わー♪気持ちよさそう。ねぇ汗かいたし、はいっていっていいでしょ?」
おなご衆は汗を流したいと男衆に番をさせ、
いそいそと服を脱いで温泉に浸かった。
・・・当然。この男は要注意人物。
「失敬な。私が覗くとでもいうのか」
「覗かないという保障はないじゃろ。お前には」
弥勒の頭の上で覗き防止策の七宝が監視。
「けっ。女どもはめんどくせー。汗なんて水浴びすりゃいーじゃねぇか」
おなごは綺麗好きなのです。犬夜叉、お前も綺麗にしていないとかごめ様に嫌われますよ」
「・・・てめぇにいわれたかねぇ」
男衆の虚しい会話のよそにおなご達の声が聞こえてくる。
「はー。きもちいー♪久しぶりだねこんな風にゆっくりするのは・・・」
「そうだね」
戦いで負った傷跡も温泉で大分癒され、気持ちも晴れる・・・。
「ねぇかごめちゃん・・・」
「なあに?」
「・・・昨日。犬夜叉さ・・・。会いにいってたんでしょ?」
「・・・」
珊瑚は聞かないほうがいいと思いつつどうしても、気になって昨夜、犬夜叉が桔梗に会いに行ってしまったことを たずねてしまった。
「・・・。あ、ご、ごめん・・・」
「ううん・・・。別にいいよ」
「・・・かごめちゃん。どうしてそう平気なの?私だったら耐えられない・・・」
「・・・。どうして・・・。だろうね・・・。慣れっこになっちゃったのかなえへへ・・・」 そう笑うかごめが切なくて珊瑚はたまらない。
「”行っちゃう奴”を・・・。好きになっちゃったんだから仕方ないのよ・・・」
「かごめちゃん・・・」
自分は諮らずとも弥勒と気持ちの確認をしあった。
それだけでどれだけ心強いか。
先の事は分からなくとも相手が自分を想ってくれている・・・。その事実だけでも
不思議な力が沸いてくる。
・・・それが恋。
「かごめちゃん・・・。かごめちゃんは・・・。この先・・・。どうするか決める時がきたらどうする・・・?」
「・・・」
なんて質問をしてしまったんだろう。珊瑚は一瞬にして自分を責めた。
「・・・。どうすんだろうね・・・。決める勇気あるかな・・・」
ジャブンッ・・・。
濡れたお湯で涙を隠すかごめ・・・。
ささっと涙を拭って
「あー。気持ちいーなー・・・!」
両手を伸ばした・・・。
湯気で切ない顔を隠して・・・。
おなご衆の会話は全部犬夜叉達に聞こえていて・・・。
無言で湯の番をしていた・・・。
かごめも珊瑚も温泉で体が温まってぐっすり・・・。
「・・・」
犬夜叉一人、目を開ける。
寝袋で体を九の字にして眠るかごめをじっと見つめる・・・。
”この先の事を決める・・・ときがきたらどする?”
”・・・どうするんだろうね・・・。決める勇気あるかな・・・”
かごめの言葉・・・。
胸を締め付けられる・・・。
自分が言わせている切ない台詞・・・。
”決める勇気”
何を決める?
何を・・・。
考えたくない。でもかごめに考えさせているのは自分だ。
「う・・・ん・・・」
寝袋からひょこっとかごめの右手が飛び出した。
「ったく・・・」 犬夜叉はそっとかごめの右手を握って寝袋にそっと入れようとした。
「・・・」
あったかい手・・・。
この手をはなせられるのか?
この手温もりを・・・。
(嫌だ・・・)
わがままな感情。身勝手な理屈。
わかっていも、離せないその手。
”決断する勇気あるかな・・・”
「そんな勇気・・・。いらねぇよ・・・」
犬夜叉はずっとかごめの右手をぎゅっとぎゅっと握り締めて離さなかった・・・。
(かごめ・・・)
寝顔を愛しそうに見つめながら・・・。