜と化し、七宝は花火ではしゃぎつかれ既に眠っている。
小屋の前でしゃがみ・・・。じっと花火を見つめるかごめ・・・。
今頃・・・。
犬夜叉は桔梗と何を語り合っているのだろうか・・・。
到底自分には触れられない空気・・・。
いつも自分は一緒にいるけれど、桔梗の前では全く違う表情を見せる犬夜叉・・・。
この花火の様に表情を変えて・・・。
覚悟した切なさ。
割り切った筈の寂しさ。
でも一生、この気持ちに慣れることはない・・・。
思い出しては、ありありとはっきりと蘇るだろう・・・。
この胸の痛みも・・・。
花火は綺麗だ・・・。華やかだ・・・。
けれど・・・。
一人でみる花火はなんて寂しいんだろう・・・。
「あっ・・・」
花火が
消えてしまった・・・。
消えてしまった・・・。
一気に寂しさの波が襲ってくる・・・。
「つ・・・次の花火・・・」
かごめはすぐに火を付けようとライターをこすった・・・。
けれど、つかない・・・。
「あれ・・・?あれ・・・。なんで、つかない、あれ・・・あれ・・・」
カチッ。
何度もつけようとしてもつかない
寂しい花火でもいいから・・・。
ついてよ・・・。
お願い・・・。
でないと・・・。
この闇にこころが埋まりそうなのに・・・。
手が黒くなるくらいに何度も試したがつかない・・・。
カチッ。カチッ!
「ついてってば・・・ッ!」
感情のまま、かごめはライターを地面に叩きつける・・・。
今にもこぼれそうな涙・・・。
歯を食いしばってかごめはせき止める・・・。
泣いてしまったら。
この切なさに負けてしまったら。
何があっても犬夜叉の側にいると決めた自分に恥ずかしいから・・・。
かごめはあきらめずライターを拾うとした・・・。
「何してんだ・・・。こんな暗いところで・・・」
「犬・・・夜叉・・・」
ライターをかごめに手渡す犬夜叉・・・。
見られちゃいけない・・・。この涙は・・・。
「おかえり。犬夜叉」
「お・・・おう・・・」
“おかえり犬夜叉・・・”
かごめの笑顔が犬夜叉に染みる・・・。
そして微かな痛みも・・・。
「ね、犬夜叉。待ってたんだ。花火しよッ」
まるで、犬夜叉を待っていたように・・・。
犬夜叉は地面にしゃがんで花火を見つめる・・・。
「ごめんごめん・・・。あ、そうだ。犬夜叉。線香花火しよう」
「・・・。こんなもんが楽しいのか?」
「綺麗じゃないの・・・。あたし線香花火が一番好きだな・・・。なんだか切なくて・・・」
小さな火。
小さな花を地面から一番近い高さで咲かせる・・・。
小さく短そうだけど・・・。
消えそうだと思ってもまた、花を咲かせ続けて・・・。
「かごめ・・・。お前ずっと待ってたのか・・・?ずっと・・・」
「・・・。花火・・・。一人で見ててもつまんないし・・・。あんたと一緒に見てたかったんだ・・・」
「かごめ・・・」
「・・・。犬夜叉・・・。花火って不思議だよね・・・。見ている間は・・・。とても綺麗なのに・・・。消えた途端、すごく寂しい気持ちになって・・・。なんか・・・なんかさ・・・」
地面に落ちた・・・。P>
「・・・。なんか・・・。すごく寂しくて・・・。寂しくて・・・」
花火の火の粉に・・・。
かごめの涙が落ちた・・・。
「・・・。あ、ごめんね。なんかきゅ、急に感傷的になっちゃって・・・。花火ってそういうものなのよ。だ、だから気にしないで・・・。ね・・・」
かごめはあわてて立ち上がり、犬夜叉に背を向け、制服の袖口で涙を拭き取る。
(泣いちゃダメだ・・・。犬夜叉を困らせるから・・・)
「かごめ・・・俺・・・ッ」
「・・・」
“今は一人にして”
近づけない。
近づけない。
一歩踏み出して、後ろからかごめを抱きしめたい。
でもできない・・・。
犬夜叉はゆっくりとかごめに背を向け、小屋に戻ろうとした・・・。
その時・・・。
「!!」
背中に・・・。
柔らかい感触が伝わる・・・。
かごめが後ろから犬夜叉を両手で包んだ・・・。
「かごめ・・・」
「・・・。まだ・・・。花火残ってる・・・。だから・・・。まだ行かないで・・・」
自分の胸に回された手には線香花火が一本握られている・・・。
たった一本・・・。
「まだ・・・。終わってない・・・」
「・・・そうだな・・・。まだ終わってない・・・」
消えてしまっても。
この想いだけは終わらない・・・。
二人は一本の線香花火を二人で持つ・・・。
そして火をつけた・・・。
音も聞こえない程かすかに燃えて・・・。
今にも消えそうな線香花火。
二人は同じ想いで見つめる・・・。
長く・・・。
長く・・・。
少しでも長く・・・。
キエナイで欲しい・・・。
その二人の想いが伝わったのか・・・。
火は落ちず、ずっと燃えている・・・。
微かな火花を咲かせて・・・。
「かごめ」
「なあに・・・」
「またこの花火・・・いつかしような・・・」
核心のない約束・・・。
でもこの小さく散る火の花は・・・。
絶対に思い出になんかにはしない・・・。
そんな二人の想いが燃えるようにずっと落ちず、消えなかった・・・。
切ない花の火が・・・。
。
浜崎あゆみの「HANABI」という曲を聴きながらイメージして書いてみました・・・。うーんやっぱり切ねぇ〜!!!
こんちしょうめい。犬のしゃーわせもんめ。かごちゃんどれだけ切なくしたらばきがすむねん・・・。などと自分で描いておきながら吠えてしまいました。ですが、かごちゃんの
この切なさが報われていつか花火の様にぱあっと咲いてくれることを願ってやみません・・・。留美子先生、お願いしますね(笑)