ちょっと照れ屋のサンタクロース

現代の世は、クリスマスムード一色。

日暮家でも、今には小さなかごめと草太がクリスマスツリーを窓際に飾っていた。

「草太。今年は何をサンタさんにおねがいするの〜?」

「・・・姉ちゃん。俺幾つだとおもってんだ。そんな年じゃないよ」

「まだ子供でしょ。サンタクロースを信じてないなんて寂しいわねぇ」

ツリーに雪の綿をつけるかごめ。

「ねぇちゃんこそ、サンタクロースに『犬の兄ちゃん迎えに来てくれ』ってお願いしたら?」

ギロッ!!

草太、突いていけない点を突いてしまった。

ただいまかごめ、犬夜叉と喧嘩して帰省中。

「あんな奴の事なんか言わないで!ふんッ」


かごめは怒って自分の部屋に行ってしまった・・・。

「は〜・・・」


ドサッ。

ため息をつきながらベットに寝転がるかごめ。

本当ならば犬夜叉と一緒に過ごす筈だったクリスマス・・・。

プレゼントも用意したのに・・・。

机の上にピンクの小さな紙袋が。

(・・・。犬夜叉へのプレゼント・・・。どうしよう・・・。渡しにいかなくちゃ・・・。行かなくちゃ・・・いかな・・・くちゃ・・・)


温かい部屋・・・。


かごめは夢の中に・・・。


夢の・・・。



雪・・・。

まあるい小さな綿菓子が降ってくる・・・。

きれいだなぁ


きれいだなぁ・・・。

ご神木がおっきなクリスマスツリーみたいね。おかあさん・・・。


「そうね。かごめ」

5歳のかごめ。お気に入りの赤色の傘をさして、母と二人、雪が積もるご神木を眺めていた。

「ねぇお母さん。サンタさんって・・・どこから来るの?」

「かごめはどこからだと思う?」

「うーんとね・・・。あそこから!」

かごめの小さな人差し指は、骨喰いの井戸を差した。

「まぁ!うふふ。でもどうしてそう思うの?」

「何だかよく分からないけど、あそこから赤い服を着た人が出てきそうなきがして・・・」

どうしてだろう・・・。


井戸がとても気になって・・・。


「あ、そうだ。かごめ。かごめはサンタさんに何をお願いするの?」

「うーんとねぇ・・・。かごめは・・・」

かごめはご神木に向かって小さな両手を合わせて願った・・・。


「あのね。サンタさん。あたしね。とっても大切な人がいるの・・・。でもその人とケンカばっかり・・・。『ごめんね』って言いたいのに言えなくて。だから、サンタさん、その人と仲直りさせてください。お願いします・・・」


お願い・・・。サンタさん・・・。

あれ・・・。でもその『大切な人』って誰だろう・・・。


一体誰のことだろう・・・。


一体・・・。



ガラガラ・・・ッ。

夜も更けた頃、かごめの部屋の窓が勝手に開き、シャッと黒い影が部屋に進入・・・。

ベットに眠るかごめをじっと見つめる黒い影・・・。


(・・・けっ・・・。気持ちよさそうに眠りやがって・・・。迎えにきてやったってのに・・・)

「う〜ん・・・」

かごめ、ぼんやりと目を開けると、そこに赤い服と白い長い髪が見えた。


「・・・。あれ・・・。もしかして・・・。サンタさんですかぁー?でも、変なサンタ。耳がついてる〜」

くいくいくい。

寝ぼけて犬夜叉の耳を掴むかごめ。

「俺は『サンタ』じゃねぇ!なにしやがる!てめえ・・・」

かごめの目は半開き。ぼんやりと天井を見つめている。


「サンタさんあのね・・・。あたしのお願い、聞いてくれる・・・?」

(寝ぼけてるのか、それとも振りしてんのかどっちなんだ・・・)

犬夜叉はとりあえず、かごめのベットの横に背を向けてどすんと座った。

「おう。聞いてやる」

「あのね・・・。サンタさん。あたしね。好きな人とケンカしてたんだけどなかなか素直にあやまれなくて・・・」


『好きな人』と言う言葉に、犬夜叉、ちょっと照れる。

「だから、代わりにごめんねって・・・。ごめんねって・・・。伝えてください・・・。それと・・・」


「それと・・・。なんだよ」



「・・・大好き・・・って・・・」


「・・・」


目を閉じたまま・・・かごめは犬夜叉に語る・・・。


寝言なのか、それとも・・・。

「そ、そう伝えりゃいいんだなっ。わかったよ。ちゃんと伝えておく・・・。でも俺もお前に伝えたいことが・・・」


「・・・。スー・・・」


なんとも心地よさそうな寝息が静かな部屋に響く。

犬夜叉が振り向くと、かごめは完全に眠っていた・・・。


「な、なんだよ!!お前・・・。今のは・・・。今の・・・」

かごめの寝顔・・・。


あんまり気持ちよさそうだから・・・。

犬夜叉はそれ以上、何も言えなくなってしまった・・・。


かごめをじっと見つめる犬夜叉・・・。


(・・・。よく寝るな・・・。疲れてるのかな・・・)


自分もかごめに誤りに来たのに・・・。

先を越されてしまった。


寝言か、それとも・・・。


「あのな・・・。ちゃんと伝わったぜ・・・。お前の気持ち・・・。だから・・・。安心しろよな・・・。。俺も悪かったよ・・・。怒鳴ったりして・・・。それと・・・」


それと・・・。


一番言いたくて、なかなか言えない言葉・・・。


伝えたい・・・。


「それと・・・。あの・・・。その・・・。お前・・・。お前が・・・」


でもやっぱり言えない・・・。


言えない言葉の代わりに犬夜叉は、そっと自分の衣をかごめに着せた・・・。


赤い、着物を・・・。


「ゆっくり眠れよな・・・。ずっと待っててやっから・・・。ところで・・・。サンタって誰だ?」


かごめは眠りながら、衣の温もりをちゃんと感じていた。

サンタクロースの上着を着せて貰っているゆめを見ていたから・・・。


「・・・サンタさん、ありがとう・・・」


三角耳のサンタクロースはやっぱりかごめの言葉に照れている・・・。


「・・・けっ・・・」


外は雪・・・。


寒さも増してきたが、かごめの部屋は限りなく優しくて、温かかった・・・。