ちなみに・・・。チビ犬と七宝はどこに?
草むらの影にいました。そしてまた、チビ犬の口をふさいで隠れています。
(またじゃ・・・。最近の男女は子供の目をなんとおもっておるのだろう。よいか、チビ犬!ここで音をだすのは子供じゃ!で、また、がまんしてもらうぞ!)
(フガゴッ!!)
「雲母!あの洞窟でおろして!」
かごめは犬夜叉をとりあえず、洞窟で休ませることにした。
「う・・・」
「どうしよう・・・。とにかく血を止めなくちゃ!」<血が着物を真っ赤に染めていた。
かごめはリュックの中から湿布と包帯を取り出す。
血だらけの着物を脱がせる。
汗をかいている。
ザコ妖怪とはいえ、人間の体の犬夜叉にはあの爪の傷は深かった。
湿布を背中に貼りつけ、包帯をまく。
犬夜叉のけがをいつも手当てするかごめ。
今までの闘いでの傷跡がいくつも残っている。
「・・・」
かごめを守ろうとしてついた傷もある。
必死に自分を守ってくれた跡・・・。
かごめはその傷一つ一つが愛おしく、そして痛々しく感じた。
『犬夜叉・・・』
誰だ?
『犬夜叉・・・』
お・・・おふくろ・・・か?
『私は・・・あなたを守ってあげられなかった・・・』
おふくろ・・・泣いてんのか・・・?
『私は・・・いつも・・・あなたのそばにいます・・・』
おふくろ・・・
『いつも・・・あなたのそばで・・・見守っています・・・』
おふくろ・・・!
母親らしき影に手を伸ばす犬夜叉。
待ってくれ・・・!おふくろ・・・。
『いつも・・・あなたの側に・・・』
おふくろ!
「はっ・・・」
ゆっくりと目を覚ますとそこにはかごめの瞳から流れる一筋の涙が・・・優しく見えた。
「かご・・・め・・・?」
「犬夜叉・・・!よかった・・・。気がついたのね」
「ここ・・・は?」
「森の中の洞窟。雲母に降ろしてもらったの」
「そ・・・か・・・」
あの夢の中の声は母親の声だったのかそれとも・・・。しかし、とても安心するあたたかい声。
「お前・・・何・・・ないてんだ・・・よ」
「な・・・泣いてなんか・・・それより、傷、痛まない?とりあえず、血はとまっ・・・」
かごめの頬に触れる犬夜叉の手。
「なんで・・・ないてたのかって・・・聞いてンだ・・・」
かごめは触れられた手に自分も重ねる。
「・・・。犬夜叉の体の傷見てたら何だか・・・私も痛くなっちゃって・・・。私を守ったせいでこんな風になったのも幾つかあるのかって思ったら・・・。痛くなっちゃって・・・」
「・・・。ばかやろう・・・。お前が泣くことはねーんだよ・・・」
夢の涙はこの涙?母親の優しい声が犬夜叉の耳にまだ、残っている。
頬にあてられた犬夜叉の手の甲に血がついている。
「ん?かごめ・・・お前、手、どーした?」
「あ、これ、ちょっと雲母から降りるときくじいただけよ。こんなのたいしたことないから・・・」
犬夜叉は痛そうに体を起こした。
「ねっころがってると小石に傷があたって痛いんだよ。それより・・・かごめ、包帯もってこい」
「え?」
「いいから・・・」
犬夜叉はかごめから包帯を受け取るとかごめの手に巻き始めた。
「犬夜叉・・・。いいわよ。どっちがけが人なのよ」
「黙ってろ」
巻くというよりからめてる・・・。
「・・・。不器用ね。あんた」
「う、うっせー!だまってろつってんだろ!ちくしょ・・・うまくいかね・・・」
本当に不器用な犬夜叉。でも、その不器用はたくさんの優しさがつまっていることをかごめは知っている。
「うふふ。もーいいから。自分で巻くわ」
「けっ・・・。俺は・・・お前が傷つくのがやなんだよ・・・。かすり傷でも・・・」
「犬夜叉・・・」
大切な人の傷。それは自分の痛みでもある。
「かごめ」
「ん?」
犬夜叉はかごめをフワッと自分の膝の上に乗せた。
「・・・。今日は膝枕はいいの?」
「ば、バカ言ってンじゃねぇ・・・」
両手で大切に包み込むその両腕がいつにもましてたくましく、力強く感じる。
かごめは体全身で犬夜叉の肌の体温を感じる。
傷のせいせか全身、熱い。
犬夜叉も又、全身でかごめを感じる。
心から安心できる。愛おしい匂い。まるで、母親のお腹の中にいるような・・・。
「・・・。やっぱり・・・お前、いい匂いだ・・・」
「・・・。前から聞こうって思ってたんだけど・・・あたしの匂いってどんなの?」
「ど、どどどんなって・・・」
「シャンプーかな、それともリンス?」
「そんなもん、しらねぇ。ともかく・・・俺は・・・。お前の匂いが好きなんだ・・・」
愛おしい気持ち一杯に犬夜叉は腕の力ぎゅうっと強める犬夜叉。
抱きしめられるのと同時にかごめの耳元かに犬夜叉の息がかかる。何だか全身がくずぐったい。
「あ・・・あたしは・・・犬夜叉の耳が好き」
「なっ・・・。・・・耳・・・だけ・・・かよ」
犬夜叉、少しすねる。
かごめは犬夜叉の腕の中で犬夜叉の方をふりむく。
「・・・。ここも・・・好き」
犬夜叉の唇にそっと指で触れる。
すると自然と犬夜叉もかごめの唇に・・・。
「・・・」
指先から熱さが全身に伝わって、そのままふたりは優しくキスを交わした。
たとえ、傷を負ってもきっとお前が、あなたが、いるかぎり、きっと乗り越えられる。
FIN