星がきれいな夜。かごめが犬夜叉にあることをたのむ。
「七夕ー?なんだそりゃ」
「あのね、あたしの国でね、夏にやるお祭りみたいなものよ。だから、お願い。とってきて」
かごめは、そう言って、犬夜叉に笹の葉をとってきてくれと頼み、犬夜叉は竹林から一本大きな笹の木を担いでもってきた。
「これでいーのか?」
「うん♪ちょうどいい大きさ。ありがと。犬夜叉」
早速かごめは、弥勒や七宝、珊瑚達にも折り紙や短冊を渡す。
「あのね。この短冊に願い事を書くの。そしてそれをこの笹の葉に紐でしばってつるす。これが七夕っていうの」
「ほほう・・・。それがかごめ様の国の風習なのですね。実に情緒があってすてきですな・・・」
「これに願い事をね・・・。なんかいいね。うん」
「オラも書くぞー!!字も覚えたしなー★」
こうして、各自、みなそれぞれ、短冊に願い事を書き始めた。
が、この男一人、つまらなそうな顔して楓の小屋の屋根の上でふて寝している。
「なんじゃ。犬夜叉の奴。なにをそんなにすねておるんじゃ」
「そりゃそうでしょう。犬夜叉は字が書けないんですからね」
弥勒は犬夜叉に聞こえるようにこれみよがしに言った。
「うるせーー!!弥勒てめぇ!!」
「おーい。犬夜叉。なんならオラが代わりにお前の願い事かいてやってもよいぞー。ほれ、言ってみろ」
「けっ!!ふざけんじゃねぇ!七宝!大体俺はそんなガキっぽいもん、つくりたかねぇ!!ふん!」
犬夜叉、すっかり拗ね犬に・・・。
見かねたかごめが犬夜叉に言った。
「ねー。犬夜叉ー。願い事はいいから、飾り作るの、手伝ってよ」
「うるせー!!めんどくさいことしねぇつってんだろ!」
ムッとしたかごめ。そしてやっぱり・・・。
「おすわり!!」
「ぐえッ!」
犬夜叉、かごめを怒らせ、屋根から落下した・・・。
「犬夜叉なんかほっといて、みんなで願い事かきましょ!」
すっかりかごめもご機嫌斜めに。
そしてかごめ達は、それぞれの願いを書き、また、他の飾りなども作った・・・。
「キャー。綺麗だね〜!」
バサッ・・・。
2メートル程の笹を御神木に紐でしばって固定する。
サラサラと静かに風に揺られて・・・。
「趣があって実に夏らしい・・・。」
「そうね。でも、それはそうと、みんな、どんな願い事かいたの?」
かごめの言葉に七宝は、自分の短冊をくいっと引っぱって、見せた。
「ほら、オラはな・・・」
『いぬやしゃがもっとおとなになりますように』
と、黒のクレヨンで書いてある。
「どうじゃ?いい願い事じゃろ?」
「うん。そうね」
「そうですな。見事な願い事だ」
「うん、七宝、偉い!」
かごめ、弥勒、珊瑚。皆、とってもとっても納得。
しかし、やっぱり犬夜叉は黙っちゃいない。
「誰がいい願い事だ!!七宝!」
ゴイン!!
「うわ〜ん・・・」
犬夜叉、七宝に一発くらわす。
「犬夜叉。お前のそういう所が子供だと言っているのです」
「けっ・・・。そーゆーおめーはどんな事かいたんでい。弥勒」
「ふっ・・・。私ですか・・・?それは決まっているでしょう・・・。私の子を産んでくださるおなごがあらわれますように・・・。ってあれ?皆さん、何その呆れた顔は・・・」
“言わなくてもわかってるぞ”
犬夜叉達はそう思った。
「じゃあ、珊瑚。お前は一体、何を書いたのです?」
「え・・・?あたし・・・。あたしは・・・」
珊瑚はもじもじっとちょっと照れた。
「あ、これ、珊瑚ちゃんね。えーと何々・・・」
『もっと強くなって奈落を倒せますように・・・。そして、琥珀を取り戻せますように・・・』
と書いてあった。
「珊瑚ちゃん・・・」
「願い事って言っても、それしか思いつかなくて・・・。ごめんね。もっと面白いこと書きたかったんだけど・・・」
「ふっ。珊瑚、いいではありませんか。お前の願う事は私の願いでもあるんですから・・・」
そう言ってさりげなく珊瑚の肩に手を置く弥勒。
「法師様・・・」
「珊瑚・・・」
キリリと真面目な顔で言う弥勒だが、その手は珊瑚の背後でもそもそ動き・・・。
「・・・。法師様。格好いい台詞言いながら・・・。セクハラすんなーー!!」
バッチン!
弥勒の頬に綺麗な手跡がつきました★
「ふん!」
「珊瑚、ちょっと待ってください。珊瑚ー・・・」
弥勒と珊瑚は小屋へと戻ってしまった・・・。
「相変わらずじゃのう・・・。まったく同じパターンじゃ。そうじゃ。かごめは一体、何を願ったんじゃ?」
「え?あたし・・・?」
犬夜叉、かごめに注目!
かごめの願い事・・・。かなり、犬夜叉は気になっているご様子。
「あたしはね・・・。な、ないしょ」
「なっ・・・。てめー!隠さなきゃならねぇ願い事なのか!?白状しやがれ!」
「か、かんけーないでしょ!!あんたには!」
「やかましいっ。とにかく白状しやがれ!かごめ!」
「何よ!その言い方は!」
こちらも同じくいつも通りに痴話げんかが始まり、七宝はあきらめたようにつぶやく。
「ふう・・・。全く。どうしてオラの周りの大人達はこうも進歩がないのじゃろ。雲母。オラ達はもっと賢い大人になろうな。さ、もっと短冊に願い事かこう!」
「ミー・・・」
そんな七宝達をよそにかごめ達は『言え!』『言わない!』のケンカはまだ続いております。
「いいから、白状しろ!」
「何でよ!あんたが叶えてくれるとでもいうの!?」
「お、お、おうよ!お前の願いぐらい・・・」
「・・・。わかったわよ・・・。あれをとってきたら教えてあげる」
「へ?」
かごめは空を指さした。一番光っている星を・・・。
「・・・。あれって星のことか!?」
「そうよ!」
「ばっ。んなもんとれるわけねーだろ!!」
「へへーんできないんだー」
「うっ・・・。で、できるわいッ!!」
犬夜叉腕組みをしながら言ったり来たりして、必死に何かを考えた。
「い、今、もってきてやる。待ってろ!」
そう言うと犬夜叉は、楓の小屋に入っていった。
(・・・。犬夜叉、一体何を・・・)
しばらくして、犬夜叉は何かを懐にいれて戻ってきた。
「乗れ」
「え?」
「いーから乗れ!」
自分の背中を差し出す犬夜叉。
かごめは訳が分からず、とりあえず犬夜叉の背中に乗る。
そして、犬夜叉は何を思ったか御神木の枝にジャンプした。
そして二人は御神木の枝に並んで座る。
「・・・。ほれ・・・。みろよ」
犬夜叉が見ろといった方向には・・・。
「わあっ・・・」
なんと山の上に天の川が見えていた。
「・・・。ここは眺めがいいんでい」
「うん。そうだね。とってもきれい・・・」
かごめは天の川に見とれていると、犬夜叉は何やらごそごそと懐から取り出す。
「かごめ、手ぇだせ」
「え?」
取り出した袋から出し、かごめの手にポロポロッと落ちたのは、ピンクや青のこんぺいとう。
かごめが七宝にもってきたお菓子だった。
「犬夜叉・・・。これ・・・」
「それ・・・。『星』の菓子なんだろ・・・」
七宝が、『かごめに星のお菓子をもらった。うまいぞ。犬夜叉』と言っていたの思い出したのだ・・・。
「こっからみえる眺めと・・・。その菓子で我慢しやがれ。お、俺はこのくらいのことしか・・・」
ちょっと照れくさそうな犬夜叉。
かごめは何だか損な犬夜叉が可愛らしくて思わず笑ってしまった。
「な、何が可笑しい!!」
「ふふふ・・・。ごめんごめん・・・」
「でも嬉しい・・・。ありがとう。犬夜叉・・・。あのね。犬夜叉。本当はあたしの願いはね・・・。今、こうして犬夜叉と星をみていることよ」
「どういう意味だ」
「こういこと・・・」
かごめはそっと犬夜叉と腕を組み、顔を肩・・・。に寄せた・・・。
犬夜叉の鼻にかごめの髪がふわっとかかる。
「わかった・・・?」
「・・・。お、おう・・・」
かごめの願い。それはただ一つ。
大切な人が、生きていてくれること。それだけ。
こうして同じ星を見られることが本当に嬉しい。
大切な人が『生きている』と感じられるから・・・。
「ねぇ」
「何だよ」
「犬夜叉の願いは・・・?」
「・・・。教えねぇ」
「・・・。ケチ・・・」
犬夜叉の願い・・・。それはただ一つ・・・。
「こういうことだよ。俺の願いは・・・」
「え?」
長い爪の指がかごめの指の間に交差して絡ませられた・・・。
「わ、わかったか・・・」
「う、うん・・・」
犬夜叉の願い・・・。それは
かごめと同じ。
大切な人が生きていてくれること。
こうして同じ星を見て、そして一番大好きなぬくもりを感じられることが本当に嬉しい・・・。
このぬくもりが消えないように、無くならないように守りたいと・・・。
切に、切に想い、心に誓う・・・。
願う・・・。星に・・・。
恋しい魂と永遠に共に生きていきたいと・・・。
願う・・・。
いつまでも・・・。いつまでも・・・。