ぼやけて見える青い空とかごめの顔がはっきり見えてきた。
「犬夜叉!」
完全に目を開けると心配そうな顔をしたかごめが・・・。
「・・・。いつのまにかねむっちまったのか・・・」
「あんた・・・。すごくうなされてた・・・。何か怖い夢でも見たの・・・?」
「・・・。夢・・・?」
幼い頃の記憶・・・。
傷つけてしまった友と母・・・。
鮮明な記憶だった。
一番辛かった頃の・・・。
「どうかした?」
「別になんでもねぇよ・・・」
あの雪の中・・・。
寒くて、冷たくて。暗い闇夜に
聞こえた声は・・・。
「犬夜叉?」
手を伸ばして欲しかった温もりは・・・。
こんなに近くに・・・。
触れた桃色の頬の温もりは、記憶の中の雪の冷たさを包み込むようにそっと溶かす・・・。
「?」
かごめは不思議そうに顔をかしげる。
「そうだ。あのね、さっきあんたの鼻の上に白い蝶がとまってたの。何だかどこからかあんたに会いに来たみたいにしばらくとまってた」
白い蝶・・・。
母が好きだと言っていた・・・。
「あ・・・。ほら・・・また来た・・・」
真っ白な蝶。
ふわふわと雲のように柔らかく二人の上を舞うように飛んでいる。
「何だか・・・。喜んでいるみたい・・・」
「・・・」
二人をまるで励ますように、蝶は二人の上を何度も旋回する。
(オフクロ・・・)
“誰かを守るために強くなるのです・・・”
母の言葉の意味が今、本当に分かった気がする。
大切な“誰か”に出会えたから、強くなれた。
守りたい人ができた瞬間から・・・。
「かごめ」
「何?」
「・・・」
たいせつな人がいる幸せを・・・そして噛みしめる・・・。
「別に・・・ねんでもねぇよ・・・」
手を伸ばせばそこに・・・。
お前がいることを・・・。
噛みしめる・・・。