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〜待つお前の元へ〜

山の奥深い森。犬夜叉と弥勒が山犬達をやりあっている!

「散魂鉄爪!!」

ザシュッ!!

犬夜叉の爪が山犬を切り刻んだ!!

「風穴!!」

弥勒も残りの山犬達を吸い込む!

「弥勒・・・!とりあえず、この山の妖怪どもは片づけたみてぇだな」

「その様ですな・・・。しかし・・・。奈落の邪気のせいでおだやかな気性の山犬でさえあんな凶暴化するのですから・・・」

犬夜叉と弥勒は立ち寄った村人達に頼まれ、山犬退治に山に入っていた。

珊瑚とかごめは村で待っている。

「さぁて・・・。帰るとすっか。かごめ達もまってるしなー」

犬夜叉は背伸びをしていう。

「犬夜叉。もう少しここで一休みしてからもどりませんか?」

「はー?なんでだよ」

「たまにはどうです。男同士で話をするというのも・・・」

犬夜叉はかなり嫌な顔をした。

「なにをお前と話するってんだ。とにかく俺は帰るぞ!」

「そうですかー。そんなにかごめ様に早く会いたいのですかー。ならば仕方ないですねぇ」

「ば、ばばば馬鹿言うんじゃねぇよッ!俺は別に・・・」


赤面する顔には明らかに「かごめのところに早く帰りたい」と書いてある。

「まぁ、無理もないですよねぇ。犬夜叉にとってかごめさまは何よりもの心の拠り所。疲れた体と心もかごめ様に会えばいやされると・・・」

「ば、馬鹿いってんじゃねぇよッ」

弥勒の言うこと、一字一句図星で図星で犬夜叉、あわてまくる。

「けっ。しばらくだけだぞ!」

「アリガトウございます」


そして二人、火を起こし、暖をとる・・・。

考えてみれば男同士で二人きりなんて初めてかもしれない。

「・・・。なぁ犬夜叉」

「なんでいッ」


「仲間がいる・・・というのはいいことだと・・・」

犬夜叉は思いきり妙な顔をした。

「弥勒、お前、なんか悪いモンでも喰ったのか?」

「・・・。お前は普段どーゆー目で私を見ている。まぁ簡単に言えば、自分の帰る場所がある・・・ということだ」

「・・・言ってる意味がわからねぇ」

弥勒は落ちていた枝をポキッと折り、火に放り入れる。

「考えてみれば不思議だな。もし奈落がいなかったら私たちはこうして共に旅をすることもなかった・・・」

「奈落に感謝しろってのか?馬鹿いうなよ」

「そういう訳ではない。ただ、こうして共に仲間がいる・・・。いつのまにかそこが自分の原点・・・居場所の様な気がしてな・・・。お前もそうだろう?犬夜叉・・・」

「・・・」


言うまでもない。


まるで生まれたときから一緒にいることが当たり前だと思うほど、その温かな存在が自分の心の一部になっている。


その存在のおかげで『居場所』というものの大切さを肌身で感じた・・・。


パチパチ・・・。


火の粉が薄暗くなってきた空に舞い上がる。

「一度聞いてみたかったんだが・・・。お前がもし・・・何のしがらみもなく、かごめ様を見つめれたとしたらお前は・・・。どうするんだ?」

「何がだ」

「かごめ様を元の世界に帰すのか?それとも引き留めるのか?それともお前がかごめさまの国へいくのか?」

「んなっ・・・」


いきなり核心部分をつくような問いに犬夜叉は言葉が見つからない。

「すまんすまん・・・。意地悪な質問だったな。忘れてくれ・・・」

「けっ・・・」

犬夜叉は腕組みをし、複雑そうな顔をした。


「だたな・・・。私は急にふと思う。こうして仲間と一緒にいることがいつか無くなる日が来るのかと思うと・・・」

「弥勒・・・」

弥勒はどこか遠くを見つめた。

「はぁ・・・。なんだか今日は疲れているらしいな。弱音を吐くなんて。しかもお前の前で」

「なッ。なんだと。てめぇ!」

「よいしょっと」

弥勒は立ち上がり、ひざに付いた土を払い、炊いていた火を足で消す。

「さ・・・。帰るとしましょう。帰るべき場所へ・・・」

「帰るべき場所?」

「仲間達・・・。私は珊瑚の元へ・・・。そしてお前はかごめさまの元へ・・・」


「・・・ああ・・・。そうだな。俺達の帰るべき場所に・・・」


犬夜叉も弥勒も疲れた体も忘れて、一直線に一秒でも早くとすごいスピードで走った・・・。


早く帰ろう・・・。


帰ろう・・・。


自分のいるべき場所に・・・。


宿屋に帰った弥勒と犬夜叉。

弥勒は真っ先に珊瑚のいる部屋に向かう。

「ああ、珊瑚、ただいま帰りましたぞ〜!」

両手を広げて珊瑚抱きしめるそして。


「ひゃああッ!!」


いきなりセクハラでただいまの挨拶・・・。


「嗚呼、早く珊瑚のおしり、いやいや珊瑚に会いたくて飛んで帰ってきました」

「そう・・・。それは・・・おかえンな、さいッ!!!!」

バッチーン!!

「ふん!!」

珊瑚、おかえりのビンタをくわらし、完全にお怒りモード。

「・・・豪勢なお出迎えありがとうです珊瑚・・・」

犬夜叉はいつものごとくあきれ顔・・・。

「ったく。懲りねぇ奴だな・・・。おいそれより七宝、かごめどうした?いねぇじゃねぇか」

「ああ、かごめなら多分庭におったぞ」

七宝はポテトチップをボリボリとほおばりながら言った。

早速犬夜叉が庭に出てみると・・・。

舞い落ちる紅葉の葉を見上げているかごめの後ろ姿が・・・。

後ろ姿とその愛しい匂い。

それだけで疲れた体が軽くなる・・・


かごめが犬夜叉の気配に気づき・・・。


ゆっくりと振り向く・・・。

柔らかそうな髪がフワッとなびき・・・。


小走りで自分に駆け寄ってきた・・・。


そして・・・。


「犬夜叉・・・!おかえりなさい!」


紅葉の様な愛らしい笑顔が・・・。


犬夜叉の瞳に飛び込んだ・・・。


体の力がぬける程に・・・。


その笑顔はしみこんで・・・。


暗闇で光を見つけたように 迷子が母を見つけたように


深い 深い 安堵感が犬夜叉を包む・・・。


ホッとして 


ホッとして


体が軽くなる位にホッとして・・・。


「あれ・・・?犬夜叉どうしたの?」


「な・・・なんでもねぇやいッ!」


犬夜叉はくるっとかごめに背を向け、目をごしごしこすった。


照れくさい涙はやっぱり見られたくない。

「そ、それよりかごめお前、何ぼうっと紅葉なんか眺めてたんだよ」

「だってあんまり綺麗だったから・・・」

「けっ。そんなもん山にいきゃあどこにでもあるだろうが。いちいちここでみなくたって・・・」

「・・・。そうだけど。犬夜叉と一緒に見てたいなって・・・。ずっと待っての」

くすっと笑うかごめ。


「・・・待ってた・・・?それだけのためにここで・・・朝からずっと・・・か?」


「うん」


「・・・」


『抱きしめたい・・・!!!』


激しい衝動が走った・・・・


「・・・ッ」


犬夜叉の両手が微かにビクッと上がりかけた・・・。

「?どうしたの・・・?」

「えッ!?あ、い、いや、な、なんでもねぇッ!!」


「・・・。そう・・・。」

かごめは不思議そうに首を傾げた。


いざというとき、どうしてこう、後込みしてしまうのか。犬夜叉。


それでも・・・。


かごめが散る紅葉を指さす。犬夜叉も見上げて・・・。


くるくるくる・・・。


紅葉が回転して舞う様に落ちる・・・。


かごめと犬夜叉を彩るように。


「綺麗だねぇ・・・。踊ってるみたい・・・」


草花をじっくり眺める・・・。昔はそんなこと、本当に自分にとってはどうでもいいことだった。

ぐだらないことだった。

でも・・・。


この紅葉のように一緒にいると心が躍る程、愛しい女ができて・・・。


その女と見上げる紅葉は、果てしなく・・・。


綺麗だ・・・。


ひらり・・・。


かごめの左肩に紅葉が一枚落ちた・・・。


かごめは紅葉に見とれてそれに気がつかない。


「・・・」


犬夜叉は恐る恐る右手でかごめの左肩を軽く払った・・・。

「犬夜叉?」


「も、もみじがついてたぞ・・・」


「あ・・・ありがとう・・・。って・・・え・・・っ」


犬夜叉の左手がそのままかごめの体を引き寄せ・・・。


そして両手でかごめを後ろから包み込む・・・。


「犬夜叉・・・」


「こっ。こここれでもう紅葉の葉っぱがくっつくこと・・・ねぇだろ・・・」


「・・・うん・・・。そうだね・・・」


かごめも自分の胸で交差された犬夜叉の手の甲にそっと手を置く・・・。


そしてまた二人は、紅葉を見上げる・・・。


くるくるくる・・・。


踊る 踊る 紅葉が踊る・・・。


固い絆で結ばれた二人を彩るように・・・。


「犬夜叉」


「何だよ」


「おかえりない・・・」


かごめの『おかえりなさい』を聞きたくて・・・。


俺は帰ってきた・・・。

「・・・ただいま・・・。かごめ・・・」


かごめは犬夜叉の『ただいま』が聞きたくて・・・。ずっと待っていた・・・。


二人  互いに確認しあう。


大切な人が側にいることを・・・。


ずっと・・・。



帰ろう・・・。


帰ろう。


帰るべき場所


自分の居場所に・・・。


愛しい人が待つ場所に・・・。


そこが俺のHOME・・・。