君が寝てる間に 「・・・寝る」 せっかく久しぶりに実家に帰ったのに 犬夜叉ときたらさっさと私のベットを占領して 寝ちゃった。 ・・・んもう。ロマンチックの欠片もない。 って・・・。犬夜叉に期待する方がおかしいのかもしれないけど・・・。 私も寝ようかな。 ・・・またお布団だわ(汗) 私は布団敷く。 ・・・お日様に干して置けばよかった。 少し硬い布団で眠る・・・。 ドン! 「!?」 目をつぶった瞬間、犬夜叉がベットの上からごろん落下・・・。 「お、重たいわよ!」 ・・・私の寝床まで横取りする気!? んもうー・・・。 私を寝かせてもくれない。 疲れてるのはアンタだけじゃないのよ! 「ぐおー・・・」 ・・・。 でも・・・。 なーんか文句も言えなくなっちゃう。 ・・・そんなあどけない寝顔見せられたら・・・。 「仕方ないわね」 私はそっと布団から出て犬夜叉に明け渡す。 ・・・なんで私が・・・。 「ぐおー・・・」 「ったくこののんき男が・・・」 膝の上に頭を乗せる。 ・・・今日は特別なんだから。 膝枕なんて・・・。 (・・・) 乱暴で短気で。勝手で鈍感で・・・。 ・・・おまけに二股ときたもんだ(汗) そんな犬夜叉を好きになっちゃった私が一番・・・ 弱いのかもしれないけど・・・。 ねぇ。甘い台詞が欲しいなんていわない。 せめて・・・。 寝言で私の名を呼んでくれないかな・・・ そくらいの期待も駄目なのかな・・・ (”かごめ・・・”って呼んでみてよ・・・) 「・・・桔梗・・・」 (・・・!) ドスン!! 「いでぇええ!!」 腹立ったから 犬夜叉の頭を思い切り畳に落としてやった。 「ん・・・。なんでい・・・一体・・・」 「ふん!!」 目覚めた犬夜叉を余所に 奪われたベットを奪還してやった。 ・・・ふん。勝手に夢の続きでも見てるといいんだわ!! 「か、かごめ・・・?」 「うるさいな・・・!早く寝やがれ!!! (・・・怯) 犬夜叉は部屋の隅っこで縮まって眠った・・・。 朝。 「・・・おう。かごめ」 「立ち入り禁止って言ってんでしょ」 ドアの向こうのかごめの声がかごめの怒り具合を示している。 (くそ・・・) さっき、草太から、昨晩、寝言で「桔梗」と呼んでしまった 事実を聞かされた犬夜叉。 流石に言い訳もできないが・・・。 「ね、寝言ぐらいで怒ってんじゃねぇよ」 ボン!! (!!) ドアに枕が投げつけられて、反対側でびびる犬夜叉。 「・・・邪魔だから先帰ってれば・・・?」 (じゃ邪魔・・・) 冷たいかごめの声に 犬夜叉・・・。開き直るも、脱力。 (な、なんで俺がこんなにビクビクしなけりゃいけねぇんだ。 お、俺が一方的に悪いって訳じゃねぇだろ・・・) 「く、くおおら・・・(ビクビク)。かごめ!いつまで怒ってやが・・・」 「スー・・・」 机の上に頬をつけ・・・ 眠っているかごめ・・・。 (な、なんでい・・・。言いたい放題言って寝やがって・・・) そういえば 自分が昨日、寝床を占領してしまっていて かごめはぐっすりと眠っていなかったのかもしれない。 その上・・・ ”桔梗・・・” (・・・なんでオレは・・・) その名を呼んでしまったのだろう。 桔梗とは全く違う・・・ 優しい匂いと 温かな風と温もりに包まれて眠っていたのに・・・ ふわ・・・ 風に靡くカーテンと 同じリズムでかごめの前髪も靡く 「・・・」 (・・・側にいるのは・・・かごめなのに・・・) サラっと前髪をすくう・・・。 (柔らかい・・・) 眠っている間の優しい匂いより 現実の匂いの方が ずっと・・・ (心和らぐ・・・) こんな穏やかな時間。 このときに 寝言で かごめの口から他の男の名前が出てきたらどうだろう。 「・・・こうがく・・・」 「な、何!?」 「こうがく・・・」 (こ、こ、鋼牙だと!??) 犬夜叉の全身にピリピリ・・・もうスピードで苛苛がまわっていく。 「・・・駄目だよ・・・こうがく・・・」 「!!」 (どっどんな夢、見てやがるんだッ!!) 嫉妬はやまぬ。荒々しい。 犬夜叉はかごめの後ろでぐるぐると落ち着かない犬のように 走り回る。 (だぁあああ!!呼ぶんじゃねぇえ!!) 「こうがく・・・」 (なんで鋼牙の名前を・・・) はっとした。 きっとかごめもこんな気持ちだったのか。 眠っている本人を起こすことも出来ないが 悪意はないが 一番呼んで欲しくない名前を 何度も連呼されて・・・。 (・・・人のこと・・・いえねぇよな・・・) かごめもこんな 苛苛した 気持ちだったのか・・・。 「・・・」 パサ・・・。 机に頬を突いて座ったまま眠るかごめにそっと 自分の衣を着せる犬夜叉。 (夢ならいい・・・。でも現実では・・・) 「・・・お前のそばにいるのは・・・オレなんだからな・・・」 今、側にいる人を大切にしたい。 犬夜叉はそのまま暫くかごめの寝顔を見守っていた・・・。 追記。 後日談だが、かごめがこのとき見ていた夢は鋼牙の夢ではなく。 『工学』の授業の夢・・・。 テストが近かったらしい。 しかしこの事実はかごめも犬夜叉も知らなかったのだった・・・。