君が大好き
〜小さな恋の物語〜

「わー・・・」

野原で子供達が鬼ごっこをして遊んでいる。

天気がいいのでみんな元気いっぱいだ。

その子供達の輪の中に、ある少女が近寄ってきた。

「あ、なずなが来た!」

遊んでいた子供達は少女の姿を見つけると避けるように、いっせいに他の場所へ走っていく・・・。

しゅんとうつむく少女なずな。

「なずなちゃん」

「あ・・・。かごめお母ちゃん!」

かごめに駆け寄るなずな。

なずなは、以前、犬夜叉達が立ち寄った村で瀕死の状態の所を助けた少女だ。楓の村に連れ帰り村人の家預けたのだが・・・。

なかなか村の子供達と馴染めずにいた。

「もしかしてまた、なずなちゃん、仲間にいれてもらえなかったの・・・?」

「・・・」

なずなは寂しそうに頷く・・・。

「全く!!いいわ。私が一言いってくる!」

「いいの・・・っ。かごめお母ちゃん」

そう言ってかごめの制服の裾をひっぱるなずな。

「どうして?」


「だってね・・・。あたしが悪いの。元々この村の子じゃないし、それに・・・。こんな顔だから・・・」


自分の頬を触るとざらざらする。

やけどした跡の様な薄紫のあざが残って・・・。

一命を取りとめ、元気になったなずなだが、怪我や病でできた湿疹などのあとが体に残ってしまった・・・。


「・・・気味悪いよね。みんな近づかないよね・・・。いいんだ。あたし・・・」


そう言いながら自分の頬をさするなずな・・・。

それがたまらず痛々しく・・・。


「なずなちゃん・・・ッ」


かごめは思わずぎゅうっと抱きしめた。


「なずなちゃん、なずなちゃんは気味悪くなんてないよ・・・。とっても優しい子・・・。温かい子・・・。あたし、なずなちゃんが大好きよ。なずなちゃんのまあるい目もピンクのほっぺも大好きよ。なずなちゃんが大好きよ・・・」

「うん。あたしもかごめお母ちゃんが大好き。だから辛くないよ。心配しないで」

健気なまでのなずなにかごめはめいっぱいめいっぱい抱きしめてあげた・・・。


その様子を、草の影から見ている一人の少年。

かごめに抱かれたなずなをじっと見ている。

「おう、そこのガキ、何かごめをみてやがる?」

「!!」

ハッと驚いて振り向くと犬夜叉が。

「わッ。かごめお姉ちゃんに尻ひかれてる犬の兄ちゃんだ!」


「だ、誰がかごめにしり引かれてるってんだ!!」

犬夜叉は少年の着物の襟をつかんでかごめの側に連れてきた。

「あれ?犬夜叉。どうしたの?洋太君!」

「お前となずなの跡をずっとつけてやがった」

洋太とはなずなが世話になっている家の息子だ。

「・・・洋太兄ちゃん!どうしたの?」

「・・・。あ、いや、その・・・。さ、散歩だ。散歩」

洋太はちょっと照れくさそうに言う。

「そ、それよりなずな、お前、薪割り終わったのか!?」

「あ、ごめんなさい。まだやってなかった。えへッ」

なずなはぺろっと舌を出して笑った。

「・・・っ」

ぽ、っと赤くなる洋太。

「お、俺も手伝ってやる。行くぞ!」

「うん。じゃあ、かごめお母ちゃんまたね!」


かごめに手を振ってなずなは帰っていく・・・。

「・・・あいつ、元気になったな」

「うん。本当によかった・・・。でもまだこの村の子達と仲良くなれてないみたいで・・・」

「・・・人間同士でも違う村の子供は受け入れねぇってか。けっ・・・」


ちょっとした違いで、人から妖怪からはじかれていた幼い時。

その時の寂しさも悔しさも犬夜叉は痛いほど知っている・・・。

「でもなずなちゃんにも『強い味方』がいるみたいね。うふ」

「味方?誰のことだよ」

「あれ?あんた、気がつかなかったの?全くホント、こういう事には鈍いんだから・・・」


自分の色恋も不器用だが、人のことになるとてんでアンテナが効かない犬夜叉。

かごめはあきらめのため息をひとつ、つく。

「な、なんでいッ!もったいぶらずにいいやがれ!」

「洋太君よ。多分なずなちゃんのこと、好きなのよ」

「あのガキがか・・・?」

「うん」

犬夜叉、実は洋太がかごめを見ていたのではなくなずなを見ていたのだとわかり、ちょっと安心。

「もっとあの二人、仲良くなって欲しいんだけどな・・・。『母』としては娘の恋を見届けなくちゃ。うふふ・・・」

にこにこしながら楓の小屋に戻っていくかごめ。

「すっかり母親気取りだぜ。全く・・・」

しかし、嬉しそうになずなの事を見守るかごめが何だかちょっと綺麗に見えたり。犬夜叉。


こうして小さな恋が芽生え始じめたのだが、早速物語は動き出す。

次の日。楓の小屋まで洋太が犬夜叉を訪ねてきた。

「おう。かごめ姉ちゃんに尻引かれて犬の兄ちゃんいるか?」


「だぁあれが尻にひかれてるだ!!てめぇ、ガキだからって手加減しねーぞ」

犬夜叉は拳をグーにしてご立腹。

しかし、ムキになる犬夜叉に全く反応せず洋太自分の用件を淡々と犬夜叉に伝える。

「あのさ、話があるんだ。ちょっと・・・」

「な、なんだよ。めんどくさいことならお断りだぞ」

「あの・・・その・・・」

もじもじする洋太。

『洋太君、なずなちゃんの事が好きなのよ』


昨日のかごめの言葉を思い出す。

「・・・なんでい。話ってのはなずなの事か」

「!!ど、どーして・・・!」

「へん。そのくらいの事、お前の態度見てたら俺にだってわからなぁな!」

嘘つき犬夜叉。かごめから教えて貰ったのに。

「ま、ともかくここじゃあなんだ。場所変えるぞ」

そう言うと、屋根の上に洋太を抱えて登る犬夜叉。

・・・小屋の中に筒抜けとも気がつかずに。

「それで、なずながどうしたんだよ」

「う、うん・・・」

洋太、10歳。3日前からの胸のときめきについて語り出す。

洋太は母と二人暮らし。

なずなの引き取り手がなかなか見つからずにいたのだが、洋太の母が喜んで申し出てくれたが・・・。

3日前から洋太の母が疲れから床に伏してしまった。

看病する洋太となずな。

特になずなは夜も寝ないで洋太の母の汗を拭って・・・。

「おい、なずな。お前は寝てろよ。母ちゃんは俺がみてるから」

しかし、なずなは首を横に振る。

「なんでそこまでするんだ?お前の母ちゃんでもないのに・・・」


「・・・。かごめお母ちゃんもこうして眠らずに病気だったあたしの事助けてくれたんだ・・・。だからあたしもかごめおかあちゃんみたいにしたいの」

「でも・・・」


「洋太兄ちゃんのお母ちゃんはあたしのお母ちゃんでもあるから。だから大丈夫だよ・・・!えへっ」

(・・・ドキッ)


そのなずなの笑顔を見たときから洋太の原因不明の胸の高鳴りが始まった。

胸の高鳴りだけではなく、何故か目が自然になずなの姿を追って・・・。


洋太は今まで感じたこともない感覚に驚き、何か悪い病気ではないかと心配になったのだった。

「・・・。だからってなぁ、何で俺んとこに来たんだよ。」

「だってさ、兄ちゃんも同じ症状なんだろ?かごめ姉ちゃんが笑ったとき、ドキッとした顔してたじゃんか」

「んなッ・・・」

洋太君、鋭いです。犬夜叉よりよっぽど人並みのアンテナ持っている。

「ば、バカ言ってんじゃねぇよ!誰が・・・」

「なぁ、どやったらこの『ドキドキ』っての、治るんだ?俺、夜も眠れなくて・・・。ハァ・・・」

恋のため息をつく洋太・・・。

犬夜叉よりよっぽど進んでいる。

「・・・。なずなを大事にしてやりゃいいじゃねぇか」

「なずなを大事に・・・?」

「おう・・・。あいつ、村のガキどもとあんまり仲良くねぇんだろ?だったらお前が味方になってやれよ」

犬夜叉はかごめが言っていたことをそっくりそのままアドバイス。

「・・・そうか。そうだよな・・・。俺があいつ、守ってやらなくちゃ・・・!」

洋太はグッと手を握って決意を新たにする。

「んじゃ、兄ちゃんもかごめ姉ちゃん守ってやれよな」

「う、うるせえッ!」

ムキになる犬夜叉など気にせず、洋太は空に燦々と輝く太陽を見つめ、惚れたおなごを守る決意をしていた。

「なずな・・・。心配すんな、お前の事は俺が・・・」

「・・・けっ。ガキが・・・」


すっかりマイペースの洋太の横で、ふてくされる犬夜叉だった・・・。


一方。なずなとかごめ、おなご達の方でもなにやら恋の話に。

野原で二人で花を摘んでいる。

なずなは近頃、妙に洋太と視線があうんだとかごめに話していた。

「うふふ・・・。それはね、きっと洋太君がなずなちゃんの事が好きだからよ」

「・・・す、き・・・?あたしも洋太兄ちゃん好きだよ」

あっけらかんとした顔のなずな。

「うん。でもね、洋太君のはちょっと違うのよ。『恋』をしているのよ。なずなちゃんに」

「・・・こ・・・い・・・?池の?」


かごめ、ガクッとこける。

「そうじゃなくて。なずなちゃんを見て、きっとドキドキしてるの。それが恋よ」

「・・・。胸がどきどき・・・。どきどき・・・」

なずなは自分の胸に手をあててみる。

確かに心臓の音は感じるがドキドキって感じではない。

「・・・。うふふ。きっと洋太君、なずなちゃんの事をとっても大切に思ってる。もしかしたらお嫁さんにしたいって思ってるんじゃないかな」

「・・・!」

お嫁さん、と言う言葉になずなの心もドキっと感じた。

「あ・・・!かごめお母ちゃん、今、あたしも、ドキってしたよ!わあい!!あたしも!”恋”してる、ドキッと恋してるんだ!」

なずなはドキってしたのが嬉しくてかごめの膝に乗っかった。

勿論、かごめも嬉しい。

だけど、なずなのドキドキは何故か止まってしまう。

「・・・。かごめお母ちゃん、ドキドキ、無くなったちゃった・・・」

「え?」

「だって・・・。あたし・・・可愛くないもん。洋太兄ちゃんのお嫁さんにはなれないよ・・・」

なずなは自分の顔の痣の部分を哀しそうに撫でる・・・。

「。そんなこと無いわよ!。なずなちゃんは可愛いわ。世界一可愛い!髪の毛も綿菓子みたいにふわふわだし、目も綺麗・・・。何よりね、心がとっても優しい子よ・・・」

「うん・・・。でも男の子はやっぱり可愛い子がいいんじゃないかな。菩薩様みたいなかごめお母ちゃんみたいに・・・」

「なずなちゃん・・・」


かごめは何て言葉をかけていいか分からない。


女の子は誰しも可愛くなりたい気持ちを持っている。


だからこそ、なずなの気持ちが痛々しくて・・・。


「・・・あ・・・!かごめお母ちゃん、泣かないで!あたしね、全然大丈夫。可愛くなくてもかごめお母ちゃんにこうしてだっこしてもらってるだけで幸せだから!ホントだよ。泣かないで。泣かないで・・・」


なずなは着物の袖口でかごめの涙をそっと拭った。

涙を拭った着物の感触が優しすぎて・・・。


かごめは愛しげに愛しげに小さな体をぎゅううっとぎゅううっと抱きしめた・・・。


「あたしはなずなちゃんが大好きだからね・・・」


小さな恋の物語。幼い恋だが、切なさが立ちこめてきた。

そして次の日物語は急転する。


いつものように村の子供達は野原で元気に遊んでいた。

なずなは遠くから寂しそうに見つめている。

更にそんななずなに木の陰から熱い眼差しを送るのが洋太。

(・・・なずな・・・。やっぱり友達が欲しいんだな・・・。よし・・・!ここが俺の出番だ!)

拳を握って自分に気合いをいれる洋太。

惚れたおなごのために人肌ぬごうと、洋太は野原で遊ぶ子供達の所に走って叫んだ。

「洋太兄ちゃん!」

「おい!お前ら、なずなも仲間にいれてやれ!!さもないと痛い目にあわずぞっ!!」

ドスの聞いた洋太の声に子供達は少し怯える。

「おう!どうなんだ!わかったのか!!」

「洋太兄ちゃん、やめて!」

なずなが洋太と子供達の間に割ってはいった。

「なずな・・・?だってこいつら、お前を仲間はずれに・・・」

なずなは首を横に振った。

「違うの。みんなは意地悪じゃなの。ただあたしがこの村の子じゃないし、それに顔がこんな風だから怖いだけなんだよ」

「なずな・・・」


なずなは子供達に向かって語りかける・・・。

「あの・・・。気味悪いかもしれないけど、あたし・・・。みんなと仲良く鬼ごっこしたり花摘みしたりしたいんです・・・。あたしとお友達になってください・・・!!」


なずなはそう言って深く深く頭を下げた・・・。


子供達はしばらく沈黙して・・・。

「おい、お前ら!!なずながここまで言ってんのになんで何もいわねぇんだ!!なずなは俺達とどこが違うって言うんだ!!何も変わらねぇじゃねぇかよ!!」


洋太の言葉がみんなの胸を突く・・・。


そう。何も変わらない。どこも違わない。


みんな、一緒なのに・・・。


「・・・」

子供達のうちの一人の女の子がなずなに近づいてきた。


そして・・・。

「なずなちゃん、これあげるね」


ふさッ。

なずなの頭に花の髪飾りが・・・。

「これ・・・。くれるの・・・?」

「うん!なずなちゃん、ごめんね。あたし達も・・・。ホントはなずなちゃんと友達になりたかったんだ。でも何て声をかけたらいいかわからなかったの。なずなちゃんのお顔見てたら胸が痛くなって・・・。ごめんね。ごめんね」


女の子は泣きじゃくりながら謝った。

「オラもごめんな」

他の子達もなずなに謝った。

なずなはにこっと笑ってこう言った。


「ううん。あたしの方こそ綺麗な花飾りありがとう!ね!じゃあ、あたしも鬼ごっこしてもいい??」


「うん、いいよ!!」


子供達も笑顔で全員元気に返事した・・・。


そして、野原でみんな明るい元気な笑顔で走り回る・・・。


「なずな・・・。よかったな・・・!なずな、俺・・・。やっぱりおめぇがすげぇ好きだ・・・」


駆け回って遊ぶなずなの笑顔を見ながら洋太は高鳴る鼓動を改めて感じていた・・・。


そして一部始終を遠くからすべてかごめも見ていたのだった・・・。


夕暮れ。

友達になれた子供達共別れ、野原にはなずなと洋太の二人きり・・・。


いや、土手の上になずなと洋太の背中を見守るかごめと犬夜叉だ・・・。


幼い小さな背中。

小さな恋の物語の最終章だ。

「洋太兄ちゃん。今日本当にありがとう!洋太兄ちゃんのおかげでみんなと友達になれたよ!」

「い・・・いや・・・。あれはお前が偉かったんだよ。お前が・・・」


二人きりなのをすごく意識して、洋太は緊張。

ドキドキ感も最高潮だ。

そしてピュアな想いは自然と言葉になる。

「な・・・。なずな・・・。お、お、お、俺・・・おめぇが好きだ・・・」

洋太の顔は、みかんより耳の裏まで赤くなっている。

「ありがとうでも・・・。洋太兄ちゃん・・・。あたし・・・。可愛くないよ・・・。男の子はやっぱり肌も顔も綺麗な子がいいんじゃないのかな・・・?」


うつむくなずな・・・。


思いかげないなずなの言葉に洋太は・・・。

「・・・あたしね。かごめお母ちゃんみたいな女の人になりたいんだ。優しくて温かくて・・・。でもかごめお母ちゃんみたいな美人になるかわかんないし・・・」


女の子は。


好きな人のために綺麗になりたいと思う。


でも顔のあざも体に残っている湿疹の跡もそう簡単には消えない事をなずなは知っている・・・。


「・・・。なずな。ほら、見ろ」

洋太は着物をぺらっとめくって膝小僧をなずなに見せた。

「あ・・・」


洋太の膝には深い深い刃物で切りつけられた傷跡が生々しく残っていた・・・。


「・・・。夏になると村のみんな、川で遊ぶんだ。でもオレは遊べなかった。この傷、見られたくなかったから・・・。でもな、母ちゃんが言ったんだ」


『隠すって事は洋太自身を隠すのと一緒なんだよ!堂々としてな!堂々と!』


「オレは母ちゃんの言うとおりだと思った。そりゃ今でも傷を見られるの怖いけど・・・。でもこれが『オレ』だから。だからなずな、お前も堂々としてればいいんだ!」


夕日に映えた洋太の顔が・・・。


なずなの瞳にとても凛々しく頼もしく映った・・・。


トクン、トクン・・・となずなの小さな心が踊り出す。

「洋太兄ちゃん、すっごく格好いい・・・」

「えッ」

「あたしね、今、とっても胸がドキドキしちゃってる。どうしよう!あたしね、洋太兄ちゃんに『恋』してるみたい・・・!」


ドッキーン!!

もの凄く素直であどけないなずなの告白に洋太の胸は最大に波打つ。


洋太の緊張度も最高値に。


「な、なずな・・・。オレ・・・。オレ・・・。おめぇの優しい心が、いつも笑ってるおめぇが好きだ・・・。それが一番オレ、大事なんだ・・・」


「うん。あたしもおんなじ・・・!おんなじだよ・・・!」


楓のようななずなの手を洋太は精一杯の気持ちでぎゅっと握った・・・。


抱きしめることも、口づけもまだ何も知らない小さな恋人達。


でもお互いを思いやる気持ちは大人にも負けないし、強い。


そして小さな恋人達を見守るちょっと大人の恋人達というと・・・。


「なずなちゃん・・・。よかった・・・」


小さな恋の実りに感激して涙が止まらない。


「・・・けっ。大げさな・・・。たかがガキ共の色恋じゃねぇか。可愛いもんだぜ」


果てしなく洋太達の方が進んでいると思うが、犬夜叉君。

「どうしてあんたはそういう事しかいえないの」

やっぱり呆れ顔のかごめ。

でもかごめが嬉しいのはそういうことじゃなくて。

「・・・あたしはね、洋太くんがなずなちゃんの本当の良いところをありのままに受け止めてくれた事が嬉しいの。洋太君はあの子に居場所を作ってくれたの。人より何倍も深い心の傷を持つあの子にそのことがどんなに必要だったか・・・。あたし本当に嬉しくて・・・」


かごめのその言葉の持つ意味は犬夜叉自身が一番よく知っている。


何の偏見も持たず、他人を信じられず意固地になっていた自分の心にぶつかってきてくれた。

時には泣いて。時には怒って・・・。


何回も・・・。


自分に素直になる勇気をかごめから貰った・・・。


なずなが洋太からもらったように。


「けっ・・・。ちょっと泣きすぎなんだよ。お前は・・・」


犬夜叉は不器用な手つきでかごめの涙を拭う。


「だって・・・。なずなちゃんの顔見てたら・・・」


「・・・。しゃぁねぇな・・・。今だけは許してやる・・・」


犬夜叉はかごめの肩をそっと引き寄せ、自分の胸に寄せた。


「・・・。アリガトウ・・・。犬夜叉・・・」


相変わらずかごめを抱きしめると温かくて。


限りなく優しい匂いに包まれる。


かごめを抱く度、どれだけそれを自分が欲しているか思い知らされて・・・。


そして


自分の居場所はここなのだと・・・。


ここに


かごめのそばに居たいと・・・。


強く強く願う・・・。



ただひたすらに。


一番大切なのは、ただ一つ。


君が大好きだってことだけだから・・・。


fin
犬夜叉庵TOP

犬映画3回目鑑賞に行った某日。映画を見終わって、映画館の喫茶店(ミスド)に一人寂しく(ほっといて・涙)コーヒーとドーナツを食していました管理人。隣の席の2組の親子連れ。
どうやら母親同士が友達のご様子で。
6歳ぐらいの男の子と女の子。

にこにこしながら手を繋いでおりました。そしてこんな会話が。
「おれ、○○ちゃん、すきだよ」「うん。あたしも○○君、すき。でも○○君、赤組の★★ちゃんの方がミニモ二のかごちゃんにそっくりでかわいいじゃんか」男の子はしばらく考えてこういいました。「でも★★ちゃんは顔はかわいいけど、○○ちゃんの心の方がかわいいからオレすきだなぁ。」
女の子は少し照れくさそうに身をよじってからなんと、お店の中で頬にチューを!!隣のワタクシ、びっくりどっきりで。
お母さん方もおどろいて「あんたたち人前で何してんの〜!」と怒っておりましたが笑顔でございました。なんとも微笑ましい光景を拝見できて、よかったです。犬映画をみた後のせいか余計にテンション高くなっちまいました。でも、よくよく考えてみると男の子が言った「顔は★★ちゃんの方が可愛いけど、○○ちゃんは心がかわいいからすきだなぁ」って台詞は誉めているのかけなしているのかわからない台詞ですよね。そこが子供らしくて面白い。でも、きっと男の子は○○ちゃんの事が好きって気持ちは本当だと思いまする。『容姿が全てじゃない』なんてきれい事だと言われそうですが、でも、小さい子達の会話を聞いていて、邪心にまみれたワタクシは何だか救われたような、ホッとした気持ちになりました。