〜震える唇〜
楓の小屋には犬夜叉とかごめの二人きり。 犬夜叉の怪我の手当てをするかごめ。 ハンカチで横たわる犬夜叉の血が出ている唇をそっとぬぐう。 「痛い・・・?」 「・・・ッ」 唇だけではなく、口の中も切れているから 話ずらいらしい。 それに、汗をかいていて熱もある。 (喉・・・かわいてるよね・・・。お水あげよう) ペットボトルの水をそっと犬夜叉の口元にもっていくが 切れた唇がしみて痛がる犬夜叉。 「あ・・・。ごめん。凍みたんだね・・・。どうしよう・・・」 犬夜叉は見るからに水を欲しがっている。 (・・・) かごめはしばらく考え込んだ・・・。 (しょうがないもの・・・。恥ずかしがってる場合じゃない・・・) かごめは少し頬を赤らめて、ペットボトルの水を口に含んだ。 そして四つん這いになって犬夜叉にゆっくりと顔を近づける・・・。 ゆっくり・・・。 ゆっくり・・・。 「・・・ん・・・ッ」 触れ合った唇。 あまりの柔らかさに唇の痛みも忘れる・・・。 柔らかさと同時にかごめの唇から 冷たい水分が注ぎ込まれて・・・。 一滴もこぼれないよう空気が漏れないほどに塞う・・・。 「く・・・ッふ・・・ッ。ご・・・ッ」 ゴクッ・・・。 犬夜叉の喉仏が動く・・・。 かごめはゆっくりと離れた。 かごめの口元は犬夜叉の唇の血が少しついていた。 「・・・。犬夜叉・・・。まだ・・・しみた・・・?」 「・・・」 凍みるはずもない。 かごめの唇の温もりで痛みも消えていった。 「ごめんね。やっぱり傷がなおってから・・・」 くいっとかごめの制服の裾をひっぱる犬夜叉。 そして小さな声で呟いた・・・。 「もう一口・・・欲しい・・・」 熱を出した子供のように・・・甘えた声で・・・。 「・・・。もう・・・仕方ないんだから・・・」 かごめは再び口に水を含む・・・。 そして犬夜叉に注ぐ・・・ 震える唇で・・・。 ぬくもりと共に・・・。