「どうしてこれを・・・!!」
「修太朗君の叔母さんから聞いたの・・・。修太朗君がずっとこの櫛を探していたって・・・。大切なお母さんの櫛・・・。でもよかった・・・。燃えてなくて・・・」
「もしかして、お姉ちゃん・・。あの焼けこげた家の中を探したのか・・・?」
「そうだよ。こんなちっこいもんのために朝までかかって・・・」
犬夜叉、かなり自慢げに言う。
「犬夜叉、おすわり」
「ぐわッ!」
自慢げな犬、おとなしくなるの図。
「・・・。な・・・なんだよ。そんなこと誰も頼んでないぞ・・・。櫛が見つかったって・・・。母ちゃん達は帰ってこないんだ・・・!」
「・・・。うんそうだね・・・。でもこの櫛・・・。修太朗君の所へ還りたがってる気がしたの・・・。だってお母さんがすごく大切にしていたと思うから・・・」
小さな手をそっとかごめは包む・・・。
「大切にしてあげてね・・・。お母さんの櫛・・・」
「・・・」
修太朗はかごめの服に付いたすすに気がつく。
焼きただれたあのがれきの中からこれを見つけるなんて・・・。
どんなにすすくさかっただろう。
焦げ臭かっただろう。
かごめの手にもまだ少しすすがついている・・・。
「お姉ちゃん・・・。真っ黒だね・・・」
「えへへ・・・。顔は洗ったんだけど。でももっと真っ黒なのがそこに・・・」
かごめが指さす方向にまだ、目の淵が黒い犬が一人・・・。
「くくく・・・」
「な、なんだよ!かごめ・・・」
「犬夜叉あんた、顔洗ってきた方がいいよ。うふふ・・・」
「な・・・なんだよ!!コラ!」
犬夜叉が手で顔を乱暴にフキフキしたものだから、あらまぁ、もっと真っ黒に・・・。
「うふふふ・・・。犬夜叉ったら・・・」
「キャハハハ・・・」
「え・・・」
修太朗が笑った・・・。
一瞬だけど微笑んだ!
「修太朗君今・・・」
一瞬、微笑んだ。しかしすぐにまた消える・・・。
「かごめー!犬夜叉ー!そろそろ出発じゃぞー!」
七宝が呼んでいる。
「じゃあ・・・。行くね。修太朗君」
「・・・」
修太朗は背を向けたまま・・。
「修太朗君元気でね・・・」
静かに出ていく犬夜叉とかごめ・・・。
後ろ姿をちらっと修太朗は見つめていた・・・。
「おい・・・。かごめ。行くぞ」
「うん・・・」
修太朗の家をじっと見つめるかごめ。
一瞬だったけど、修太朗の笑顔は見られた・・・。できたら・・・。もう一度見たかった・・・。
「おーい!!」
向こうから、修太朗が走
ってきた。いきを切らせて・・・。
「はぁはぁ・・・」
「ど・・・どうしたの?修太朗君・・・」
「・・・」
修太朗は少しもじもじしてから一言大声で言った。
「おかあの櫛見つけてくれて・・・ありがとうな!!」
「修太朗君・・・」
「そっちの犬の妖怪も・・・。世話掛けたな!じゃあな!!」
照れくさそうにそう言うと修太朗は家へと戻っていった。
「な、なんだ!あの生意気な態度は!!」
「犬夜叉、人のこと、言えんじゃろー」
バキ!
「うわあん・・・」
七宝、とばっちり・・・。
「でも嬉しいな・・・。わざわざ言いに来てくれたんだ・・・」
本当に嬉しい・・・。
やっぱりほんの一瞬だったけど、さっきみた修太朗の笑顔は本物だったんだ・・・。
「お前が信じたからだろ・・・」
「え?」
「お前があのガキ信じたからだろ・・・」
照れくさそうにそう言う犬夜叉。
「うん・・・ 。でも犬夜叉そうでしょ?修太朗君を信じたから・・・」
「・・・。けッ!!」
信じた・・・。かごめが信じたから・・・。犬夜叉も・・・。
信じる事の大切さをかごめが教えてくれたから・・・。
「犬夜叉・・・」
「何だよ」
「犬夜叉は大丈夫だよ・・・。誰より命の尊さと重みを知ってるから・・・。だから、犬夜叉は強くなれる・・・ね?」
「かごめ・・・」
かごめはじいっと犬夜叉を見つめる・・・。
「うぉほん!」
七宝がわざとらしく咳払い・・・。
「いい雰囲気の所悪いんじゃが・・・。そろそろ出発したいんじゃが・・・?いいか?」
バキ!
七宝、今日2発目・・・。
「ガキが妙な気働きさせんじゃねぇ!!」
「ちょっと!!七宝ちゃん殴るのやめなさいよ!!乱暴すぎるのよ!あんた!」
「なにぃ〜??」
「何よー!!」
またまた始まりました。夫婦ゲンカ。弥勒と珊瑚はちょっとあきれ顔で見ております。
「あれがあの二人の“信頼しあっている”証拠なのですな」
「そうだね。あれが一番二人らしい・・・。って弥勒様、妙なことしたら容赦しないからね」
弥勒、珊瑚のお尻にあと3pだった・・・。
「はい・・・。これが私達らしいですね・・・。トホホ・・・」
みんながみんならしくいられる・・・。
それができるのは“信頼”があるから・・・。
何物にも代え難い仲間と・・・。
そして大切な人と心がつながっている・・・。
信頼という絆がそこにあるから・・・。
かごめが信じることを教えてくれた。
信じることの大切さを教えてくれた・・・。
だから俺は・・・。
強くなれたんだ・・・。
かごめが信じてる・・・。
それだけで心の底からチカラが沸いてくる。
「ん?なあに?何か言った?犬夜叉」
「なっ何でもねぇよ!」
「気になるな、こら!白状しなさい!」
「あ、こら!人の背中で暴れるな!」
何時までもこのぬくもりが側にあることを信じて・・・