悪魔だろうが妖怪だろうとこの魂を売ってでも手に入れたい魂が俺にはあるのだから・・・。
「きゃ〜いいお天気ねー♪七宝ちゃん」
「そうじゃの♪格好のきのこ狩り日和じゃ」
ぽかぽかとした太陽の下もと、かごめと七宝は近くの森まで今晩の夕飯のおかずのきのこや山菜を採りにきていた。
「オラ、今晩の晩飯はやはり、きのこ汁がいいのう」
「楓おばあちゃんに昨日の夕飯抜きだったもんね♪今日は私が作ってあげるよ」
「わーい♪」
夕飯抜きにされた七宝は今日は何が何でもきのこ汁を食べようと、必死に食用のきのこを探した。
「あ、これも食べられるやつだわ」
かごめもせっせときのこをかごの中にきのこを入れていく。
「!?」
「どうしたのじゃ?かごめ?」
「今・・・四魂のかけらの気配が・・・」
しかし、辺りの様子をうかがうが、誰もいない。
「気のせいかしら・・・」
かごめがそう言って再びきのこをとろうと、しゃがんだ瞬間!
背後にゾクリと邪気を感じた!!
「きゃああッ!!!!」
そして土の中から長く伸びた両手が、飛び出し、かごめの両足をつかんだ!!
「クックックッ・・・。こいつが桔梗の“生まれ変わり”か・・・。確かによく似てやがる・・・」
「だ・・・誰ッ!?」
この声・・・。この異様な空気・・・。
不適な笑みを浮かべた無双が茂みの奥から現れた。
「む・・・無双!?どうしてあんたがここに・・・!?」
無双は奈落の体の中に再び取り込まれた筈・・・。
「かごめ・・・とかいう名だったな。奈落の意識の中でお前の事知った・・・。お前にゃ犬夜叉をおびき出す餌になってもらおうか。ふっ・・・。心配すんな。お前は曲がりなりにも桔梗の一部だからな・・・。丁重に扱ってやるからよ・・・」
その言葉とは裏腹に、かごめの両手を掴んでいる無双の手はキリキリとかごめの肌に食い込んでいる。
「し・・・七宝ちゃん逃げて・・・」
「か・・・か・・・かごめぇ・・・」
がくがくと足を震わせる七宝。うるうるである。
「そこの子狐妖怪、犬夜叉に伝えな。かごめを救いたければ1秒でも早く来なってな。でねーとこの女の魂はすべて俺のもんにしちまうってな・・・。くっくっくっ・・・」
そう七宝に言い渡すと、かごめと無双の姿は森の奥へと消えていった・・・。
「・・・う・・・うわああんッ!犬夜叉ーーーー!!」
大泣きの七宝、一直線に楓の小屋へと走っていった・・・。そして、無双の言葉通りに犬夜叉に告げる七宝。
「・・・。あ・・・あの野郎・・・。かごめにまで・・・」
犬夜叉の拳が怒りでガクガクと震えている。
その様子を見て、七宝は犬夜叉に抱きついた。
「お、お、オラ・・・かごめを助けられんかった・・・。すまんーーーー!犬夜叉ーー!」
「・・・。かごめ・・・待ってろ・・・!!すぐに行く・・・ッ!!かごめえッ!!」
ガタン!!
犬夜叉は謝る七宝にも目もくれず、すぐにかごめの跡を追った!
「・・・。うわあん・・・。犬夜叉が怒っておるんじゃ〜」
「違うよ。七宝」
大泣きの七宝を優しく抱き上げる珊瑚。
「犬夜叉は今、かごめちゃんを助けたい気持ちでいっぱいなだけよ・・・」
「ほ・・・ホントか?」
「うん・・・。あとは犬夜叉にまかせよう・・・。ね?」
七宝は目をこすって小さく頷いた。
「やれやれ・・・。やりきれないですな・・・。かごめ様も犬夜叉も・・・。昔の因縁がいつまでも絡みついて・・・危ない目に・・・」
「・・・。無双程執念深い奴はおらんからな・・・。それがかごめにまで・・・。ワシは時々かごめに本当に申し訳なく思う・・・。桔梗ねえ様の生まれ変わりという運命だけで危険な目にあわせてしまって・・・」
「楓様・・・」
そして・・・微妙で苦しいほど切ない恋の糸まで絡んで・・・。
いつか・・・この“因縁”から犬夜叉もかごめもそして桔梗も解き放たれる時がくるのだろうか・・・。
楓は以前かごめが言った言葉が浮かぶ。
“もつれた糸は・・・一本一本ゆっくり解いていくしかない・・・。でも、きっとその糸の向こうには笑顔が待ってるってあたしは信じたい・・・”
「犬夜叉・・・。かごめを絶対に救ってくれ・・・」
ポチャン・・・。ポチャン・・・。
暗闇の天上から、冷ややかに水がしたたり落ちる。
「う・・・」
かごめが目を開けると目の前に無双が座っている。
「ようやくお目覚めか・・・。お前の気絶した顔・・・。なかなかよかったぜ・・・ククク・・・」
「なっ・・・。ここどこ・・・痛ッ!」
動こうとしたかごめの全身に・・・太い草の茎が絡まり締め付ける。
「さすが、桔梗の生まれ変わり・・・。自分の危機にもいい度胸してやがるな・・・」
「痛がる顔もいいが・・・やはり桔梗の一部にすぎんな・・・。お前じゃ満たされねぇ・・・」
「あたしをどうする気!?」
「どうする気ィ?お前はどうされたいんだ・・・?ハハハ・・・。心配すんなお前はあいつをおびき出す餌にすぎん・・・。俺が欲しいのは本物の桔梗の魂だけ・・・。絶対に手に入れてやる・・・。でもその前にあいつを血祭りにしてやらねぇとな・・・!!」
ドカッ!!
無双は犬夜叉への敵意むき出しに岩を拳で割った。
「・・・」
かごめはその執念深さに恐れを感じる。その自分勝手な執念深さが・・・桔梗と犬夜叉の運命を変えたんだ・・・。
「・・・」
「・・・。なんだ・・・?その目は・・・?」
「あんたのせいで・・・あんたの勝手な思いのせいで桔梗は死んだんでしょ・・・。犬夜叉を恨むなんて筋違いよ!!」
「ふっ・・・。お前はどうなんだ・・・?犬夜叉は今でも桔梗を忘れずにいる・・・。嫉妬と憎しみで心が煮えたぎらないのか・・・?俺は桔梗が死んだのにあいつが生きてると思うだけでこの全身が嫉妬に埋め尽くされる!!」
ドカッ!!!
再び、無双は側の岩をこっぱみじんに割った!
恐ろしいまでの怒りと憎しみ・・・。
怖い・・・。怖くてたまらないけど・・・。
あたしはどんなことがあっても犬夜叉を信じるって決めたんだ・・・!
あたしは・・・負けない!
「・・・。ふふ・・・ふふふ・・・」
「?何が可笑しい・・・?」
「あんたと一緒にしないでよッ!!そりゃ・・・あたしだって嫉妬したこともあったけど・・・。でも、でも・・・それ以上に大切な事があたしにはあるわ!!犬夜叉に生きて欲しいっていう願いがッ!!だからあたしはあんたになんか負けない!!犬夜叉も負けないッ!!」
かごめは怒りを込めて無双を見た。
ドカッ!
「!!」
かごめの顔すれすれに・・・拳を壁にぶつける無双。
「・・・。いいねぇ・・・。その顔だ・・・。やっぱりお前は桔梗の生まれ変わりだ・・・。その人を射抜くような顔が目が・・・俺は欲しかったんだ・・・」
無双はそう言いながらかごめの髪に触れる。冷たい感触が伝わる。
「さわんないでよッ!!あんたが何したって・・・あたしは絶対あんたに屈しないわ!!犬夜叉だって!!」
「・・・。威勢がいいのはいいが・・・犬夜叉が見たらどう思うだろうな・・・ククク・・・」
その時!無双は凄まじい妖気を感じた!
「かごめぇぇえええーーーーーーーっ!!!」
ドカンッ!!!
洞窟の壁を鉄砕牙で突破して、犬夜叉登場!!
「犬夜叉!!」
「かごめッ!!」
かごめはホッとした。しかし、かごめの前には無双が立ちはだかる。
「・・・。おせぇじゃねぇかよ・・・。犬夜叉。今、お前の今の女と仲良く話してたところだぜ。“仲良く”な・・・クックック・・・」
「う・・・うるせぇ・・・ッ!!てめぇッ!!今すぐかごめから離れろッ!!」
「・・・。嫌だといったら・・・?」
「てめぇをこの場でぶっ倒すッ!!」
犬夜叉は鉄砕牙をグッと構えた!
「ふッ・・・。よほどこの女が大切らしいな・・・。じゃあ桔梗はどうなるんだよ・・・!!桔梗はよおッ!!!」
ザンッ!!
無双は腰の刀を犬夜叉に向かって斬りつけた!!
犬夜叉はすんでの所でよけた!
「くくく・・・。残念だったな・・・。はじめはこの女はだたのお前を呼び出す餌だったが・・・俺は気が変わったぜ・・・。桔梗のもう一つの魂・・・。この女の魂も・・・俺のものにするッ!!」
「なっ・・・」
「度胸がすわっているとこなんか・・・桔梗とそっくりでな・・・。ゾクっとするんだぜ・・・」
無双はそう言ってかごめの頬に静かに触れた。
それを見た瞬間、犬夜叉全身の血が逆流するほどにカッと熱くなった。
「離しやがれ・・・。その手を・・・。今すぐに・・・。かごめに・・・触るんじゃねぇぇえええええーーーーーッッ!!!!!!」
ザンッ!!
犬夜叉は無双に斬りかかった!!
しかし、鉄砕牙の刃は無双の腕に食い込むが、すぐに再生していまった!
「ククク・・・。そうだ、そうだ・・・。熱くなれ・・・。それがお前の命とりになるッ!!!」
ザンッ!ガッ!!
犬夜叉と無双は壮絶な斬り合いをする!
しかし、かごめは何かが変だと感じた・・・。
斬り合いをしながら・・・無双はまるで犬夜叉をどこかへと連れ込もうとしているような・・・。
「!!」
洞窟のずっと上に邪気の固まりを見つけたかごめ!
見ると、無双と犬夜叉はそこへ一直線に上へと上がっていっている。
(もうしかして無双の奴・・・あそこへ犬夜叉を誘導してるのッ!?だからわざと犬夜叉を怒らせて・・・!)
無双のたくらみを見抜いたかごめ!
「犬夜叉ーーーー!!」
かごめは叫んだ。しかし、完全に犬夜叉は頭に血がのぼっているらしく気が付かない!
「犬夜叉ーーーー!!」
(かごめ・・・!?)
「どこ見てやがるッ!!!」
ザンッ!!
「ウッ・・・!」
無双の刃が犬夜叉の頬を斬りつけた!
「犬夜叉!!!」
(かごめ・・・!)
犬夜叉の血を見てかごめはまるで自分も斬りつけられた様に痛みを感じた。
「犬夜叉ーーー!!上を・・・上を見て!!無双は・・・あそこに犬夜叉を誘ってるのっ!!気を付けて!!!」
犬夜叉は頭上を見た。
恐ろしいくらいの邪気が黒い雨雲の様に充満している。
「・・・。てめぇ・・・。俺を挑発して・・・」
「挑発・・・??さあ・・・しらねぇなぁ・・・。さっきのは全部本気だぜ・・・?ふっ」
「く・・・ふざけんじゃ・・・。ふざけんじゃねぇええええッ!!!風の傷ッ!!!」
ドガガガガッ!!!
犬夜叉の風の傷を放ったがかわされる!
「どこ狙ってるんだ・・・?え?俺はここだぜここ・・・?」
「・・・」
犬夜叉はかごめをじっと見る。
何かを伝える様に。届くように・・・。
(うん・・・わかった犬夜叉・・・)
そしてかごめに届く・・・。犬夜叉の気持ちが・・・。
そして、かごめは何かを覚悟したように深く頷く。
「いいよ!犬夜叉!!」
「行くぞ!!かごめッ!!!風の傷ッ!!!!」
なんと、犬夜叉はかごめ目がけて風の傷を放った!!
「なっ・・・」
風の傷の渦でかごめの姿は見えない!!
「犬夜叉!?てめー何を企んで・・・ッはッ・・・」
「かごめ!今だッ!!」
犬夜叉の声と共に、風の渦の中からかごめの破魔の矢が無双めがけて飛んでくる!!
「はッ・・・」
無双は矢をかわされたが、頭上の邪気の固まりを矢は見事に浄化し、うち消した!!
傷だらけのかごめはフラッと体の力が抜ける。
「かごめ・・・!」
それを全身で受けとめる犬夜叉。
「ごめん・・・。犬夜叉・・・。はずれちゃった・・・」
「しゃべるなッ!!今は・・・!」
しっかりと抱きしめ合う二人。
強く、強く、どんな運命もうち勝つくらいに・・・!
「な・・・。お前ら一瞬のうちに互いの意図を確認しあったってのか・・・」
犬夜叉は、風の傷を、かごめの縛られていた横の壁の方へと放った。その風圧で、かごめが縛られていた茎を消し去り、かごめはすぐに無双もろとも天上の邪気に向かって破魔の矢を放ったのだった!
「・・・。俺は誰にも負けねぇッ!!守りたいものが・・・大切なものが側に有る限りッ!!!」
「・・・。どいつもこいつも・・・。胸がむかつく様なセリフばっか吐きやがって・・・ッ!!俺はそういうセリフが嫌いなんだよ・・・ッ!!!もういい。二人まとめて片づけてやるッ!!覚悟しやが・・・うッ!?」
二人に攻撃しようとしたとき、無双の体に異変が・・・!
「な・・・。この感じは・・・。奈落の奴か・・・!!」
「そう。とっと奈落が体の中へお帰りってさ」
そこへ、神楽登場!!
神楽の手にある壺から黒い煙がでてきて無双の全身を蛇の様に包んだ。
「うおおおッ・・・!ちきしょうッ!!また、奈落に取り込まれる・・・ッ!!!」
蛇の様な煙と共に無双は神楽の壺の中へとスウッと消えていった・・・。
「ったく・・・。奈落から逃れられると思ってるのかい・・・?無駄なんだよ・・・。私もそうだけどね・・・」
神楽は複雑な表情を浮かべてその場を去っていった・・・。
「あ・・・犬夜叉。犬夜叉こそケガ・・・大丈夫?」
「俺よりお前の方がひでーじゃねーかよ。ったく・・・。いっつも無理しやがって・・・」
「なによ!あんたこそ相変わらずカカして無双の罠にかかりそうだったじゃないの!私が気が付かなかったら・・・」
「んだとー!?」
「何よ!」
結局ケンカを始める二人・・・。でも・・・。
お互いが無事で嬉しい・・・。お互いが生きていてくれて・・・。
「・・・。でもさっき・・・よくわかったな・・・。俺の考えが・・・」
「・・・うん・・・。なんとなく・・・伝わったから・・・」
「俺も・・・かごめならなんとなく・・・きっとわかると思ってた・・・」
本当は何となくなんかじゃない、確かに伝わった。確かに・・・。
「かごめお前・・・」
「何・・・?」
「俺がこねぇ間・・・。無双と何話してたんだ・・・」
「・・・。何よ。こんなときにまで妬いてるの?」
「ばっ・・・。んなことじゃねぇッ!!んなことじゃねぇけど・・・。あいつの思いはなんつーかこえーとこあるから・・・」
「・・・」
確かに・・・。
無双の桔梗への執着心はすごいものがある・・・。その心がかごめにまで及ぶかと思うと・・・。
背筋が凍る。かごめの頬に触れた瞬間、体の温度さえ忘れるほどゾッとした・・・。
「無双・・・鬼蜘蛛の心は今でもずっと・・・糸を張って桔梗を待ってるんだね・・・」
待っていても飛んでこないから・・・。だから、鬼蜘蛛は妖怪に魂を売った・・・。
「何だよ。お前、あいつの肩もつのかよ?」
「ううん・・・そうじゃないけど、それを利用した奈落が・・・ホントに許せなくて・・・!!奈落っていう糸が・・・沢山の人達の命と運命を変えてしまったから・・・!!」
改めて奈落への怒りをあらわにするかごめ・・・。
そんなかごめを見て、やはり犬夜叉は思う・・・。
「おめーはやっぱり・・・つえーよな・・・」
「・・・?」
「自分が危険な目に遭ってるつーのに・・・。人のことばっか心配して・・・そんなお前だから俺は・・・好きに・・・」
「え?何。犬夜叉最後の方きこえなかった・・・」
「ばッ・・・。お、俺は何も言ってねぇッ!!」
「でも、最後の方だけが聞こえなかったよ」
「う・・・うるせえ!俺は何も言ってねぇッたら!!」
照れまくる犬夜叉。しかし、その顔には聞こえなかった“二文字”の気持ちが溢れている。
「残念・・・」
「けっ・・・」
ふわり。
かごめの両手が犬夜叉の顔と肩をつつむ。
まるで寒い日にする暖かなマフラーみたいに・・・。
「かごめ・・・」
「今更だけど・・・。これからも頑張ろうね・・・。みんなで一緒に・・・」
「・・・。バカ野郎・・・。みんなと・・・お前がいるから・・・頑張れるんじゃねぇか・・・。お前がそばにいてくれるから・・・俺は・・・」
その先の言葉はいらない。
そこにいてくれることこそが、すべて。
何があっても乗り越えられる・・・そんな気がする・・・。
きっと・・・それは絡まった糸さえも優しく解きほぐしてくれる・・・。
かごめという名の希望が・・・。
犬夜叉はその優しい手を頬に当て、精一杯かごめに伝えた。
自分の気持ちを・・・。
その証拠が犬涙ですわ♪あれは何度読んでも、感動しますね・・・