「かごめ!こんなところにいたのか・・・」
「犬夜叉・・・」
「お前・・・何見て・・・」
犬夜叉が過のぞき込むとかごめの前には桔梗の花が咲いていた。
「・・・。綺麗だよね・・・桔梗のはなって・・・。一生懸命に咲いてる・・・」
「かごめ・・・」
「私・・・何も分かってなかった・・・。桔梗を救いたいだなんて大きなこと言って・・・。桔梗の本当の苦しみも哀しみも・・・」
「それは俺だって同じだ・・・。誰にもわからねぇよ・・・。そして俺はそれを受けとめなきゃなんねぇ・・・」
桔梗の花びらにポタリと水滴が落ちる。
「あたし・・・あたし・・・犬夜叉とずっと一緒にいるって決めたのに生きていて欲しいって思ったのに・・・あたしったら浮かれてた・・・。犬夜叉とキスしたとか言って・・・。だって、犬夜叉と一緒にいれば居るほど、どんどん好きになって、楽しければ楽しいほど・・・どんどん辛くなっていって・・・」
犬夜叉はかごめの腕をぐいっとぴっぱり、抱きしめる。
「すまねぇ。かごめ・・・俺のせいでいっつもつらい気持ちにさせちまって・・・」
「ううん。あたしこそ・・・ごめん。こんな事言ったらまた、犬夜叉、悩んじゃうのに・・・」
「かごめ・・・」
こんなにお互いを想い合い、抱きしめ合っていてもその間には『桔梗』という見えない存在がいつもある。どの道を選んだら、越えられるのだろう。そして、みんな、幸せになれるのだろう・・・。
答えなんて分からない。出ないかもしれない。だけど・・・。
だけど、一緒にいたい。
この一瞬も。
犬夜叉はそっとかごめの涙をぬぐう。
「かごめ・・・。これだけは信じてくれ・・・。俺はずっとお前のそばにいる。お前から離れたくねぇんだ。俺の居場所はお前そのものだから・・・」
「犬夜叉・・・」
「かごめには・・・これかも色々つらい思いさせるかもしんねぇけど・・・俺はお前を絶対に守る。守ってみせる・・・だから・・・俺のそばにいてくれねぇか・・・頼む・・・」
「犬夜叉・・・」
かごめはしっかりと頷く。そして、それを確認する様に犬夜叉はかごめの額に優しく口づけをした。
「犬夜叉・・・」
「お・・・俺は・・・弥勒みてぇに女の扱いっていうか、こうゆうの・・・よくわかんねぇ・・・。けど・・・今の俺の・・・本当の気持ちだから・・・」
「・・・。ふふッ」
「な、何だよ。何がおかしいんだよ」
「ううん。犬夜叉らしいなって思って・・・」
「けッ。に、二度とこんなこっぱずかしいこと・・・いわねぇからな!」
「ふふふ・・・」
かごめは犬夜叉の手を取る。
「帰ろう犬夜叉・・・。みんな、待ってるから・・・」
「ああ・・・」
再びしっかりと犬夜叉とかごめの手は握られた。前にずっと一緒にいると決めたあの日。あの日よりずっとその手と手はしっかりと力強く結びついている。
ずっと一緒にいる。
ずっと。
桔梗の花が優しく秋の風に揺れていた。