犬夜叉の・・・体が、やみの、そらから、
落ちた。
こわくて
こわくて
ずっと
こわくて。
いつか、犬夜叉の命が、
あたしのために、命、消えちゃうじゃないかって
こわくて
こわくて
かごめは犬夜叉に近づく。
冷たい地面に、物言わぬ犬夜叉の体が、ただ、横たわっていた・・・、
嘘・・・。
嘘・・・。
犬夜叉が動かない。
犬夜叉の瞳が開かない。
犬夜叉の体から、血が止まらない。
真っ赤な血。
あたしをかばって受けた傷。
血はまだ、なまあたかいのに、犬夜叉は起きない。
目を覚まさない。
動いてよ、目、覚ましてよ。犬夜叉・・・。
お願い・・・。
犬夜叉・・・。
あたしの命・・・魂・・・わけてもいいから・・・
起きて、笑って・・・
お願い・・・
犬夜叉・・・。
私の命、わけてもいいから・・・
かごめは犬夜叉の体をまたぎ、
口に含んだきた小川の水を、
かごめ唇から、犬夜叉の唇へ・・・
注がれた・・・
ゴクリ・・・。
喉仏が上下に動く。
「んッ・・・」
犬夜叉は目を覚まし、
一気に、柔らかな唇の感触と流れ込む水の冷たさが、香しい優しい清らかな匂いとともに犬夜叉の体中を駆けめぐった。
そして目の前に見えるのは、・・・清らかな瞳から流れ出る涙の一滴。
(か・・・ごめ・・・か・・・?)
この愛しい女のためなら、命をなげうってもいいと思った。
お前さえ、生きていてくればいい・・・。
けれど、確かにきこえた自分を呼ぶ声。
愛しい声。
かごめ・・・。
その塞がれた唇と唇はお互いを引き寄せ会うように離れようとはしない。
かごめが目を開ける。
いつもみつめていたオレンジ色の瞳がはっきりと見えた。
「犬・・・夜叉・・・」
「かごめ・・・」
犬夜叉の声。犬夜叉の瞳。
「・・・」
「すまねぇ・・・。俺・・・」
犬夜叉が生きてる!!
「犬夜叉っ!」
かごめはそのまま犬夜叉を全身で抱きしめた。
「もう・・・!!死んじゃったかと・・・思ったじゃない・・・!!」
「・・・。ごめん・・・。心配・・・かけちまって・・・」
「そうよッ・・・。あたしのために無茶なんかして・・・っ!あたしは・・・っ!」
「・・・。ごめん・・・。ホントは俺・・・死にたくなかった・・・なさけねぇけど・・・もう一度お前に会いたかったから・・・」
サラ・・・。犬夜叉はかごめの髪を少しすくった。
「会えたね・・・」
「おう・・・」
愛しいものが生きている。
それが全て。
それが・・・。
「俺・・・。お前から、命・・・もらったな・・・」
「・・・。うん」
「今度は・・・。俺が・・・」
犬夜叉は静かに下にかごめを見つめられる体勢に変えた。
「俺の・・・」
草の上で、二人の指と指が交差する。絡まる。
そして近づく瞳と瞳。
「俺の・・・全てをくれやる・・・」
ガサッ
草が動の音。
そして・・・再び、唇が塞がれた。強く、激しく、そして・・・離れぬように・・・。