「かごめねーちゃん!」
「陽太くん!ごめんね!遅くなって!」
実家から帰ったかごめに飛びつく陽太。いつもなら、犬夜叉が出迎えるのだが、その役目を陽太に取られ、犬夜叉、屋根の上でふてくされ中。
「ねーちゃん。ねーちゃん!今日は、どんな菓子を持ってきてくれたんだ?」
「今日はね〜。ほら!チョコレートとビスケットよ!」
「わ〜!いい匂い・・・!どんな色、してんだ?七宝兄ちゃん!」
いつの間にか、七宝が兄貴分になっているらしい。
「なんともうまそうな色じゃな。茶色をしとる。どれ味見を・・・。おおっ。これはうまいぞ!」
そう言って、陽太にチョコを食べさせる七宝。
「・・・。うわー!すっげー甘い匂い!かごめねーちゃんの胸の匂いと同じだー!」
ドシャッ!!
屋根のふてくされ犬、落下。
犬夜叉、何か、異常に興奮したらしい。
「陽太君、甘いもの食べるのはいいけど、ちゃんと寝る前にハミガキしてね♪」
「うん!かごめねーちゃんだーいすき!」
陽太は、犬夜叉にきこえるように言った。
「けっ・・・」
夜になり、陽太と七宝はいつも通りかごめの布団で一緒に眠る。
その真上で犬夜叉が、まだふてくされた顔で、腕を組んで番をしていた。
「・・・。かごめはガキに甘いぜ・・・。ったく・・・」
「この間は、自転車に妬いて、今度は子供?」
「なっ・・・」
布団から出て起きあがるかごめ。
「あのな、俺は別に・・・」
「陽太君も七宝ちゃんも・・・お父さんもお母さんもいないの。陽太君はそのショックで、今、目が見えなくなって・・・。だから、美味しいものを食べる事位しか楽しめないんじゃなっかって・・・。」
「けっ・・・。相変わらずおめーは甘いんだよ。みえねーのは陽太自身だろ。優しくすりゃいーてもんじゃないだろーが。俺なら、一発かついれてだな・・・」
かごめの目がおこっている。
「どーしてあんたってそーいう乱暴なことしか・・・」
布団に小さな涙がこぼれた。
「おかあちゃん・・・。おかあちゃん・・・」
寝言で母親を求める陽太。かごめは小さな手をそっととって抱きしめるかごめ。
かごめは優しく陽太の背中をさすってやる。
「・・・」
犬夜叉は思わず見とれてしまった。
かごめの匂いは確かに母親のように優しくてあったかいが・・・。こんなかごめの表情は見たことがない。本当の母親に見える。自分の子を静かに寝かしている母親・・・。
慈しむ。全てを。
いつか・・・。かごめも誰かの子供の母親になるんだろうな・・・。
ん・・・?誰か・・・?
「・・・」
(誰かって誰だ!?鋼牙かっ!?いや、んなわけねぇっ!じゃあ・・・)

赤子を抱いたかごめの横にいる自分の姿を思い浮かべる犬夜叉。
「なっ・・・なに言ってンだ!!俺はまだ、親父になんかなるわけねーだろっ!!」
犬夜叉の大声で、皆一同、目を覚ます。
「ちょっと犬夜叉!でっかい声、ださないでよっ!!陽太君、起きちゃうじゃないの!」
「う、うるせーなっ。ガキはめおとになってから・・・」
犬夜叉、自分で言って赤面する。
「何わけのわかんない事言ってンの!寝るわよ!おやすみ!」
赤面している犬夜叉をほっといてさっさとご就寝されます。かごめ。ギャラリー(弥勒達)もさっさとおやすみです。
「・・・」
犬夜叉、ぶつぶついいながらやっぱり、まだ、顔を赤く染めていた。
(段々、発想が弥勒的になってきている気がする・・・)


夜になると陽太は、母親を求めて泣き始める。
不安でしょうがないのだ。その度にかごめが抱いて寝てやるが、今晩はなかなかねむらず、朝方まで泣きじゃくっていた。
そこで、かごめは陽太をつれて、まだ、夜明け前だが少し風にあたることにした。
涼しい風が頭をシャキッとさせる。
「陽太くん。風、気持ちいいね」
「うん・・・」
ゆっくりと丘の方へ歩いていくふたり。その後をやはり、つける男、在り。
「かごめねーちゃん。犬のにいーちゃんも来てるね」
「うん。陽太君わかるんだ」
「うん。匂いがしたから・・・」
目が見えないと色々な感覚が鋭くなる。陽太は犬夜叉の匂いをすぐに感じた。
「犬夜叉、あんたもおいでよ。もうすぐ日の出だよ」
「なっ・・・。わかってるんならすぐ言え!」
草の中からはいでてきた犬夜叉。
「はー・・・。いい空気だねー・・・。でもあんたって朝から不機嫌な顔してるわね」
「けっ・・・。元々でえい!」
太陽の頭が見えてきた。
陽太は思い出す。よくこうして母親と父親の3人で朝日を見たことを・・・。
「・・・。かごめねーちゃんオレ・・・。オレの名前ね、太陽の陽からとったんだって・・・。太陽みたいにでっかくてあったかい男になりますようにって・・・」
でも、今の自分は泣いてばっかりいる。そんな自分が情けない・・・。
「かごめねーちゃん、俺・・・太陽みたい・・・。でっかい太陽が・・・見たいよ・・・。うっ・・・」
「陽太君・・・」
太陽はの光りは、ゆっくりと、山々を照らしていく。
そして陽太の涙と目にもあたたかい光りがあたる。
この匂い・・・。太陽の匂い・・・。
まぶたが熱い・・・。
「かごめねーちゃん・・・」
「なーに?」
「太陽って・・・あんなに赤かったけ・・・?」
「え・・・?陽太君もしかして・・・」
「太陽って真っ赤なんだね・・・。きれいだな・・・」
かごめはそっと陽太の手をとった。
「うん・・・。きれいだね・・・!」
かごめと陽太、犬夜叉の3人の影がまるで親子のようにのびて、丘に映っていたのだった。


そして、陽太は隣村の村長の家に引き取られることになった。
かごめの肩に乗っている七宝。
おみやげにと自分のおもちゃをひとつ渡す。
「もってゆけ。陽太。オラの新作じゃ」
「ありがとう、七宝にいちゃん」
そして弥勒と珊瑚、楓も陽太を見送りの言葉を言う。
「また、遊びにおいで。陽太君。雲母もまってるから」
「隣村でかわいいおなごを見つけたらご一報くださいね」
ぎらっ。珊瑚のにらみ。
「達者で暮らせ。陽太」
「うん。楓ばあちゃんもね」
そして最後にかごめ。
「陽太君、元気でね」
「うん。かごめおねーちゃんも・・・。俺・・・ホントは最初、おかあちゃんいないんなら生きてても仕方ないって思ってたんだ。でも・・・かごめおねーちゃん達に出会って短い間だったけど一緒にいて何か・・・たっくさん元気もらった気がする」
幼い陽太の言葉だが、犬夜叉はよくわかる。かごめと出会って・・・仲間ができて・・・そして、今の自分がいる。
「あたしの方こそ・・・。何にもしてあげられなくてごめんね」
陽太は首を横に振る。
「美味しいケーキってお菓子の味と・・・。でっかい太陽の匂いをくれたよ。かごめねーちゃん。俺、ずっとその二つ、忘れない」
「陽太くん・・・」
かごめはしゃがんで陽太のおでこのこつん・・・と触れた。
「じゃ・・・。行くね」
陽太はかごめに背を向けた。
「あ!忘れてた」
陽太は何を思ったか、犬夜叉の所へとことこと走ってきた。
「ん?何だよ」
「ちょっと耳かして」
陽太は犬夜叉の耳元でこう一言。
「かごめねーちゃんって・・・。ケーキと同じ甘くていい匂いだね。一回、嗅がせてもらったらいいんじゃない?」
「なっ・・・」
「じゃーねー♪」
陽太は元気よく歩いていったのだった。
「犬夜叉・・・陽太君何て?」
「う、うるせー。何でもねえっ!」
またまた赤面犬夜叉。最近、何だか興奮することが多いようで・・・・。
「ねえ。犬夜叉」
「何だよ」
「あんたさ・・・。今日の夜、こっち来れないかな・・・?」
「あー?何だよ。何か用か?」
「いーからいーから・・・。ねっ?お願い」
「・・・。ちっ。わかったよ。夜でいーんだな」
「よかった!まってるね♪」
「お、おう」
まるで新婚の様な会話。珊瑚達はお邪魔虫退散・・・ということでさっさと小屋へと戻る。
しかし・・・。
「珊瑚」
「何よ」
「今晩、よかったら来ないか?」
「・・・。どこへ?」
「それは勿論・・・。私の布団です。待っていますよ珊瑚・・・」
バッチーン!
珊瑚、照れの一発。なんともいい響き。
「ああ・・・。これで名何発目でしょうか・・・(しょんぼり)」


出会ってくれて、ありがとう。生まれてくれて有り難う。


それだけで僕は幸せ。
ありがとう。出会ってくれて・・・。

FIN

さて・・・。ラスト、かごめちゃん、夜、誘ってますね。犬・・・。 フフフフ・・・ふっ。←邪妄想渦巻き渦巻きいやー。もうすぐクリスマスですし・・・。クリスマス用のノベル&ちょっと大人な(!?)愛の詩付きで執筆中です。
嗚呼、邪バンザイ。サンデーに負けてられませぬ!!