波に消えた伝言


ザザン・・・ 静かな波。 白い砂の上にひとり、かごめは足を組んで ぼんやり海を眺めている。 そして待っている。 一人、また置いていかれたけれど 犬夜叉を・・・ 待つことにも慣れてきてしまった自分を感じる。 慣れすぎて嫉妬さえ沸いて来ない。 言葉にならない疲れだけは体の全体で感じながら・・・ ザザン・・・ (・・・) 何もしないでいると 余計な思考の波が押し寄せる。 また犬夜叉は自分の知らない顔を あの女性に向けているのだろうか 自分には決して投げかけない言葉をその口から発するのか ・・・熱い抱擁を交わしているのだろうか・・・ 「・・・嗚呼、もう・・・っ」 かごめは前髪をグシャッと掻き揚げ、こみ上げる苛つきを飛ばす。 (・・・そうだ・・・) かごめは素足になり、制服の袖をまくって、砂山を作り始めた。 何かに集中し居ていないと 負けてしまう 耐えられ得ない 置いていかれたという静けさに・・・ 「・・・よいしょ・・・」 砂を集めて山を作る 一心に作る (・・・いくつ・・・できるかな・・・) いくつ出来た頃に 犬夜叉は帰って来るだろうか・・・ ひとつでも少ないほうがいい ひとつでも多くならないで欲しい そう 頭の片隅で思いながら・・・ かごめは砂山をつくる 一つ、 二つ 三つ・・・ どんどんできていく 十 二十 三十・・・ どんどん砂山が連なる・・・ (・・・お願い・・・。早く帰ってきてよ・・・) 辺りが暗くなってきた 海の風も冷たい 孤独感が かごめを支配して・・・ (・・・何処で何してるの・・・?どうしてるの・・・?) したくない想像が浮き沈み かごめの寂しさの分だけ・・・ 砂山が増えていく・・・ (・・・早く・・・。100できる前に・・・戻ってきて・・・) 100がタイムリミット そう思いながら かごめはひたすらつくる・・・ だが・・・ 「・・・」 100個目の砂山が・・・ 出来上がってしまった・・・ 「・・・」 かごめは一列につくられた砂山をぼんやり俯いて 眺める・・・ 作った分だけ 寂しさの数 ザブンッ 「・・・!」 大きな波が突然押し寄せ 一片に 砂山は崩れ去った・・・ 「・・・」 かごめの寂しさの塊も一緒に 飛び散ったみたいだ・・・ (・・・時間切れ・・・か・・・な・・・) 白い波に一滴・・・ 雫が落ち・・・ その場にしゃがみこむかごめ・・・ 海風が かごめの瞳と素足に凍みた・・・ 朝方。 「ハァハァ・・・」 息を切らせた犬夜叉の姿が砂浜にあった。 キョロキョロして辺りを見回しかごめを探す犬夜叉。 (・・・。かごめ・・・何処いった・・・) ”ちょっと・・・。行って来る” 一言だけ残し、かごめをここに置いていってしまった。 後悔と後ろめたさが犬夜叉の胸で渦巻く。 (・・・まさか・・・。アイツ一人で帰ったんじゃ・・・。いや 弥勒たちは漁師たちの村に泊まるっていってたから・・・) 犬夜叉が漁村に向かおうとしたとき。 (ん・・・?) 波打ち際に描かれたなにか文字らしいものに気づく。 (・・・なんだ・・・。これ。かごめが書いたのか・・・?) まじまじ見るが一向に意味が分からない。 (こんなもんより今はかごめだ) 犬夜叉はその文字を踏み倒して砂浜を跡にする・・・ かごめが砂山をつくった場所も踏んづけて・・・ 漁師小屋でかごめたちは焚き火をして宿を をとっていた かごめは寝袋ですでに眠っていた・・・ (・・・すまねぇ・・・) 犬夜叉は申し訳なさそうにかごめの寝顔を覗き込む (・・・かごめ・・・) 眠っているのかそれとも怒って起きないのか・・・ 「・・・」 犬夜叉も腰を降ろし目を閉じて 休みをとる・・・ (・・・すまねぇかごめ・・・) だが犬夜叉は知らない 自分の足が揉み消したあの文字 かごめが書いたということも 文字の意味も・・・ 『サヨナラ バイバイ』 犬夜叉は知らない 自らの足が踏み倒して走った波打ち際に 幾多の砂山がつくられたことを そこには かごめの寂しさが混じっていることを・・・ 犬夜叉は知らない 自分の居場所を 自分で壊しているということを・・・
fin

・・・かごちゃんおうち(現代)に帰ってきなしゃい。もういいから(涙) ・・・すいません。ちょっと正直、犬くんにフラストレーションたまりまくってます。 つーかかごちゃんがあんまりにも原作でも目立たないんで!! 犬と桔梗の濡れ場(怪しい場面では在りません)の影でかごちゃんが!!! ・・・恋愛面で目立てないのならせめて、他の場面でかごちゃんにライトが当たらないでしょうか!??(切実) かごちゃんは『隠し玉』ですよね!??留美子先生(懇願) 『犬をひたすら健気に支える』だけで終わるなんてーーー!! そんな男に都合がいい女みたいな立場だけなんて!! ・・・かごちゃんの笑顔が消えているのは・・・誰のせいでしょうか・・・。 誰のせいでもないけれど・・・。 かごちゃんから笑顔が消えることほど寂しいことはないから。 男の正念場だぞ。犬ーーー!! と、うちのぬいぐるみに吠えておきました。効果あるかしら・・・(遠い目)

犬夜叉庵TOP