雪が降る。 まだ降り始めなのか 雪は小さく綿のように柔らかい。 「くしゅんっ」 かごめの可愛いくしゃみがご神木の下で響く。 (んも〜。犬夜叉ったらここで待ってろって・・・。 いつまで待たせる気?) 10分ほど前、犬夜叉がかごめを置いてどこかへいってしまった。 「ふふ・・・。でもなんか・・・デートの待ち合わせで彼氏まってる カノジョの気分・・・」 デート、なんて犬夜叉が知るはずも無いけど カノジョの気分が味わってみたかった。 (犬夜叉にそういう甲斐性あるわけないけど・・・ね) 彼氏待ってる彼女の気分。 どんな気分なんだろう。 (・・・お洋服決まってるか・・・とかどこ食事に行こうとか・・・考えてるのかな) 一日にスケジュール。 こんな雪の日なら、映画観たあとはカフェであったかい 珈琲でも飲みながら映画の感想言い合ったり・・・? かごめは目を閉じて想像してみる。 犬夜叉と二人・・・。お洒落なカフェで・・・ ”カフェだぁ?そんなんで腹が膨れるか。俺がラーメンが食いたいんだ” (・・・(汗)言いそうね・・・。っていうか絶対言う) 「・・・。ふふ。うふふ・・・。ラーメン屋さんでデートっていうのも 悪くないね。ふふ・・・」 普通の彼氏と彼女のデートじゃなくても。 二人らしいデートならそれでいい。 だけど・・・。デートはできなくても ときめきは感じていたい。 (戦国時代でデート気分・・・はちょっと無理かなぁ・・・) そう・・・例えば・・・。 ちょっと遅刻した彼氏。 寒い中、手を擦ってまつ彼女の後ろから・・・ (そうっとマフラーなんか巻いてくれたり・・・。ってするわけないか) 真っ白な粉雪は かごめの恋心は色んな想像を巡らせる。 「おう。かごめ。何ぼうっとしてやがんだ」 ぬっとなんのリアクションもなくかごめの背後から登場する 犬夜叉・・・。 「・・・(諦)はー・・・」 「なんでい。その妙なため息は」 「なんでもないわよ。それよりあんたこそ人待たせてどこ 行ってたの」 「なんか耳と足の裏が痒かったんで、水浴び」 耳の裏をお座りの体勢で足でかきかきする犬夜叉。 「・・・(汗)」 ときめきどころか・・・。 寒い中待たされた理由が耳の痒みだったなんて。 「はぁー・・・」 今日、一番大きなため息をつくかごめ。 (ま。犬夜叉に乙女心を分かれって方が無理だけど・・・) 寒さが身にしみる。 ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ心がぽっ・・・とするような ときめきがほしい・・・。 「くしゅんっくしゅんっ」 (ホントに寒いわ・・・) 可愛いくしゃみ。 「着てろ・・・」 ふわっ 赤い衣がかごめに羽織らせて・・・。 (・・・。ふふ。ちょっと大きなマフラーね) でも温かい。 いつもこれに自分は守られて・・・ 寒さからも 守ってくれそう・・・ 「・・・なんだよ」 「んー?犬夜叉の匂いっていいなぁって思って」 「なっ///」 かごめがいい匂いだと言ったことはあるが・・・ 自分が言われたことはない。 「あったかくて・・・。優しい匂いよ。うふ」 かごめは衣を鼻までかぶってもそもそ 包まる・・・。 (・・・っ。や、やめろ。何かくすぐってぇ・・・) かごめの仕草が可愛くて・・・。 赤ちゃんがバスタオルにくるまってるみたいに 可愛くて・・・ まともに見られない・・・。 「もっと温まって・・・いいよね?」 かごめはそっと犬夜叉の胸に身を寄せた・・・ 「・・・(喜)」 かごめのぬくもりも 犬夜叉に伝わる・・・。 (いい匂いは・・・。お前の方だろ・・・) 粉雪が舞う。 寒さも増してきたけど・・・。 二人寄り添っていれば 粉雪も花びらに見える・・・。 「雪・・・。綺麗だね・・・」 「ああ・・・」 二人・・・。 寄り添っていれば・・・。 「・・・かごめ・・・。寒いだろ・・・もっと・・・。こっち・・・ こ、こ、来いよ・・・」 どもる犬夜叉。 ちょっと震える手でかごめをぐっと強く引き寄せる。 「ありがと・・・。不器用な犬夜叉が・・・。一番好き」 「///」 粉雪が舞い散る。 寒さが 二人の心を近づけて・・・。 「犬夜叉・・・。あとで・・・耳のかゆいコト・・・ふいてあげる・・・」 (ということは・・・膝枕か・・・///(ワクワク)) 粉雪。 それはきっと 恋する二人を演出する魔法なのかもしれない・・・。