や・・・やだ、どこ行くの・・・?犬夜叉・・・。
そして犬夜叉の腕にそっと手をまわす桔梗・・・。
「ちょ・・・。ど、どこ行くの・・・!二人とも・・・。犬夜叉!!!」
かごめの声も無視し、二人は寄り添って遠くに見える白い光にむかって歩き出す。
「待ってよ・・・!まだ、奈落も倒してないのに・・・。どこいくの!まって!!お願いまって・・・!きゃあッ!」
必死に手を伸ばし、犬夜叉達を追うかごめ。
しかし、どんどん離れていく、引き離される・・・!
「お願い、犬夜叉、まって・・・。お願い・・・。あたしを無視しないでーーーーーーッ!!!」
腕がひきちぎれるくらいに手を伸ばしても、
伸ばしても、届かない。
二人に。
犬夜叉に・・・。
「きゃあッ!!」
激しく転ぶかごめ。手から血が・・・。」
「う・・・うう・・・。お願いだからあたしを無視しないで・・・。あたしはここにいるのにーーーーーー・・・!!!犬夜叉ーーーー・・・ッ!!!!」
嫌だ。嫌だ。嫌だ・・・!
こんな運命。こんな別れ・・・。
「行かないでよーーーーー・・・ッ」
白い光の中に・・・二人は消えていった・・・。
うなされ、ハッと目覚めるかごめ・・・。
夢だとわかって安心するはずなのに、あまりにリアルな夢にいい知れない恐怖心が湧いた。
怖い・・・。
怖い・・・
全身に行き場のない恐怖心が毒が回るように飛び散って、柔らかい布団に横になっていてもじっとしていれれない。
何度も寝返りをうつかごめ。
わき上がってくる恐怖心で大声をだしそうでじっとしていられない。
怖い、怖い・・・。
出所のない、恐怖心がかごめに襲いかかる。
なんで、こんなに、怖いの、どうして・・・!!!!
どうして・・・・ッ!!!!!
いてもたってもいられなくなったかごめは、気がついたら楓の小屋をパジャマのままで飛び出していた。
「ハァハァ・・・」
異常が息を荒く・・・。
怖い夢を見た訳じゃない。
なのにどうしてこんなに・・・。
星のない夜空がより一層かごめを不安にさせた。
昼間・・・。犬夜叉は桔梗と会っていた。
初めてじゃないのに、もう、前よりは平気だと思っていたのに、何なんだろう・・・。
高いところから突き落とされるより、怖い・・・。
明日が来るのが怖い。
一秒、一分、一時間、時が過ぎるのがこんなに怖く感じる。
どうして、どうして、どうして・・・。
最初の頃より、嫉妬も強くなってる。
どうして・・・。
「かごめ、どうした?」
「!!!」
犬夜叉の声にビクッと肩をこわばらせ異常に驚いた。
「ど、どうしたんだ!?一体・・・」
「ご、ご、ごめん・・・。な、な、何でもない・・・何でも・・・」
「かごめ・・・」
かごめの様子がおかしい・・・。
犬夜叉はとても心配になった。
「何かあったのか・・・?眠れないみてぇだったし・・・」
「・・・。何もない・・・。なにも・・・」
そういうかごめの手は震えて・・・。
「大丈夫だから、犬夜叉・・・。さき眠って・・・」
「でも・・・」
「大丈夫だから・・・!」
かごめは強がってそう言う。
本当は、心底犬夜叉に側にいてほしい。
でも・・・。犬夜叉に甘えちゃいけない。
こんな弱い自分じゃいけないから・・・。
「・・・」
犬夜叉は心配そうな顔をしながらも、小屋に戻ろうと背を向ける・・・。
さっき見た夢がたぶる・・・。
自分のことを置いて・・・。
桔梗と二人・・・。
遠くへ・・・。
遠くへ・・・。
やだ・・・。
やだ・・・。行かないで・・・。お願い、犬夜叉・・・。
行かないで・・・・ッ!!
「!!」
かごめはたまらず、犬夜叉を後ろから抱きしめていた・・・。
「かごめ・・・?」
「・・・」
捕まえていたい。
こうして両手でどこへも行かないように、ずっと・・・。
「かごめ、どうしたんだ」
かごめはハッと我に返る。
まるで子供のように犬夜叉にすがる自分が急に恥ずかしく感じた。
パッとかごめは犬夜叉から離れる。
「ご・・・ごめん。なにやってんだろあたし・・・。き、気にしないで、ホントに何でもないから・・・」
かごめは深呼吸して、気持ちを落ち着かせそう言った。
「かごめ・・・」
「ほ、ホントにもう、大丈夫だから・・・。だいじょう・・・」
ふわッ・・・。
広い胸に吸い込まれたかごめ・・・。
犬夜叉はかごめを抱きしめた・・・。
「何があったかしらねぇけど・・・。強がるな・・・。しんどい時ぐらい俺に頼れよ・・・」
「・・・。犬夜叉・・・」
哀しい顔は見たくない。
かごめにとって俺は辛いときぐらい甘えてられる程の存在なのか、わからない・・・。
でも・・・。かごめの哀しい顔は見たくない・・・。
「ありがとう・・・」
「礼なんか言うな・・・。俺はかごめに頼って欲しいんだ・・・」
「うん・・・。頼りにしてる・・・。ありがとう・・・」
「・・・。だから・・・。礼なんか言うなっていってんだろ・・・」
「えへへ・・・」
犬夜叉の言葉と胸のあたたかさがかごめに染みる・・・。
「えへへ・・・へへへ・・・。う・・・」
笑いながら泣く・・・。
涙が止まらない
止めようとしても止まらない。
怖かった夢。
覚悟しても覚悟しても、
何度も覚悟しても、
この先の選択への怖さは消えない。
身が切られるほどの切なさが消えない。
一時でいい。
一時でいいから、それ全部を忘れたい・・・。
この大切な人の胸の中で・・・。
「かごめ・・・」
自分の胸で小刻みに震えて泣くかごめ。
何がそんなに哀しいのか、聞けない。
俺のせいなのか、俺のせいなのか・・・?
聞けない。聞くことができない。
ただ、泣くお前をこうして抱きしめるしかできない。
だから、もっと甘えてほしい。
辛いとき、お前に甘えてしまう俺の様にお前も・・・。
お前にとってそんな存在でいたい・・・。
「寒くないか・・・?」
「うん・・・。大丈夫・・・」
互いのぬくもりは骨の髄まで染みこんでいる。
匂いもすべて・・・。
犬夜叉はかごめの髪の匂いをかぐようにかごめの髪に手を絡ませて抱いた・・・。
星すら出ていない夜。
でも、熱く、長い長い夜だった・・・。