甘く、愛しい時間

〜犬夜叉のお願いごと〜


そろそろ夕暮れ時。犬夜叉一行も夕食タイムである。

今日は、おなご達特製のきのこ汁&焼ききのこだそうだ。

そのため、かごめと珊瑚は森の中へきのこ探しに出かけていた。

「あ、これ、食べれるの?珊瑚ちゃん」

「うん。大体、色の薄いものは食用だよ」

「そっかー。物知りなんだねー。珊瑚ちゃん」

「妖怪退治屋としてはこのぐらいの知識はね」

この辺りの森はきのこの群生地らしく、様々なきのこが生えていた。

「あ・・・。これ・・・綺麗な模様・・・」

かごめが見つけたきのこは、黄色のまだら模様のきのこ。かごめはこれも食べられるかどうか珊瑚に聞こうと思ったが、

「かごめちゃん、そろそろ行こうか。男達、きっとお腹空かせたってわめいてるよ」

「あ、うん。そうだね」

かごめはそのきのこをそのままかごのなかへと入れてしまった。

(あとで珊瑚ちゃんに聞こうっと・・・)

空き家のかまどをかりてかごめと珊瑚がせっせと夕食を作っている。

「ふ。いいですな。おなごが男のために手料理をこしらえるという姿は・・・」

「けっ。そんなもん・・・。それより腹減ったぜ」

「全く・・・。あのなぁ、自分の好きなおなごが自分のために料理を作る姿・・・健気で可愛いとおもわんか?もし、かごめ様が、鋼牙のための料理を作っているとしたら、どうする?」

「鋼牙のためのりょうーり?」

犬夜叉、想像してみる。

“はい。鋼牙君。私が作ったの。食べてくれる?”

“おう。かごめの料理ならな”

“はい、あーん。”

“あーん・・・”

「だああああああっ!何があーんだ!!ガキじゃあるめぇし!!」

「何、言ってンのあんた一人で」

かごめと珊瑚が鍋を持ってきた。

「・・・。ななんでもねぇ!」

「あ、そう。さ、沢山食べてねー」

かごめは木のお椀にキノコ汁をよそう。

「いただきまーす!!」

「うおー。なかなかうまいぞー。珊瑚、かごめ!」

七宝、がつがつと食べる。

「ありがと。七宝ちゃん」

そんなかごめをじっと見て、何かを想像する犬夜叉。

“はい、あーんして、犬夜叉★”

「・・・」

「何?犬夜叉、人の顔じっとみて」

「な、ななな何でもねぇっ!!」

「変なの」

かごめもきのこ汁を食べる。

その中に、さっきのまだらのきのこが。

(あ、これ・・・。珊瑚ちゃんに聞くの忘れてた・・・。大丈夫よね。何も言わなかったし)

そして、そのキノコを口にするかごめ。

「うん、おいし♪」

確かに味は歯ごたえがあっておいしかった。しかし・・・。このキノコには世にも恐ろしい(特に男達は喜ぶ)副作用があったのだ・・・。

そしてそれは、明け方に症状が現れ始め・・・。

「う・・・ん・・・。何だ?何かからだが重いのだが・・・」

弥勒が目を開けるとそこには・・・。

「弥勒さまって・・・素敵・・・」

「か、かごめ様?!」

異様な目つきをしたかごめが!!

なんとも色っぽい目つきをして、弥勒にせまっているではないか!!

「ど、どうされたのです!かごめ様!」

「大人っぽくて・・・頼りになって・・・もう・・・胸が高鳴るの・・・」

「そ、それはそうですが・・・。かごめ様には犬夜叉が・・・」

「弥勒様・・・」

かごめ、見つめる。

「・・・。わかりました・・・。かごめ様の気持ち・・・。男たるもの、おなごのお誘いを断るわけには・・・」

と、力説している背後に珊瑚が仁王立ちしている。

そして、その横に石化してお座り状態。

「法師様・・・。あんたって人は・・・」

「いや、これは・・・あの、かごめさまが・・・」

「問答無用ーーーーーーーーっ!!」

ビッターン!!バキ、ボコ!!

早朝、山になんともいい響きの音がこだました。

弥勒の頭にまあるいおやまふたつ、ほっぺにはきれいについた手の跡が。

「・・・。全く・・・とんだぬれぎぬですな」

しかし、珊瑚はの冷たい横目。

「どーだか・・・」

「そ、それより・・・。かごめ様のあの状態は一体何なんでしょう?」

今のところ、かごめは眠っている。

その横で、ショックのあまり、石化した犬夜叉、まだ、うごかない。

「多分・・・媚薬キノコのせいだと思う」

「媚薬きのこ?」

「うん。別名惚れ薬キノコっていう。毒がないかわりに脳を刺激する成分があって異常に異性を求めたくなるの。身も心も捧げたくなってそれが、かごめちゃんをあんな状態に・・・。」

「・・・。なんと素晴らしいキノコなんだ。珊瑚、お前も食べなさい!」

ギロ!珊瑚、睨む。

「そ、それは冗談として・・・。解毒はできぬのか?」

「大丈夫。1日で自然に抜けていくから」

「けっ。どーりでおかしいと思ったぜ。かごめがあんなことするわけねーもんな!」

二人の話を聞いて安心した、犬夜叉、復活!

「蘇ったか犬夜叉。しかし、今日一日、かごめ様を連れてここを立つ訳にはいかぬな。仕方ない・・・。ここは私がかごめさまのおそばで看病を・・・」

「もう、一発、欲しい?法師様」

拳を見せる珊瑚。

「かごめちゃんはあたしがみてるから。あんた達は外を守ってよ。ん?何、犬夜叉、その不満そうな顔は」

「べ、べつに不満なんか・・・」

しかし、犬夜叉の顔には“俺がかごめの看病したい!!”とかいてある。

「・・・。犬夜叉、あんたがかごめちゃんみてて。あたし、薬草さがしてくるから。いい?」

「え・・・。でも・・・」

「じゃ、弥勒さま、おいてったほうがいい?」

「私なら、全くもってかまわないですぞ。また、嬉しい思いをさせてもらえそうで・・・」

「んなのだめだっ!!俺が残るつったら残るんだっ!!かごめにせまらていいのは俺だけでえっ!!」

二人に乗せられ、犬夜叉、思わず、本音がぽろり・・・。

「じゃ、かごめちゃんのこと、よろしく」

「ああ、やっぱり、私が残りたい・・・」

未練がましいく言う弥勒。

「弥勒、そのへんにしとかんと、また、たんこぶがふえるぞ」

七宝、弥勒に警告。

「法師様、いくよ!!」

弥勒は珊瑚に首根っこつかまれて連れて行かれた。

「・・・」

しーん。

犬夜叉のお願い通り、かごめとふたりきりになった。

「・・・」

犬夜叉はとりあえず、かごめの横にちょこんと正座して様子を見る。

『急に異性を求めたくなって身も心も捧げたくなるの』

珊瑚の言葉が蘇る。

「・・・」

(かごめの奴・・・。今度目ぇさめたとき・・・一体どんな風に俺に・・・)

なぜだか緊張する犬夜叉。

しかし・・・。

10分経ち、20分たち・・・。一向にかごめは目を覚まさない。

犬夜叉、何だかちょっといらいらしてきた。

(ぜんぜんおきねーじゃねーか!おもろしくねぇ・・・)

犬夜叉は背を向けてすね気味。その後ろから突然かごめは犬夜叉に耳に・・・。

「フー・・・」

「!!!」

犬夜叉、全身、ゾクッと電撃がはしって耳がピン!

「ん、んな、んな、な・・・なにしやがる!!」

「い、ぬ・や・しゃ★どお?気持ちよかったー?」

「な、なななななに言ってんだっ!!」

そう言っているが、顔は嬉しそうだ。

「んふふふー。照れてるー♪かわいー♪ねぇねぇ、今度は何して欲しい?あたし、今、とっても気分がいいから、何でもいうこときいてあげるー」

かごめ、今度はハイテンションになっている。

「ば、ばかいうな!お前は今、普通じゃねぇ・・・。大人しく寝てろよ!」

「ふうん。じゃ、寝る。おやすみ」

かごめ、お布団にもどる。

「え・・・あの・・・」

犬夜叉、ちょっぴり、いや、すっごく残念。

「んふ。ふふふふ・・・。ホント、犬夜叉ってうそつけないんだねー・・・」

「な、なんだよ!からかったのか?!」

「ごっめーん。でもね・・・。今、ホントすっごく素直な気分なの・・・。明日になったら、また、毒が消えて意地っ張り娘に戻っちゃうし・・・。だ、か、ら、ね?それとも・・・こんなあたし、嫌?」

「べ、別にそんなことは・・・」

「じゃあねー♪んふふふー♪犬夜叉ーあたし、何でもいう事きいてあげるよー★」

「・・・。ホントだな?なんでも言うこと、聞くんだな??」

「うん!」

「・・・」

犬夜叉、何を思ったか、突然、小屋の周りを人がいないか確かめる!

(弥勒たちはいねぇみたいだな・・・。いつもどっかでのぞき見してやがるからな・・・(というか、邪魔されたくないのが本心))

そして、密かに引き戸に棒を立てかけてロックする。

「どしたの?犬夜叉?」

「な、なんでもねぇ・・・。で、あの・・・あの・・・えっと・・・その・・・」

犬夜叉、ちょっともじもじ君になる。

「あー。やらしーことかんがえてるー」

「ち、ちがうわい!!(少し考えてた)あの・・・あれだよ・・・」

「あれって?」

「あれだよ。ほら・・・」

「だからあれってなあに?」

「メシを食うときに・・・男と女がやるやつ・・・」

「??」

かごめ、意味が分からず首を傾げる。

「けっ。やっぱもういい・・・」

とあきらめかけたとき・・・。

「犬夜叉」

「ん?」

「はい、あーん」

犬夜叉、条件反射で口を開ける。

「・・・」

「これがしたかったんでしょ?じゃ、」

犬夜叉、照れくさそうな顔をしながら、ご希望通りのあーん。

「どう?クッキーおいしい?」

「お、おう・・・」

ばりぼりとかごめが持ってきたクッキーをほおばる犬夜叉。

「・・・。今度は・・・俺が・・・」

「え、犬夜叉があたしにしてくれるのー?嬉しいー♪でも、どうせならふたり同時にあーんしよー」

と、いうことで、ふたり、お互いに向かい合う。

「んじゃあーん・・・」

ぱくッ。

かごめの手から犬夜叉に。犬夜叉の手からかごめに。二人の腕が交差して。

「うん。おいしい・・・」

犬夜叉、念願が叶ってかなり、嬉しい様子?

「じゃ、次、何がいい?犬夜叉」

「次って言われても・・・。えっと・・・あの・・・その・・・」

犬夜叉、ぶつぶつと言う。

「ぎゃっ!」

「んふふふふー。やっぱり犬夜叉の耳ってかわいー。それによくのびるー」

かごめ、犬夜叉の両耳づかみ。

くいくいくい。

のばーしのばーしてくにゃくにゃくにゃ。

「いてっ!人の耳であそぶなっ!」

「んふふふふー。だあって。あたし、犬夜叉の耳だいすきなんだもーん・・・犬夜叉の全部・・・」

かごめは犬夜叉の瞳をじっと見る

「あー。犬夜叉、今、あたしがキスするとおもったでしょー。相変わらず単純ー」

「んな、んなことねぇよっ!人とのことからかうなっつてんだろうーが!ったく・・・」

しかし、図星の図星らしい。

「ごめん・・・。ホント・・・あたし、変だね・・・。やっぱりこんな私・・・嫌だよね・・・」

「毒のせいだからって・・・よりにもよって・・・。俺の目の前で弥勒なんかにせまりやがって・・・」

「犬夜叉・・・」

ぶつぶつ、不満そうに言う犬夜叉。

やきもち犬、出現。

「じゃ・・・。今度は・・・」

かごめはそっと犬夜叉に顔を近づけた。

「え・・・」

犬夜叉、ぎしっと緊張のあまり、固まる。

「・・・。でもね、さっき言ったこと、毒だけのせいじゃない・・。犬夜叉の白くて長い髪も好き・・・」

かごめは犬夜叉の髪をそっと触れる。

同時に犬夜叉もかごめの髪を・・・。

「オレンジ色の瞳も・・・」

そしてまぶたをゆっくりとその指はなぞって・・・ッ唇で止まる。

犬夜叉も同じくかごめの瞳とまぶたにふれて・・・。

「・・・。犬夜叉のキスも好き・・・」

そしてそのまま二人は瞳を閉じて・・・。

優しくて、甘い、甘いキスを交わした。

「・・・」

「・・・」

しばらくして・・・。自然と犬夜叉はかごめの膝枕でかごめのいい匂いに包まれていた。

「ねー。犬夜叉」

「なんだよ」

「膝枕って何回ぐらいしたっけ?」

「んな、んなことかぞえられっか!」

「キスよりは多いよねー」

「ばっ・・・バカ言ってンじゃねぇよ・・・」

犬夜叉、膝の上で照れ犬になる。

「ねぇ犬夜叉・・・あたし・・・。今・・・。すごく・・・言いたい一言があるんだけど・・・。言ってもいいかな?」

「言いたい事って何だ?」

「・・・。今のあたしの気持ち・・・」

きのこの毒のせいなのか、そうではないのかわからない。でも、どうしても言いたい一言がある。

ずっとこんな甘い時間は続かない。

きっとほんの一瞬。

だからこそ、大切に、大切にしたい時間。

愛しい時間。

そして、今、一番伝えたいこの気持ち・・・。

「かごめ、お前・・・」

ポタ。

犬夜叉の顔に綺麗な涙が一粒落ちる。

「かごめ・・・」

「あたしは・・・犬夜叉を・・・」

一番届けたいこのきもち・・・。

「愛してる・・・」

「・・・」

ポタリ。

かごめ涙がもう一滴こぼれる。そして、その涙を優しく拭う犬夜叉。

「・・・。もう一回、言えよ。今の」

「え?」

「もう一回・・・言えっつてんだよ・・・」

「や、やだ・・・。そんなこと・・・何回も言える分けないじゃないの・・・」

「いいから・・・。お前、俺のいう事何でも聞くんじゃなかったのかよ」

「・・・。犬夜叉も言ってくれたら・・・いいよ」

「バカ・・・。んなの俺のは・・・。んな言葉一つじゃ・・・じゃたりねぇんだよ・・・」

いつのまにか・・・涙も止まってる。

「・・・。もう一回言って。今の」

「うるせぇ。お前こそさっきの言えよ」

「嫌」

「言えって!」

「やだ!」

「言えよ!」

「いやっ!」

二人はお互いに見合ってくすっと笑う。

こんなケンカも愛しいと思えるこの時間。

「またいつか・・・。ね」

「おう・・・。またいつか・・・な」

またいつか・・・。大切な気持ちを言葉にして・・・。

FIN
・・・。すんません。やりたい放題やりました。でも、まだまだ、あっしの犬かご魂は「足りん!」と吠えております。というこで、甘く、愛しい時間その2なるものを只今妄想中。多分、アニメ犬での欲求不満も影響していると思われますな・・・。