心臓がドクンと恐怖を感じる瞬間。
それは、お前の血の臭いがした時。
お前が傷つけられたと知ったとき。
お前の命が危ない時。
全身が震え、言いようのない不安と恐怖感だけが駆けめぐる。
「いたッ・・・」
川原で花を摘んでいたかごめ。白い花びらに少量の血が落ちた。
「手のひら切っちゃった・・・。薬塗らなきゃ・・・」
「かごめ!どーしたッ?!」
犬夜叉、どこからともなく飛んでくる。
「犬夜叉。あんたこそ、どーしたの急に走ってきて」
「なんでっておめぇの血の匂いがして・・・って、血、でてんぞ!」
「ああ、これね、葉っぱで切っちゃって・・・。やだ・・・血、とまんないわ・・・」
「だ、大丈夫なのか・・・?」
心配そうにかごめを見つめる。
「大丈夫よ。薬草を塗れば・・・」
赤い、赤い血。
ポタリ・・・。
かごめの手のひらからひとすじ流れ、白い花びらを赤く染める。
痛てぇ・・・。
痛てぇよ・・・。
お前の血を見るだけで、全身が震える・・・。
犬夜叉はかごめの手をそっとつかんだ。
「細くって小せぇ手だな・・・。折れちまいそうじゃねぇか・・・」
「わ、悪かったわね・・・。ね、血、ついちゃうよ・・・」
「かまわねぇよ・・・お前の血だ・・・。こんなもん・・・俺が止めてやる」
「え・・・犬夜叉・・・?」
傷口に、犬夜叉の熱い唇が静かに触れた・・・。
「ッ・・・」
「少しの間・・・我慢しろよ・・・」
「う・・・うん・・・」
いたくてしみる・・・。だけど・・・。何だか・・・とても熱くて・・・熱くて・・・。
何だか・・・体まで火照ってきちゃうよ・・・。
犬夜叉・・・。
ドクンドクン・・・。
はやる鼓動と一緒に傷口から血が溢れそう・・・。
愛しいお前。
一滴でもその体から流れたら、まるで・・・
まるで・・・お前の命も流れ出している気がしてたまらねぇ・・・。
命が削られてるみてぇだ・・・。
「犬夜叉・・・。もう・・・大分止まったから・・・」
「・・・」
「ねぇ・・・犬夜叉・・・」
「まだだ・・・。一滴も出てこなくなるまで・・・。俺はこうしてる・・・。嫌か・・・?」
「ううん・・・。全然やじゃないよ・・・。ありがとう・・・犬夜叉・・・」
愛しいかごめ。
愛しいお前が傷つく事は絶対にさせねぇ・・・。たとえ、この身が傷つけられようとも・・・。