しかし、蛇骨との対決はこれからだ!
「一人で熱くなっちゃって・・・。でもそんな顔、俺は好きだねぇ〜♪でも、やっぱり苦しむ顔が一番さッ!!」
「なっ・・・」
なんと、落ちた蛇骨刀から2枚の歯がでて、いきなり犬夜叉を襲った!!
犬夜叉はそれをかわし、ジャンプして鉄砕牙で蛇骨に斬りかかった!!
カキーンッ!!
鉄砕牙の勢いで蛇骨刀は蛇骨の手から離れ、地面に刺さった!!
「あっ・・・俺の蛇骨刀・・・って!?」
ボカッ!!!犬夜叉はいきなり蛇骨の右頬を2発殴った!
「な・・・何すんだよ!いきなしは卑怯だろッ!?」
「うるせぇんだよ・・・今のはかごめの右手の分だ」
ドカッバキッ!!
犬夜叉は容赦なく2発、蛇骨の懐にお見舞いする!
「そしてかごめの右足と左足の分。そして・・・これがかごめの声の分だあああああッ!!!!」
犬夜叉の怒りの拳は蛇骨の懐に思い切り入った!!!
「う・・・ぐ・・・。きゅ・・・急に強くなっちゃって・・・」
さすがの蛇骨も応えたのかうずくまった。
しかし、蛇骨はスキをついて飛ばされた蛇骨刀を取ろうとした!
しかし、犬夜叉、蛇骨を腕をガッと踏み、阻止!
「まだたりねぇくらいだ・・・。かごめの痛みに比べりゃ・・・!!!」
「女の痛み・・・??そんなもん、どうでもいいじゃねぇかよ。何でそんなに熱くなるんだ?」
「どうでもいいだと・・・??ふざけんじゃねぇよ!!かごめの痛みは俺の痛みだ!!かごめを傷つける奴には俺は容赦しねぇッ!」
犬夜叉は鉄砕牙を蛇骨につきつけた!
「ぐっ・・・。格好いい台詞だこと・・。でも・・・気障やってる場合じゃねぇかもよ・・・?」
「何!?」
ゴゴゴゴ・・・。
突然、洞窟内が揺れだし、天上がみしみしと崩れだした!!
「かごめっ」
犬夜叉はかごめの元へ駆け寄った。
蛇骨、すきをついて、一人、逃げの体勢に。
「蛇骨・・・てめぇ・・・ッ」
「この洞窟もろくてさ、俺たち騒ぎすぎてこわれはじめちまったんな。逃げ道はこの穴しかねぇ。犬夜叉、お前も速く逃げなきゃおだぶつだぜ。んじゃなっ」
蛇骨は一人、ひょいひょいとその細い壁の穴で逃げていった。
その間にも洞窟の壁にひびが入って今にも崩れそうだ!
「かごめっ」
犬夜叉は急いで鉄砕牙でかごめを手かせ足かせを切った。そしてかごめを抱き起こす。
「かごめ・・・っ。すまねぇっ・・・。痛かっただろ・・・。俺がもっと早く来てれば・・・」
「だい・・・じょうぶ・・・。それより早くここから・・・にげ・・・。キャアアアアア!!」
「かごめええッ!!!」
ゴゴゴゴ・・・ガガガガッ!!!!
すごい音と共に地面が真っ二つに割れ、かごめと犬夜叉はその割れ目に落ちてしまった!!
「ぐっ・・・」
すんでの所で、犬夜叉はかごめを抱えて小岩のふちにい手をかけ、ふんばった。
「い・・・犬夜叉・・・」
「たく・・・。ついてないぜ・・・今日は・・・。かごめ、絶対俺から離れんじゃねぇぞっ・・・!」
「で・・・でも」
その時、落ちてきた岩が犬夜叉の手を直撃した!!!
「ぐあああああッ!!!」
「犬夜叉ぁッ!!」
犬夜叉の腕に血が流れる。
「ね・・・。お願い・・・!犬夜叉、あたしを離して・・・!犬夜叉の手が・・・」
「うるせえッ!!たとえ、この手がぶっつれだって俺はお前を離さねぇッ!!」
「犬夜叉・・・」
犬夜叉はギュッと抱えるかごめの体ををしっかりと掴んだ。
「う・・・」
せっかく犬夜叉が元に戻ったのに・・・。
犬夜叉の手から流れる血をみて、かごめの胸をねじ曲げられたくらいに締め付けられる。自分を守ってくれるためにいつも、傷だらけになる犬夜叉。それが辛い。辛い・・・。
犬夜叉の傷はあたしの傷だから・・・。
そんな想いが・・・かごめの瞳をじわりと濡らした。
「お願い・・・犬夜叉・・・。もういいから・・・。もういいから・・・」
かごめの声が震えている。
「バカ言ってンじゃねぇッ!!!お前が生きてなきゃ・・・。お前が生きてなきゃ・・・俺は生きてる意味がねぇんだよッ!!!」
「犬夜叉・・・ッ」
ゴゴゴゴ!!!ドガガガッ!!!
壁に亀裂が走り、壊れ、天上が一片にくずれてきた・・・!
そして、犬夜叉が掴んでいた小岩が今にも壊れそうだ!
「・・・すまねぇ・・・かごめもう・・・」
「犬夜叉・・・。大丈夫・・・。きっと・・・」
「!?」
柔らかい感触・・・。そして甘くて綿菓子の様な香りが犬夜叉の唇に広がる。
かごめは静かに両手を犬夜叉の首にまわすと、安心させるように優しく犬夜叉の唇を塞いだ。
(か・・・かごめ・・・)
犬夜叉の握っていた小岩がバキンという割れ・・・。
犬夜叉とかごめ・・・。ゆっくりと闇へと落ちていく・・・。
まるで・・・。スローモーションの様にゆっくりと底に吸い込まれていく・・・。
落ちていく間・・・。二人は絶対に離れまいと空気すら漏れないほどに激しく、強く、互いの唇を求め合った・・・。
“ねぇ、犬夜叉・・・。あたし達・・・。どこに行くのかな・・・”
“知るか・・・そんなもん・・・”
“そうだね・・・。でも・・・犬夜叉がいるから寂しくないよ・・・“
“かごめ・・・”
“犬夜叉と二人なら・・・何も怖くないから・・・”
“二人なら・・・な・・・”
そして二人は・・・闇の奥底へと消えていった・・・。
目が・・・眩しい・・・。
それに・・・頬が少しくすぐったい。
「え・・・?」
雲母が・・・かごめの頬を静かになめている。
「雲母・・・?」
かごめが目を覚ますとそこは・・・。
清魂草が生えている湖の淵だった。
「あっ・・・。犬夜叉!!犬夜叉はっ!?」
犬夜叉はかごめのすぐ側に・・・。かごめをしっかりと抱きしめている。
「犬夜叉!!犬夜叉!目を開けて・・・!犬夜叉!」
かごめは犬夜叉の体を揺さぶった。
「う・・・。かご・・・め・・・?。俺たち・・・」
「助かったみたい・・・」
「そうか・・・」
静かに起きあがる犬夜叉。
もうすっかり夜が明けていて明るい。
「かごめお前・・・。なんでそんなに濡れてんだ??」
「あんただって・・・。あ・・・もしかして・・・」
そう。二人が落ちた谷底は、この湖とつながっていた。
二人はここまで流れてきたのだった。
「なんだ・・・。あたし・・・正直ホントにもうだめかって思っちゃった・・・」
「けっ・・・。そんな簡単にくたばってたまるか。それに俺・・・はっ・・・」
二人に蘇る熱い口づけシーン・・・。
炎のごとくに照れが二人を襲った。
思わず互いに背を向け合って座る。
(や・・・やだ・・・。おもいだちゃった・・・)
(・・・。かごめの顔がまともに見れねぇ・・・ッ)
犬夜叉はチラッと後ろ目でかごめの方を見た。
するとかごめの手首にくっきり赤く残っている手かせの跡の傷。それに、足首も同じ・・・。
細い、いや、痩せたせいか前より細く見える足首。
犬夜叉はかごめを静かに抱き寄せた。
「犬夜叉・・・?」
「やっぱり・・・。お前・・・痩せた・・・。みんなの所に帰ったら・・・。たらふくなんかうまいもん・・・喰わねぇとな・・・」
「うん・・・」
かごめは深く犬夜叉の胸に顔をうずめる。
心臓の音が聞こえてくる。命の音が。
かごめは思う。
闇に落ちていくとき・・・。二人なら怖くないと思った。犬夜叉と二人なら・・・。
でも・・・。
でも・・・。
「犬夜叉・・・」
「何だよ・・・」
「助かってよかったね・・・。生きててよかったね・・・」
「・・・。おう・・・。生きてて・・・よかった・・・。お前と二人・・・。生きてて・・・。本当に・・・」
二人なら何も怖くないと思った。でも・・・。
やっぱり、生きていたい。
生きて欲しい・・・。
大切な人のために・・・。
湖の水面が優しくきらめく。
清魂草のがいっせいに花びらを広げ、森を、湖を薄紅に染める。
命が咲く、咲く、思い切り咲く。
清く澄んだ魂の花が、まるで生きてるよと二人に伝えるように・・・。