震える子犬と泣きまね少女

「えっと・・・七宝ちゃんから頼まれたキャンディと・・・」 リュックの中身。お菓子とかでリュックが満杯。 七宝ちゃんや弥勒さまがこっちの食材の味を覚えちゃって 持ってくものが増えちゃって困る。 でも持っていくと喜んでくれるからつい、色々買いすぎちゃうのよね。 「あ、そうだ」 肝心なもの、忘れてた。 「えーっと・・・」 絆創膏に、包帯。それから消毒液・・・ 「えーい面倒だ。箱ごといれちゃお」 救急箱をそのまんま持ってく。何せ、怪我人が多くて。 ・・・というか無茶をする人間が一人。 「アイツの肩の傷・・・。もう治ったかな・・・」 ”うっせぇえな!オレは頑丈なんだよ。人間の体と違ってな!” 心配してるのに、文句ばっかり。 (なんか・・・。早めに帰るのやめたくなってきた) 溜まってる宿題も、試験勉強もそっちのけでいるのに・・・。 時計は夜の9時。 (・・・今日はこっちで泊まって行こ。怪我の手当てなんて自分ですればいいんだわ!) 犬夜叉の怒った顔を思い出したらなんか腹がたってきちゃった。 「・・・試験勉強しちゃおう」 重たいリュックの中から教科書出して 机に向かう。 (戦国での生活と試験勉強の両立って大変なんだから・・・!) 苛苛任せに勉強をはじめたんだけど・・・ ボキ・・・ッ。 「あ・・・」 シャープペンの芯、 これで5本目を折っちゃって・・・。 ”けっ。何か理由つけて実家に帰りやがって・・・。自分勝手なのは どっちだ!” 犬夜叉のしかめっ面ばっかり浮んで 教科書の文字なんか入らない。 「ふぅー・・・。駄目だ。お風呂に入って寝ちゃおう」 あくびして後ろを振り返ったら・・・ 「風呂はいって寝るだぁ?ふざけんじゃねぇ」 「・・・犬夜叉・・・!いつのまに・・・」 しかめっ面の赤い着物のわがまま男が私のベットを占領してた。 ・・・どうして犬夜叉ってすぐ私のベットに座り込むんだろ。 「てめぇ、日が暮れるまでに帰って来るっていてやがったのに。何してんだ」 「・・・うるっさいわねぇ!!私が何してようと勝手でしょ!ふんだ!!」 「うっ・・・」 あ・・・。ちょっと今のはちょっと強く言い過ぎちゃったかな。 犬夜叉、ひいてる。 でも犬夜叉だって私に結構キツイこと言ってるからおあいこよね。 「て、てめぇ・・・。お、オレの怪我の手当ての続きするって 言ってたじゃねぇか。自分で言っておきながら・・・」 「手当てくらい、自分でしなさいよ。それとも何?私はいつから あんたの怪我の手当て係になったわけ?いつ誰が決めたのよ?何時何分??」 「な・・・。そ、そんな細かいこと・・・」 犬夜叉ったら恐る恐る上目遣い。 ・・・叱られた子犬みたい。 なんか可愛いかも・・・。 ・・・もうちょっとキツイこと言ったらどうなるかな。 ・・・泣いちゃったらどんな反応するかな。うふふ。 「あんたが・・・”人間のお前とは違う”って・・・。私すっごく 哀しかったんだから。寂しかったんだから・・・。犬夜叉がそんな風に思ってるのかって・・・」 両手で顔を隠して泣てるフリ。 演技過剰ぐらいが丁度いいのよね。 「な、な、何も泣くこと・・・。ねぇだろ・・・。お、オレは別にそのあの・・・」 ふふふ。犬夜叉ってばおろおろしてる。困ってる。 可愛い。もっと困った顔、見たいな。 「犬夜叉は私のこと、本当は嫌いなんだわ・・・!やっぱりただの”玉発見器”としか 思ってないのよ。ううう・・・」 私ってば演技しすぎ? ベットに顔を伏せて泣いたフリ。 悲劇のヒロインじゃないけどなんか悪ノリしてきちゃった。 「そ、そ、そんなわけねぇだろ、と、とにかく泣き止め・・・。お、オレが 謝るから・・・」 犬夜叉ってば困ってる困ってる。額に汗なんかかいちゃって・・・。 うふふ。 「犬夜叉は私の事が嫌いなんだわ。うわああん・・・」 大声を上げて泣きまね。 どうせなら最後まで演技しなくっちゃ。 「・・・い、い、いい加減にしろ・・・っ。誰がお前のこと、嫌いなんて 言ったよ!???」 「・・・」 「か、かごめ・・・?」 どうせなら・・・犬夜叉の口からもっとはっきりした言葉、聞きたい。 「ほんとね・・・?今の言葉」 「・・・う、う、嘘ついてどうすんだよ・・・。だ、だから、もう泣くな・・・」 犬夜叉ってば私の顔をそっと覗き込んでる・・・ ・・・仕方ない。もう許してあげよっかな。 「・・・わかった。じゃあもう泣かない」 「よ、よし・・・。じゃ、じゃあもう顔あげろ・・・」 かなーり、ほっとした顔してる。犬夜叉。 ・・・なんかもっと突っ込んで犬夜叉の気持ち、探りたかったな。 でもやっぱり犬夜叉困らせるのもかわいそうだから、私はぱっと両手を顔から離した。 「あ!?て、てめぇえ・・・。涙なんか・・・。さては泣きまねしやがったな!??」 「へへーん。あんたってホント単純。犬夜叉の困った顔、いっぱい見られて楽しかったなぁv」 「ばっ・・・。大の男をてめぇは・・・!!」 犬夜叉、怒りながら照れてる、照れてる・・・。 ふふ。想像したとおりの反応するんだから。 「お、オレは怒ったぞ!せっかく迎えにきて・・・。痛・・・ッ!」 「犬夜叉!?」 右肩を抑えて、痛そうにして・・・ やっぱり右肩の傷、塞がってなかったのね。 「犬夜叉!着物脱いで!」 「う、うっせぇ!お前、手当てすんの、嫌なんだろ!?」 「馬鹿!そんなわけないでしょ!!私以外誰がするっていうの!!とにかく 着物脱いで!」 犬夜叉の着物を脱がせると・・・ 包帯に血が滲んでて・・・。 「もう・・・。昨日、強がって手当てさせてくれないから・・・」 「・・・ふん・・・」 犬夜叉の傷だらけの背中見てたら・・・。 何だか・・・ 悪いことしちゃったかなって気がしてきた・・・。 泣きまねなんかしちゃって・・・。 「犬夜叉。ごめんね」 「何が・・・」 「・・・。色々・・・。ごめん・・・」 「・・・お前が謝ることなんて・・・。何にもねぇだろ・・・」 背中の傷一つ一つ・・・。 犬夜叉が命を削って懸命に戦った証拠。 そして・・・私を守ってくれてる証拠・・・。 なのに私は・・・。 「・・・なんだよ。また泣き真似か・・・?」 「違うわよ・・・。ちょっと目に消毒液入っちゃっただけ・・・」 痛々しい傷の跡見ていたら 自然に涙が出てきちゃった・・・。 ・・・泣き真似じゃあ・・・この涙は出せないよ・・・。 「犬夜叉・・・。包帯、巻けたよ。また痛かったらちゃんと言ってね」 「わかったよ」 「ホントよ?ちゃんといってね・・・?」 「・・・(照)わ、わかったって言ってんだろ」 犬夜叉の背中・・・ こんなに広かったかな・・・。 「・・・!!」 私の手のひらは 犬夜叉の背骨の辺りを撫でて・・・ 「・・・。無茶だけはしないでね・・・?」 「・・・(ドキドキ)」 (な、なんか・・・。かごめの触り方が・・・な、悩ましいような・・・) 「犬夜叉・・・。ごめんね。それから・・・。ありがとう・・・」 犬夜叉の背中の真ん中に・・・口付けると・・・ 「・・・!!」 犬夜叉の肩がビクッと一瞬震えた。 ・・・私のほうがびっくりしちゃった・・・。 「お、お、お前・・・、な、何して・・・(照)」 「・・・嫌だった・・・?」 「べ、別に・・・」 ・・・ふふ。犬夜叉ったら・・・まだ震えてる・・・。 体をすこーし火照らせて・・・。 ここでまた泣き真似したら・・・。犬夜叉どうするかな。 でもやめおくね。 ・・・泣き真似じゃなくて・・・。本当に泣いちゃいそうだから・・・。 犬夜叉、ありがとう・・・。