薄荷キャンディ 「・・・ふぅ」 風は心地よいのに 春の風なのに こころが晴れない。 気がつけば少し曇ってきた。 ためいきをついてご神木の前でひざを抱えて座るかごめ。 言葉では表せない 心の中の”淀み” 『後はお前が・・・』 託された矢 その矢。 聖なる命と魂がこもっている・・・。 重くて 切実な ・・・矢。 (私で大丈夫かな・・・。でもやり遂げなくちゃ) 「どうした。ぼけっとして」 「ううん。何でも・・・」 「ほれ。これ食え。美味んだとよ。元気出せ」 楓からもらった饅頭をかごめに手渡す。 手荒だけど、犬夜叉なりの気遣いだが・・・。 「うん。でも後で」 「なんでだ。饅頭嫌いか?」 「いや・・・そうじゃなくて。今、キャンディ口の中にあるから」 「キャンデー?」 かごめはポケットから白いフィルムに包まれたキャンディを取り出す。 「私の世界のお菓子・・・。飴玉の一種よ」 くんくん。 かごめの手の平をかぐ犬夜叉。 「なんか・・・。スウスウするような匂いだな」 「そう?でもおいしいのよ。心がスカッとするの」 「そうか」 かごめはもう一つパクッと薄荷キャンディをほうばる。 疲れたときは甘めのイチゴキャンディがいいが 心が晴れないときは 眼が覚めるようなスカッとする少し辛めの薄荷キャンディがいい。 「・・・。でも饅頭も美味いぞ」 せっかく持ってきてやったのにと 犬夜叉、ちょっとご不満そう。 「分かってる。ありがと。ちゃんとあとで食べるから」 「おう」 「・・・ねぇ」 「ん?」 「・・・。なんでもない。大丈夫」 「な、なんだよ。ソレ・・・(汗)」 (大丈夫なのか、そうじゃないのか分からねぇじゃねぇか(汗)) かごめの不安そうな顔はどうすれば 直るだろう。 食べ物で簡単に治らないし 「おう。そのはっかってやつ、俺にも食わせろ」 「え?でも・・・」 「いいから!貸せ!」 強引にかごめのリュックから飴玉の袋を取り出して ばら撒く犬夜叉。 キャンディの包みを取って 一気に・・・ パクリ! 「・・・!!」 犬夜叉、初めてお味に・・・ (舌がスースーしやがる!) と困惑ですが ガリガリ 我慢して 噛んでごっくん! 「まぁ・・・まずくはなかったな」 「ほんとにー?我慢しなくていいのに。 ”大人の味”なんだよ。コレ」 「がっ我慢なんかしてねぇ!俺は大人だ!」 「意地張らなくても良いのに」 くすっと犬夜叉をチラ見。 「意地なんか張ってねぇッ!オレはかごめとおんなじモンが 食いたいンでいッ!!」 (・・・はっ) 勢いでなんだかちょっと照れくさい、そんでカワユイ発言をしたことに 気づく犬君。 「・・・(汗)と、とにかくっ。 オレはどんなもんでも喰う!お、大人だからなッ」 「大人・・・ねぇ。ふふ」 「わ、笑うなッ///」 (あ) けど気づく。 (やっと・・・。かごめが笑った) さっきまで ため息ばかりだった。 どうすればいいか なにをすればいいか かごめが笑ってくれるには わからなかったから・・・ 「ふふ。相変わらず意地っ張りー」 「う、うるせぇッ・・・」 意地っ張りでもいいか。 かごめの不安げな顔が 和らぐならば。 「ありがとう。犬夜叉。ちょっと元気・・・出た」 「そ、そうか」 「うん・・・」 少しだけ犬夜叉の肩にもたれるかごめ・・・ 薄荷キャンディ一個。 ちょっと切なくて 爽やかな香り。 気がつけば曇り空も青空に変わっていた。 「かごめ」 「ん?」 「大丈夫だ。きっと・・・」 「・・・うん」 ぎゅっと手をつなぐ。 色んな深い想いがあるけれど 二人なら大丈夫。 不安という雲を 薄荷キャンディがなくても 吹き飛ばしてくれる。 二人が手をつないでいれば きっと・・・。 (けどやっぱりちょっと苦手だ・・・。あの味は) と、犬夜叉はやっぱり薄荷キャンディは苦手のようでした(笑)