あなたのためにできること
〜私は強くなる〜
第2話・一人の夜
延々と続く森の中の道と呼べるほど広くはなく、かろうじて人が一人通れる程だった。背の高い雑草が茂り、それをかき分けて進む。

途中まで平坦な道だったのにだんだんでこぼこにになってきた。

「ふう・・・」

いつもならこういうときは、雲母に乗るか犬夜叉におんぶしてもらっていた。

それが『当たり前』になっていた。

犬夜叉の背中はあたしだけの場所・・・。心の中でそうおもってたのかもしれない。

「よいしょっと・・・」

大きな木の根が足にひかっかりそうに地面に這っている。ゆっくり、ゆっくり、前へ進む。

そのかごめの様子を木の上からうかがっている男。歩くかごめがじれったくて、今にも背中に乗っけて突っ走りたい。けど、それはできない。かごめの望むことじゃない。

今は、こうして遠くから・・・見てること。それが俺の役目。

「はぁ・・・はあ・・・」

とにかく、この森をぬけ、『白糸の山』のふもとまでいかなければならない。

かごめの足には、雑草などで切った切り傷がついていた。

空が・・・。

大分暗くなってきた。珊瑚からもらった妖怪よけの聖水が効いているのか、この辺りによくでる妖怪とは出くわさなかった。

今晩はこの森でで休むことにしたかごめ。かごめはかまで草を自分で刈り、土を掘ってそこで火を焚いた。

パチ・・・パチ・・・。

枯れ枝が燃える音さえも、まわりの静けさで響く。

焚き火の灯りだけがあたたかい。

戦国時代に来て、初めての一人きりの夜。

いつもは犬夜叉達が見張っていてくれるから、安心して眠っていた。

でも、今夜は一人きり。

辺りは暗闇。

どこから敵が襲って来るかわからない。

体を横にしていても、気を張っていなければ。

かごめは弓矢をぐっと握りしめる。

自分の身は自分で守らなければならない。

頼れるのは自分だけ・・・。

ガサガサッ!!

「!!」

かごめはビクッとした。

何かの気配。つばをごくりと飲むかごめ。

怖い・・・。

かごめは弓矢をぐっと向けた。暗闇から出てきたのは・・・。

「クワン・・・」

「子犬・・・?」

小さな白い子犬だった。

「ふう・・・。びっくりした・・・。おどかさないでよ。ワンちゃん・・・」

「ワン!」

「でもお前・・・。どうしたの?迷子?」

かごめはそっと子犬を抱き上げた。

「・・・。あったかい・・・」

子犬はかごめの昼間、草で切った手を必死になめる。

「ふふ・・・ありがとう・・・。子犬ちゃん」

ホッとする・・・。別のぬくもりが側にある・・・。

それだけで、心底安心する・・・。

一人・・・。

一人がこんなに不安で寂しいなんて・・・。

犬夜叉も・・・そうだったのかな。そして桔梗も・・・。

誰にも心を許さずに、一人の寂しさも孤独さも知ってる二人が出会った・・・。

同じ気持ちを持ってる二人・・・。

「・・・クワン?」

「・・・。ワンちゃん、あんたも一人で怖い?不安?」

「クワン?」

「・・・。ふふ。あんたに言ってもわかんないか」

一人になってみて、ほんの少し分かった。本当の寂しさと不安と・・・。

でも・・・。あたしは一人じゃない。

心は一人じゃない。

信じられるものがあるから・・・。

かごめは子犬を抱きしめたまま、静かに木に寄りかかった。

その真上で、子犬がちょっぴりうらやましいと思った犬がもう一匹、いや、もう一人。

(・・・。なんでぇ。子犬かよ・・・)

かごめは今、何を考えているのだろう。

うとうと眠るかごめ。

(安心しな・・・。誰にもお前の邪魔は俺がさせねぇから・・・)

大切な人を見守る・・・。犬夜叉はそんな自分自身が少し恥ずかしさも感じるが、嫌ではなかった。


翌日。ゴゴゴゴ・・・

空が唸る。重い雲で覆われ、今にも雨が降りそうなだ。

しかし、うっすらとだが、刃物のように尖った山頂が遠くに見えた。

「はあ・・・はあ・・・。もうすぐだ・・・。この森を抜けたら・・・」

しかし、まだ、目の前には昨日と同じ風景が続く。木々と雑草が多い茂る。それをかき分けて、前へ、前へと進む。

勿論、頭上には耳の生えたボディーガードが・・・。

(かごめの奴・・・。息が昨日より荒い・・・。相当体力落ちてきてるな・・・)

犬夜叉は、今でもすぐかごめの所へすっ飛んでいって助けたくて助けたくて、たまらない気持ちをぐっと抑えた。

(かごめも自分と闘ってんだ・・・。俺も・・・)

「ふう・・・。ワンちゃん大丈夫?」

「ワン!」

かごめの背中のリュックからひょこっと顔を出す子犬。

「よかった。もうちょっとだからね。がんばろうね!!」

(ばっ・・・。ガキ犬の心配してどーする!!ったく・・・。それにしても・・・)

ゴゴゴゴ・・・。

不気味に鳴る空。犬夜叉は一抹の不安を感じた。

(やな空だぜ・・・。雨がふらなきゃいいんだが・・・)

犬夜叉の不安は的中した。

「やだ・・・雨降ってきた・・・!!」

すごい勢いで降ってくる。

かごめは急いでリュックの中のかっぱを取り出し、すぐに着た。

「どこか・・・雨宿りできそうな場所は・・・。」

がごめがぐっと右足に力を入れた瞬間・・・!

「キャ・・・」

ドサササ・・・ッ!!

かごめはバランスを崩して斜面に転げ落ちた!

(かごめ!!)

犬夜叉の視界からかごめが消えた。犬夜叉は木から降りてカゴメを探す!

「う・・・」

かごめが落ちたのはそれほど深くなかった。少し登ればもときた道へ戻れそうだ。

かごめは起きあがろうとした。

「ぐっ・・・」

右足に激痛が走った。

「痛・・・くじいちゃったみたい・・・。でも、ここにずっといるわけにはいかない・・・あれ・・・」

かごめの目の前に小さな洞穴が・・・。

「・・・。雨宿りしていきなさいって言ってるみたいだわね。じゃ・・・。うっ・・・」

右足を引きずって洞穴へと入る。

一方、犬夜叉は見失ったかごめを必死に探していた。雨のせいでかごめの匂いが大分薄れ、つかめない。

「畜生!!かごめ!!どこいきやがった!!」

「クワン・・・」

犬夜叉の足下に子犬が・・・。

「なんだ・・・?お前・・・」

くいくいと犬夜叉の着物を引っ張る。

「・・・。かごめの所へ連れて行くっていうのか?」

「ワン!!」


雨は止まない。

「う・・・」

かごめは右足に包帯を巻く。

「薬草・・・。昨日使いきっちゃった・・・。とにかく・・・。もう少しもらってくればよかったかな・・・。それにしても・・・ワンちゃんどこいったのかな・・・」

かごめはリュックを枕にして、横になった。

「止みそうに・・・ないな。雨・・・」

ポチャン・・・。

雨の雫が洞穴の天上から染みてきている。

「・・・」

(犬夜叉・・・。どうしてるかな・・・。また、帰りが遅いってすねてるかな・・・)

足の痛みが、昨日の夜の不安が蘇ってくる。

でも・・・犬夜叉がいつも負ってるケガに比べたらかすり傷だよね・・・。こんなの・・・。

負けちゃいけない。痛みに。不安に・・・。

「犬夜叉・・・」

かごめはそのまま眠ってしまった。

(犬夜叉・・・)

「ワン!!」

「こら!待てよ!ガキ犬!!」

子犬は必死に犬夜叉を手招く。そして・・・。

「あ、あれ??ガキ犬!!どこ行った!おい!!」

いつの間にか子犬の姿はなく、小さな洞穴の前に来ていた。

「!かごめの匂い・・・」

そうっと身をかがめて犬夜叉は洞穴に入ると、ぐっすりと眠っているかごめが・・・。

「よかった・・・。無事か・・・」

しかし、ズボンから血が滲んでいる。

「・・・。くじいたのか・・・」

犬夜叉はハッと思い出す。珊瑚からもらった薬草を懐から取り出す。

「・・・」

痛々しい。かごめの体についた傷はどんなに小さな傷でも痛く感じる。

犬夜叉は、そっとかごめのズボンの裾をまくりあげ、足にそっと触れる犬夜叉。

(・・・。べ、別に変な意味じゃねーぞ!!か・・・かごめがケガしてるから・・・)

「・・・」

細くてて白い足・・・。折れそうなくらいに・・・。

犬夜叉は静かに包帯をはずし、傷口に薬草をあて包帯を巻き直す。

(この間、けがしたばっかりじゃねぇかよ・・・。たく・・・。こんな柔そうな体に傷つけやがって・・・)

「んで・・・。よし・・・」

手当完了・・・。しかし、小さな擦り傷が腕や顔についている。

見ていられない。小さく、細い体なのに・・・。

「なんで・・・。なんでこんなに頑張るんだよ・・・。どうして・・・。誰のために・・・」

「う・・・。犬夜叉・・・」

寝言・・・。前にもこんな事があったよな・・・。風邪引いたお前がうわごとで俺のを呼んで・・・。

犬夜叉は静かにかごめの横にひじをついて寝そべった。

「犬夜叉・・・」

(夢の中では俺は・・・。どんな俺なんだ?現実じゃお前を傷つけてばっかりで、守りきれてねぇのに・・・。)

かごめの前髪に枯れ葉が。

犬夜叉はそっと取る。

そして乱れた前髪を整える。そして頬の小さな擦り傷にそっと優しく触れる。

柔らかい髪・・・。

(バカ野郎が・・・。顔にまで傷こさえやがって・・・。柔らかな髪も・・・。細くて白い足も・・・。大事な・・・大事なお前の体なんだからな・・・。俺のかごめの・・・大切な・・・体なんだからな・・・)

傷一つ一つが、痛々しくそして・・・。

愛しい・・・。

「犬夜叉・・・。ごめん・・・ね・・・」

血と一緒に一滴頬に流れる。

「・・・。かごめ・・・」

(なぜ、お前が謝る?どんな夢見てるんだ・・・。苦しいのか?哀しいのか?)

「ごめん・・・。犬夜叉・・・」

雨より、静かに流れる涙。それはどの涙より澄んで、清らかで・・・。

鋭い爪を全部手の中に隠して、そっと手の甲で拭う。傷つけないように・・・。傷つけないように・・・。


お前が泣くときは・・・。俺も泣く。

お前が笑うときは俺も笑う・・・。

お前が何かと闘っているときは・・・。俺も闘ってる・・・。

お前が俺にいつもしてくれているように・・・。

「体が冷えてるな・・・。俺の懐じゃああったまらねぇかもしれねぇけど・・・」

犬夜叉は、その想いをかごめの耳元で伝わるように、かごめの冷えた体を温めるようにかごめの体をそっと自分の懐に引き寄せる。

(お前の望むことは俺の望み・・・。お前の思うように前へ進めばいい・・・。だけど今夜は・・・。その疲れた体を休めてくれ・・・。そしてゆっくり眠ってくれ・・・。ゆっくりと・・・。俺の側で・・・)

かごめは眠りながらも、自分を包む大きくてあたたかい腕の重さを感じていた。

「犬・・・夜叉・・・」


ポチャン・・・。ポチャン・・・。

かごめの顔に染みこんできた雨水が落ちる。

「う・・・ん・・・。あれ・・・?あたし・・・いつのまにかねむってたのか・・・。あれ・・・?」

足の痛みがすっかり治まっている・・・。それに薬草が・・・。

「・・・。誰が・・・。そういえば・・・。犬夜叉があたしの足触ってる夢見たような・・」

かごめは洞穴の周りを見渡した。しかし、犬夜叉の姿はどこにも・・・。

「違うかー・・・。でも、犬夜叉の触り方ちょっといやらしかったなぁ・・・」

(んなっ・・・。な、何言ってンだ!!手当してやったってーのに!!)

と、洞穴の上の犬夜叉は怒っております。

「きっとあたし、自分でしたのね。それにしても・・・。よく寝たー!!」

と、背伸びするかごめ。

(けっ・・・。のんきな奴だぜ・・・。誰のお陰でぐっすり眠れたのか・・・)

でも、犬夜叉、かごめのぬくもりを一晩中、独り占めしていた。

(・・・。弥勒じゃあるまいし!!お、俺はぜってー変な下心なんてねーぞっ!!)

と、上でぶつぶつひとりごとを言っております犬夜叉。

「さーてと!!今日も頑張るぞー!!目指すは白岩山!!レッツゴー!!」

リュックを背負い、そう気合いを入れるとかごめは洞穴を出て再び、険しい道を歩き始めた。

(何がレッツゴーだ・・・。でも・・・。元気なかごめが一番だな・・・。俺が一番好きなかごめだ・・・)

見守る者と見守られる者・・・。

離れていても、ずっとつながっている。

絶対に切れない絆。

お互いを想い合う気持ちがあるかぎり・・・。

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俺の『かごめ』俺の『かごめ』!!です!何が何でも!!3文字でなければいけません(何)。まあ、それはおいといて。お手当犬第2弾です♪いや、前回は風邪をひいたかごめちゃんの看病犬でしたが。かなり、優しくなってますけど、あっしの頭の中ではかなり邪な妄想が渦巻いております(いつもだろ)。で、でも、実際コミックスの20巻で小さなコマですけど、犬がかごめちゃんの靴下を脱がせて指さしてるコマ、ありましたね〜♪♪ええ。見逃しませんよ!!犬、かごめちゃんの生足をまじまじと見ておりました!!かごめちゃんもかごめちゃんで堂々と足、差し出してましたわッ!!←興奮してきたらしいさりげなく、密着しておりますわ〜♪

初初しいでございますっ!!