かごめは手作りのチョコをリュックから取り出して 仲間達に渡していく。 「はい。これ弥勒様」 ブルーのチェックの包装紙。 「はい。珊瑚ちゃん」 ピンクのひしがた模様の包装紙。 「はい。七宝ちゃん」 黄緑の水玉模様の包装紙。 3人それぞれ嬉しそうに包みをあけて、チョコレートを口にした。 「オラは、チョコレート大好きじゃ!」 「うーん・・・甘くておいしいね」 「ですなぁ。女子の肌の味がする」 ポカ! 当然、珊瑚の突込みが弥勒の頬に一発はいる。 「・・・それにしても、かごめ様の国の風習とは面白いものが沢山 あるのですね。女子が自分の想い人に想いを伝えるときにこの菓子を 渡すなんて・・・。なぁ珊瑚」 珊瑚をつんつんと肘突く弥勒。 「・・・。そんなにほしけりゃあとで握り飯あげるよ。この助平法師」 「・・・ハイ・・・」 ちょっとご機嫌斜めの珊瑚嬢。 だがもっとご機嫌斜めなのが真上の枝の上で不貞寝している。赤い衣のヤキモチ男。 (けっ。なにがちょこれえと、だ。) かごめとケンカ中で、まぁ何時もの如く拗ねております。 けれど、やっぱりうらやましいのか、犬夜叉。 珊瑚達のチョコレートをチラリチラリと見下ろして。 「・・・のうかごめ。もう一人、誰かにあげなくていいのか?」 「え?誰に?そんな人、いたっけ?」 (か、かごめの奴・・・!) がさがさッ。 犬夜叉、かごめの言葉にショックで、枝から降りて逃走。 「・・・いいのか?かごめ?オラたちだけで美味しい思いをして」 「いいのよ。すこーしほおっておくほうが犬夜叉とってはいい薬よ」 かごめもつんとして、怒っているようだが・・・ 珊瑚は分かっていた。 (安心しなよ。犬夜叉。ちゃんとかごめちゃん、あんたの分、用意してるから・・・) オンナノコの気持ちは、オンナノコが一番分かる。 そして、すね犬は、一人。御神木の袂で、胡坐をかいて拗ねていた。 (なんでい!甘いもんは嫌いだ!!) でも・・・ ”この菓子は女子が想い人に想いを伝えるときに渡す・・・” 弥勒の言葉を思い出す。 かごめがあの甘い菓子を自分にくれないってことは・・・ (・・・沈) 犬夜叉、一人へこむ。 (ん?) なんだかとっても甘い匂いが懐から・・・ (こ、これは・・・!!) 犬夜叉の懐に赤い包装紙の包みが・・・。 (ちょこれーと、だ!!) いつのまにやらかごめがきっと入れたんだと犬夜叉は直感。 (・・・そうだよな。かごめがオレにくれねぇ訳がねぇ(喜)) ちょっと頬を染めて、安心する犬夜叉君。 よかったねぇ。 カサ・・・。犬夜叉は早速開けてみる。 「・・・ん?」 茶色の形をしているが、何だか色んな形がある。 丸やソフトクリーム型、ハート型もある。 「・・・結構うめぇじゃねぇか」 ぱりぽり、 こりこり。 一気に食べちゃました。 (オレの菓子・・・。かごめがオレのために作った菓子・・・v) 包装紙を見つめて、一人、余韻に浸る犬夜叉。 「イーぬ夜叉!」 「わっ」 犬夜叉はとっさに包装紙とリボンを懐に隠した。 「なーにしてんの?」 「な、何にもしてねぇよ!へッ!」 まだケンカ中。犬夜叉の意地っ張り虫が顔出す。 「あ・・・。あんたチョコ、食べてくれたんだ?」 「は?そんなわけねぇだろ。オレが・・・」 「えー?そうかなー。ふふ、証拠あるじゃない」 (え?) かごめは犬夜叉の口元についていたチョコを指でとって舐めた。 「なっ・・・」 「甘い・・・。うん。お砂糖の加減はやっぱりあってたわね」 「お、”オレの”菓子だ!食おーがどうしよーが勝手だろ!」 「・・・うん。でも・・・アリガト。食べてくれて」 「・・・ふん・・・(照)」 甘い味がまだ口に残る。 けれどかごめが隣に座ったら・・・ どうしてかな もっと甘いやわらかい気持ちになる・・・ 「あのね。犬夜叉」 「何だよ」 「犬夜叉のチョコはね・・・”スペシャル”なんだよ」 「すぺ・・・?」 「”特別”って・・・意味」 「///」 かごめがくっついてくる程・・・ なんだか口の中も心の中も甘く トロっと・・・ くすぐったくなってくる。 (ちょこれえとって・・・。なんか妙な食い物だな・・・) チョコのせいか。 それとも・・・。 (かごめのせいか?) 「かごめ」 「ん?」 「・・・。オレもお前が・・・”すぺしゃる”だからな」 「・・・うん・・・!」 チョコのせいか かごめのせいか・・・ ちょっと照れくさい台詞もいえてしまう。 (やっぱ・・・”すぺしゃるちょこ”ってのは・・・。不思議な食い物だ) 二人とも すぺしゃるチョコの効果で ちょっとだけ素直になれた。 そう。今日はバレンタインデーだから・・・。 犬夜叉庵TOP