洞窟につくと犬夜叉は破魔の札を入り口に貼る。これでしばらくは妖怪はちかずけない。
「う・・・。いぬ・・・夜叉・・・。ここは・・・?」
「近くの洞窟だ・・・」
「そっか・・・。弥勒様達・・・大丈夫・・・かな・・・」
「人の心配より、自分の心配してろ」
犬夜叉は自分の上着をかごめに着せてやった。
「ごめん・・・。犬夜叉・・・。まためいわく・・・かけちゃったね・・・」
「何でお前が謝るんだ・・・。俺のせいでお前ばかりくるしい思いさせちまってるのに・・・」
「だって・・・。あたしがもっと強かったら・・・。こんな事には・・・。いつもみんなに守ってもらってるばかりだもの・・・」
「かごめ・・・」
それは俺の台詞だ・・・。俺がもっと強ければ・・・。
「かごめ・・・俺はやっぱり・・・強くなりてぇよ・・・。こんな中途半端な力じゃねぇ。もっと強い力を・・・」
「犬夜叉・・・」
「人間の体じゃあ、何からもお前を守れねぇ・・・。こうしてかくまうくらいしかできねぇなんてよ・・・」
力が欲しい。自分のため、仲間のため、そして・・・大切な女のため・・・。
「犬夜叉・・・」
「俺は・・・すげぇ・・・強くなりてぇ・・・」
守るべき女を守れないもどかしさ。
「!!」
その時、かごめはいきなり犬夜叉のひざに自分の顔をうずめた。
犬夜叉、固まる。
「な・・・な・・・なっ・・・っ」
「地面が固くて・・・。だめ?」
「おっ。男がンな事・・・」
「ごめん・・・。だめだったらいい・・・」
息苦しそうなかごめ。
「・・・。ちっ・・・。しっしっ・・・しばらくだけだぞっ・・・」
そっぽを向いて照れている犬夜叉。しかし、どことなく嬉しそうだ。
「ありがとう・・・。ふふ・・・。なんかいつもと反対・・・だね。名付けて逆膝枕・・・なんてね・・・」
「ばっ。バカな事。言ってンじゃねっ・・・」
「・・・。ねぇ・・・犬夜叉・・・。犬夜叉は・・・充分強いよ・・・。だって・・・。今もこうして・・・あたしのそばにいてくれるし・・・」
「かごめ・・・」
かごめは増して苦しそうに息をはく。
「半妖の犬夜叉だから・・・人間の痛みも妖怪のつらさもわかってる半妖の犬夜叉だから・・・強いんだよ・・・」
「わかったから・・・。もうしゃべるな!」
「犬夜叉・・・。大丈夫だから・・・。犬夜叉は誰にも負けない・・・。だい・・・じょう・・・ぶ・・・」
かごめはそう呟きながら眠りについた。
犬夜叉はかごめの汗を拭いてやる。
自分も傷を負った時、こうしてあたたかなかごめに包まれて眠った。
かごめに守られて・・・。
ケガを負った時も、桔梗の事で傷ついたときも、そして、自分自身に迷った時も・・・。
いつも、かごめが側にいた。いつもかごめが笑っていた。
いつも・・・そのままの俺でいいと言ってくれた。
そうやって俺は・・・お前に守られていたんだな・・・。
ずっと・・・。
犬夜叉はそんな気持ちで汗で顔についたひとすじの髪を優しく耳にかける。
だから・・・俺は・・・かごめを守る。
かごめを苦しめるもの全てを。
そして自分自身のために・・・。
「なんともうるわしい場面だな・・・」
「!椿っ!!」
気がつくと、洞窟の外に椿の姿があった。
「椿・・・てめぇ・・・」
「桔梗はどう思うだろうな・・・。嫉妬でまた、お前を恨むか・・・?ふっ」
「う・・・うるせぇ・・・」
椿は桔梗の名を出してわざと犬夜叉を仰ぐ。
「半妖は確か月に一度妖力が無くなると聞いたことがあったが、今日がその日だったとはな・・・。ふっ。人間の方がいい男だぞ。犬夜叉」
「やかましいっ!!とっとかごめの呪いをときやがれっ!!」
ザシュッツ!!
犬夜叉は鉄砕牙を抜くが、変化しない!
「やめておけ。今のお前に勝ち目はない。大人しく私にやられるのだな・・・」
椿が拳ぐっと力を入れた。
「うぐっ!」
「かごめ!」
「私自身が式神なのだ。私が傷つけば、かごめも傷つく。さて、どうする?犬夜叉?」
「くそ・・・っ!んなことさせねぇっ!!」
犬夜叉は変化しない鉄砕牙を椿に向かっていった!
「無駄だ」
ドカッ!!
「ぐはっ・・・!」
椿の飼っている妖怪が犬夜叉を岩に叩きつける!
治っていない肩の傷口が開いて骨が折れた音がした。
腕に力が入らない。犬夜叉はその場に倒れた。
「ぐ・・・」
「そこで自分の愛しい女の死に様を見ていろ。お前はその後にかごめの元に送ってやる」
椿がかごめに近づこうとする。
「!!貴様・・・」
椿ははっとした。
「行かせねぇ・・・。絶対にかごめの所には行かせねぇっ!!」
犬夜叉は折れた腕でを椿の足を必死につかむ!
「離せっ!!離さねばもう片方の腕もへし折るぞ!」
「離さねぇっ!死んだって離さねぇぞっ!!」
「離せっ!」
「離さねええっ!!!」
ギシッ、ギシッと犬夜叉の骨がきしんで全身に痛みが走る。しかし、犬夜叉は石にかじりつくように椿の足を掴み続ける。

「絶対にかごめは死なせねぇ!!」
たとえ、この体を盾にしても・・・
その時、雲母に乗った弥勒と珊瑚が来た!
「犬夜叉!大丈夫か?!」
「来んじゃねぇえっ!!弥勒っ!!」
「何を言ってる犬夜叉!ひどいケガしてるじゃないか!!」
「手を・・・出すんじゃねぇ・・・。俺は今・・・こいつと根比べだ・・・。かごめの呪いをとかせるために・・・」
「し・・・しかし・・・」
「今・・・かごめを守るのはこの俺だっ!誰にもゆずれねんだよ・・・っ!」
「犬夜叉・・・」

呪いとたった一人で闘っているかごめ。
だから俺も一緒に闘う・・・。
たとえ人間の体でも、妖怪の姿でも・・・。
お前がありのままでいいと言ってくれたこの俺自身で・・・。
「ぐっ・・・!」
椿の妖怪が容赦なく犬夜叉の体に攻撃する。しかし、そうすればするほど、犬夜叉は椿の足を力一杯つかみ、離さない。
「かごめの・・・呪いをとけ・・・椿・・・。解くと言うまで俺は一生お前の足を離さねぇぞっ・・・!」
「・・・。誰がそんなことするものかっ!!」
「解けっ!!!」
「犬夜叉っ・・・」
「珊瑚!」
「法師様・・・」
弥勒はだまって首を横に振って珊瑚を止めた。
これは犬夜叉とかごめの闘い・・・。二人の・・・。
「解け・・・。椿・・・」
「ハア・・・ハア・・・」
その犬夜叉の恐ろしいほどの気迫と執念に椿はおののいていた。
払ってはつかみ、払ってはつかみ・・・。
それがどのくらい続いただろうか。
いつの間にか薄明かりが差し始めていた。
二人は、その場に倒れていた。
「ハア・・・ハア・・・」
「つ・・・ば・・・き・・・とけ・・・」
気を失いかけてまでも、犬夜叉は椿を離さなかった。
気がつけば、犬夜叉は半妖の姿に戻っていた。
「・・・。椿、お前の負けだ・・・。かごめ様の呪いをとけ・・・」
「・・・」
「そしてもう、犬夜叉とかごめ様には近づくな!約束せぬならば今ここでお前の命を絶つ!」
「・・・」
椿は疲れ果てているのか何も言わずに着物の内側から式神の儀式に使う水晶を取り出し、そのまま気絶した。
「法師様!それは・・・」
「・・・」
ガシャン!!
弥勒が水晶を割るとどす黒い気の固まりが煙のように消えていった。
「珊瑚、お前はかごめさまを見てくれ」
「わかった!」
「ったく。世話のかかる男ですな・・・。格好つけるなら最後までつけろってんだ・・・。ま、今日のお前は確かにかっこよかったけどな・・・」
「へっ・・・うっせえん・・・だよっ・・・。それより・・・かごめは?」
弥勒は犬夜叉に自分の法衣を着てやった。
「法師様!かごめちゃんは無事だよ!」
呪いがとけたせいか、かごめの顔色は大分よくなてって、肩のあざも消えていた。
犬夜叉は四つん這いなりながらかごめの元へ行き、無事を確かめる。その温かい頬に手を当てて。
「か・・・ごめ・・・よかった・・・。よかっ・・・」
「犬夜叉!」
犬夜叉はそのまま弥勒に寄りかかるように倒れた。
「二人とも・・・ゆっくりお休みなさいな」
珊瑚はかごめを雲母に乗せ、弥勒は犬夜叉をおぶる。
(どうせなら、私はかごめ様の方がよかったですけど・・・)
4人を太陽の光が照らす。
「朝日が眩しいですな・・・」
そして・・・長かった夜は終わった。

Fin

ず最初に・・・。犬夜叉、かごめちゃん、ごめんなさい!二人をとても痛く書いてしまって・・・(笑)。12巻あたりで犬が桔梗を守ろうと必死になって「桔梗に触るなーーー!」って言ってるのが悔しくて悔しくてずっとたまらなったす。ま、そこが犬のいいところでもあるのだけど♪でも、やっぱり、相手はかごめちゃんがいいーーーーー!!(悲鳴)。犬がかごめちゃんを守ろうとするだけでもう、天にも昇る気持ちっス!そんで朔犬の姿でも懸命にかごめを守る犬がこれまたもう、格別によいよい〜♪ええ。「桃果人」ッス。9巻で犬が気持ち悪いかもしれないが、着てろッて自分の服を渡すシーンナンザもう・・・「何枚でも着ますわっ!」って感じで・・・(陶酔)あと、「かごめがいきているなら・・・」って台詞もいいですなぁ〜〜★アニメでやったらもう、2,3回は昇天しちまいそうです・・・しかし、考えてみたらば桃果人編って珊瑚ちゃん、まだ出てきてなかったッスね・・・てことは・・・。やっぱり、カット??んなのいやだぁあああ!(子供じゃねんだから(笑))てことで、暴走してしまったしろものがこれでした・・・(汗。)
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