最終話
「かごめ!!」

「犬夜叉!戻ったか〜!」

七宝は待ちかねたように犬夜叉もとへはしった。

しかし、犬夜叉は七宝を無視してかごめに駆け寄る。

「こら〜オラを無視するんじゃない!」

「かごめ!」

かごめはまだかすかに息はしていたが、かなり、真っ青な顔色だ。

「犬夜叉。薬は調合できたのか」

「いや、できなかった。でも、これ で早く薬を作ってくれ・・・!!」

犬夜叉は調合法が書いてある紙を楓に渡す。

「・・・。わかった!珊瑚よ!てつだってくれ!!」

「あいよ!!」

楓と珊瑚はすぐさま青いわすれな草を細かく刻み、紙に書いてある調合法通りにつくる。

その間もさっき取りかえたばかりだというのに、かごめの首に巻かれた包帯は赤くそまり始めている。

「かごめ・・・」

「犬夜叉。お前、よく一郎太殿から調合法を聞き出したな。妖怪嫌いな一郎太殿から・・・」

「しらねぇよ。ただ、ちょっと話しただけだ」

「・・・。話ねぇ・・・どんな話をしたのだ?」

頭を下げて頼んだ・・・ということは口が裂けても言えない犬夜叉。特に弥勒には・・・。

「・・・。んなことより、まだ、できねぇのか!楓ばばあ!」

「焦るな。もう、できる・・・」

楓は絞り出した草の汁に適量の水と酒を紙に書いてある分量を少しずつ小さなすり鉢で混ぜる。

「・・・。できたぞ・・・」

「早く飲ませてくれ!!」

珊瑚は小皿の薬をそっと、かごめの口元にもっていく。

しかし、意識がもうろうとしたかごめは飲もうとしない。

「お願い・・・。かごめちゃん飲んで・・・。これ飲まなきゃ・・・」

珊瑚は涙をためて必死に飲まそうとするがしかし、何度やってもこぼれ落ちる・・・。

「お願いよ・・・。かごめちゃん・・・」

「どきなさい。珊瑚。私がなんとかしましょう」

いつになくきりりとした顔の弥勒。

「法師様・・・。最後の手段て・・・どうする気なの!?」

「ふっそれは・・・。伝説の(?)・・・口移しです・・・」

ドカバキドカドカ!!

弥勒、何発くらったわからない。

「あんた・・・ギャグは時と場合を選びなさいよ・・・!!」

「し・・・しかし珊瑚、ではどうやってかごめ様に・・・」

「だあああ!うるせえっ!!俺が飲ます!!お前ら全員外出てろ!!」

「え・・・」

4人は無理矢理外へ出された。

「犬夜叉・・・」

珊瑚は心配そうに中の様子をうかがう。

「結局・・・かごめ様を救うのは犬夜叉しかおらんのだ。な、珊瑚」

「・・・。もしかして法師様・・・さっきの・・・わざと?」

「・・・。私達はここで・・・待っていましょう。ここでね・・・」

かごめ様が目を覚ましたとき、一番に会いたいのは犬夜叉ですから・・・。


「たのむ・・・。かごめ・・・。飲んでくれ・・・。かごめ・・・」

犬夜叉はかごめを抱きかかえ、薬を口元へもっていくがこぼれてしまう。

「・・・。頼むから・・・飲んでくれ・・・。もし、このままお前が目を覚まさなかったら俺は・・・俺は・・・」

小皿を持つ犬夜叉の手が震えている。

そしてそのまま薬を自分の口に含んだ。

(頼む・・・。飲んでくれ・・・。目を・・・覚ましてくれ・・・)

犬夜叉はそう必死に願いながら・・・かごめの唇へ薬を流しこんだ・・・。

あたたかいはずのその唇は冷たい・・・。

ゴクン・・・。

薬はかごめの体内に静かに流れた。

「・・・」

こんなキスはしたくない。こんな哀しい、切ないキスなんて・・・。

数秒後、かごめの首の包帯からしみ出していた血はピタリと止まった。そして、顔色も徐々にきれいな肌色に染まっていく。

「かごめ・・・!かごめ!」

しかし、犬夜叉が何度呼びかけてもかごめは目を覚まさない。

「なんでだ・・・。薬飲ませたのに・・・何で・・・何で起きねぇんだよ・・・!かごめ・・・」

犬夜叉は優しくかごめの前髪に触れる。

「かごめ・・・」

目ェ、覚ませーーー!!

・・・。澄んだ瞳が、ゆっくりと開いた。

「・・・。かごめ・・・」

「犬・・・夜叉・・・」

「・・・」

「・・・」

じっと見つめ合う二人。

「犬夜叉・・・。おすわり」

「ぐえっ」

かごめ、目覚めのおすわり。

「な・・・なにしやがる!てめぇっ!・・・。わっ」

かごめは犬夜叉に抱きついた。

「よかった・・・!犬夜叉、いつもの犬夜叉だ!元に戻ったんだ・・・!」

「ば・・・バカ野郎!こっちの方こそどれだけ心配したとおもってんだ!頭まで下げで薬を・・・っ!」

「・・・頭?」

「・・・。な、なんでもねぇよ・・・。それよりかごめ、すまねぇ・・・。俺は・・・俺は・・・お前を・・・っ・・・!」

かごめは犬夜叉の口に手を当てて止めた。

「もういいから・・・。あたしは犬夜叉が元に戻ってくれただけでいいの」

「かごめ・・・」

「ねえ、犬夜叉・・・」

「・・・んだよ・・・」

かごめは甘えるように、そして、犬夜叉の鼓動を聴くように胸に顔を埋める。

「おかえりなさい・・・犬夜叉」

「・・・ただいま、かごめ・・・」

犬夜叉も、かごめの柔らかい髪をそっと抱いた。

その犬夜叉の懐に、川原でかごめが犬夜叉に渡したわすれな草が・・・。

何よりも大切で守りたい命と命がが抱きしめあう。

わすれな草の小さな花びらが、ささやかに、そして、確実に、開いた。

FIN

はあ〜。やっと終わりましたが、なんとなく、またまたかごめちゃんを痛い目にあわせてしまって自分一人で心苦しく思っていたりします。 ところで、わすれな草って、図鑑でチラッとしかみてないので、イラのような花かどうかは わかりません。もし、違っていたら、すみません。でも、小さな青い花を咲かせるって のは確かな様で、とても可愛い花ですね。かごめちゃんに似合うかも。秋なら、秋桜とかも似合いそうですね。