森を抜ける途中、山犬たちに襲われた犬一行。 二手に弥勒と珊瑚、かごめと犬夜叉の二手に分かれた。 数が多かっただけに雑魚妖怪だったが少し手間取った。 森を抜けて、小川が見えてきた。 川原で一休みすることにした犬一行。 早速かごめは犬夜叉の怪我の手当てをする。 しかし、あるものが怖い犬夜叉はずっと向こうの岩場まで逃亡。 「覚悟しなさい!犬夜叉、おすわり!」 いとも簡単に逮捕された犬夜叉。 かごめに背中を見せる犬夜叉。 脱脂綿に消毒を凍みらせるかごめ。 しかし犬夜叉は何だか嫌な顔だ。 「ほら。じっとしてよ!」 「うるせー。おれ、その”しょうどく”って奴が嫌いだ!」 「何子供みたいなこといってるの!ほら、とにかくじっとして」 「傷なんかじきになおる!」 「そんなわけないでしょー!いいからじっとしてってば!おすわり!」 結局、いつもどおりの暴れ犬をかごめの一声で沈静。 「フン・・・ッ」 やっとおとなしくなった犬夜叉。再び、長い髪を前に流しかごめに背中を預けた。 「傷口からばい菌はいったら大変なんだからもう・・・」 かごめは傷口を消毒液でなぞる。 「いって・・・!」 「ごめん・・・。待ってね。今すぐシップ貼るから・・・」 「・・・」 痛がる犬夜叉だが、かごめの自分を労わるような優しい声に 痛みもどこかへとんでいく感じがした。 背中の傷は肩から腰にかけて斜めに二本深い切り傷。 これは、山犬から自分をかばったときできた傷。 それに、治りかけの小さな傷もある。 これは、あの時、あの傷はこの時・・・。 かごめは手当てをしながら、 傷一つ一つの記憶を思い出す・・・。 「ん・・・?何だよ。人の背中じろじろと・・・」 「え・・・?うん・・・。犬夜叉の背中の傷・・・沢山あるなって・・・。ほら・・・。この右肩のやけどみたいなのは この前の奈落と戦ったときの傷で・・・」 かごめは傷跡をそっと人差し指でなぞる・・・。 あんまりそれが優しい感触で・・・。 犬夜叉はくすぐったい。 「それからこっちの左肩のは・・・七人隊との・・・。たっくさん沢山・・・。闘ってきたんだね・・・」 「・・・だから・・・なんだ・・・」 「なんかね・・・。傷ひとつひとつに・・・”ありがとう”って言いたいナ・・・って・・・」 「ば、馬鹿なこといってんじゃねーよ・・・(照)」 かごめの言葉が妙に色っぽく聞こえ、犬夜叉は緊張・・・。 「あ・・・。血が染みて来てる・・・」 ガーゼが血で染まる。 かごめは貼り付けたガーゼを静かにはがした。 「少しじっとしてて・・・」 犬夜叉はまた”しょーどく”されるのかと思い、覚悟したが・・・。 「・・・!!」 今まで感じたことがない感覚に犬夜叉の耳がビクッと反応。 傷口に綿菓子のようにやわらかい感触を感じる。 (な・・・な・・・なん・・・!?) ”何、してんだ” という台詞がでてこない。 「・・・っぺッ・・・」 かごめの言葉で、傷口のやわらかい感触はかごめの唇だと理解した犬夜叉・・・。 緊張で体が固まってしまうが・・・。 傷口を吸いだされ、体全体をくすぐられているような感覚。 それがあまりにも・・・。 気持ちがいい・・・。 「・・・っぺッ・・・」 「・・・」 犬夜叉の体は一瞬にして火照る。 「・・・あれ・・・?なんか体熱いね?熱でてきた?」 犬夜叉は言葉を発する事もできず、ただぶんぶんを顔を横に振った。 「あ・・・。血が止まったみたい・・・」 かごめは静かに唇を傷口から離す・・・。 甘い夢が一瞬にして覚めた様。 深い物足りなさを犬夜叉は感じる。 「・・・。お・・・お・・・お前な・・・」 「何・・・?」 嫌がおうにもかごめの唇に目がいく。 「・・・。なに?」 ピンク色。 この唇の熱がまだ残ってる・・・。 「・・・。犬夜叉・・・?」 「・・・傷は一箇所じゃねぇだろ・・・」 「え・・・?」 まるで子犬がおねだりするような 何かが恋しくてたまらい瞳で。 "もっと欲しいよ・・・" 「でも・・・。傷全部にキスしてたら・・・。日が暮れちゃう・・・」 少し体をくねらせて恥ずかしそうに言うかごめ。 「・・・。じゃあ・・・。今度はお前だ」 「え・・・?」 選手交代・・・。 触れられるより、触れたい。 腕をつかまれ、つっぽりと犬夜叉の胸におさまったかごめ。 「・・・。選手交代・・・?犬夜叉・・・」 「ああ・・・。でもオレの場合・・・」 ふわふわのカールした髪をどかし、白い首筋をあらわにさせる犬夜叉・・・。 「全身に口付けしても・・・全然足りねぇけどな・・・」 洞窟に映っている二つの影が一つになる。 それが夢のはじまり。 愛しい愛しい匂い。 匂いだけじゃない、 髪も唇も肩も足も手の先も全部・・・。 小さな洞窟で紡がれる一瞬の熱くそして甘い夢。 闘いで傷ついた心も体も 互いに癒しあって・・・。 あふれ出す想いともに・・・。 そして揺ぎ無い絆に変える・・・。 きっと・・・。