考えてみれば、犬夜叉とかごめ、この二人はこんなに長い間離れていたことはなかった。
ケンカしても、次の日には(ほとんどはその日のうちに)犬夜叉が迎えに来るか、かごめは必ず帰ってきたのに・・・。
まだ、たった3日なのに
たった3日がまるで何十年離れている程に遠く感じる・・・。
「ちきしょーーーーーッ!!何であっちにいけねぇんだよっ!!!」
犬夜叉は井戸の前でどかすかと暴れていた。
「犬夜叉・・・。少しは落ち着きなさい。お前、暴れた拍子に井戸を壊したらもともこうもないだろう」
「うるせーーーッ!!弥勒、ならおまえ、井戸、なおしてくれんのかよッ!!」
犬夜叉、完全にだっだこ状態・・・。
「あー・・・かごめ様がいかに犬夜叉の暴走の抑制剤になっていたのかがわかりますねぇ・・・」
「そうだね・・・。かごめちゃんのありがたみがわかったんじゃないのー??」
「だあああ!!うるせーーー!あっちにいきやがれーーーっ!!」
弥勒と珊瑚、犬夜叉に追い返される。
「くっそーーーッ!!!」
ドカッ!!
井戸の淵を叩く犬夜叉・・・。
かごめがとなりにいない・・・。ただそれだけがこんなに寂しくてイライラするなんて・・・。
自分でも子供っぽいとは思うが・・・。
たまらない。この井戸が使えないと言うことは・・・かごめにもう会えないということ・・・。
“かごめに会えない・・・??”
“かごめがいない・・・?”
。かごめは自分の側にいるのが“当たり前”・・・。かごめがいる場所が自分のいる場所だとずっと信じてきた。
かごめがいないという現実を感じたことがない・・・。
風が吹く・・・。
かごめがいたなら、きっと風の匂いも優しい匂いになるはずだ。
いつも横に、自分の背中にあった温もり・・・。
今は・・・なにもにおわない・・・。
(かごめ・・・)
いつの間にか日が暮れて、辺りは暗くなっていた。
犬夜叉は暴れるにも疲れたのか小屋の屋根の上でぼうっと寝転がって月を見ていた。
(はー・・・。かごめ・・・)
黄色い月がかごめに見える。
この間・・・かごめが一人になりたいと言って自分の側を離れた時。
かごめはいつも自分の気持ちと向かい合おうとしている・・・。それなのに俺は・・・まだ、迷ったり悩んだりしてる。
「・・・」
ずっと一緒にいると約束したあの日。
でも『ずっと』という永遠は・・・ない・・・。
でもかごめはちゃんと知っている。
桔梗の事こと・・・。
奈落の事・・・。考えなきゃならない事は山ほどあるけど、今は・・・
今は何も思い出せねぇ。ただ、ただ・・・
かごめに・・・会いてぇ・・・
気持ちが抑えられない。
息が詰まるほどに・・・。
ガサガサッ!!
草の揺れる音。
犬夜叉はかごめが来たのではないかとすぐさま井戸へと直行したが・・・。
「ちっ・・・。何だよ!」
蛇だった。
犬夜叉は再び井戸の底を覗く・・・。
いない。かごめはいない。
「・・・。くっそ・・・チキショーーーーーーーーーーーっ!!!」
かごめ、かごめ、かごめ・・・。
会いたい、会いたい、会いたい・・・・。
会いたくて気持ちが爆発する。
会いたい・・・・・・・ッ!!!!
「う・・・ひっく・・・。犬夜叉・・・」
「!?」
微かに・・・井戸の奥底からきこえてくる声。
犬夜叉はバッと井戸を覗くがかごめの姿ない。
「犬夜叉・・・。どうしよう・・・井戸が・・・つかえなくなっちゃった・・・うっ・・・」
声とともに少しずつ・・・かごめの姿がうっすらと現れてきた!
「かごめーーーっ!!」
井戸に犬夜叉の声が響き渡る。
「犬夜叉ッ!?」
かごめの姿がはっきりと現れ、二人は・・・3日ぶりに再会した。
井戸そこから犬夜叉を見上げるかごめ・・・。
「犬夜叉・・・」
「かごめ・・・」
やっと会えた、やっと声が、匂いが、戻ってきた!
かごめはゆっくりと井戸を上がってきた。
「・・・。かごめ・・・」
「・・・。う・・・ひっく・・・うっ・・・うわぁ・・・」
かごめは突然座り込んで泣き出した。
「なっ・・・。何泣いてんだよッ・・・。おいっ・・・か、かごめ・・・ッ」
「だって・・・だって・・・もう二度とこっちに戻ってこられないとおもッ・・・て・・・うっ・・・。よかった・・・」
「な、泣くなって・・・」
犬夜叉、オロオロしながら、自分の着物でかごめの涙を拭う。
「ごめん・・・。なんかホッとしちゃって・・・」
「い・・・いや・・・」
「でもホントに戻ってこられてよかった・・・。だって・・・あの井戸があたしとあんたを繋ぐものだから・・・。あたし・・・ずっと井戸の中で・・ないちゃってた・・・」
(俺は・・・井戸の前で暴れていたけど・・・)
かごめは犬夜叉の胸に顔を寄せた。
「・・・。だめだね・・・。たった3日だけ離れてただけなのに・・・。あんたに会いたくてたまんなくて・・・。寂しかった・・・」
「・・・」
(俺だって・・・)と言いたいが犬夜叉、土壇場で素直になれない。けど、犬夜叉は言葉の変わりにかごめを優しく強く抱きしめる。
「・・・。ごめん犬夜叉。やっぱしあたし・・・あんたから離れられないみたい・・・」
かごめのその言葉に犬夜叉、心臓の奥がぽうっと熱くなった。
(離したくねぇ・・・)
自然に犬夜叉はかごめを強く、強く、強く・・・痛いくらいに抱く。
「・・・」
かごめも痛いけど、ずっと・・・抱きしめられていたい・・・。
会いたかった、会いたかった、会いたかった。
離れられない時間がどれだけ大切か・・・。分かった。思い知らされた。
だから・・・全部の魂で抱きしめたい・・・。
一緒にいられる時間を・・・。