青い空に風船が飛んでいく。
かごめと七宝が河原で風船を飛ばしていた。
「おい!おめーら何やッてんだ」
ちょっとご機嫌斜めな犬夜叉。自分だけのけものにされたのが気に入らないのか。
「見て分かるでしょ。風船とばしてるのよ」
「ふうせん??なんだそりゃ」
「あたしの国の子供のおもちゃよ。ほら、綺麗でしょ。こうして膨らませるのよ」
かごめは赤い風船に息を吹き込む。
犬夜叉はそれをじっと見つめる。
「そ、そんなんが面白いのか」
「うん。ほら、あとはあんたふいて」
吹いている途中の風船を犬夜叉に渡すかごめ。
「・・・」
「??どうかした?そんな難しくないよ」
犬夜叉、何故か赤面・・・。
(こ・・・これじゃあかごめと間接的にく、口づけを・・・)
「犬夜叉、あんた何か顔、赤いわよ?」
「う、うるせえッ!何でもねぇッ!」
「なんじゃ犬夜叉。お前が吹かんのならワシが・・・」
ゴン!!
犬夜叉、七宝からかごめ風船を守る。
「これは俺が吹く!!」
と、犬夜叉は思いきり空気を入れた。
そして風船の口をしばる。
「赤色の風船か・・・。これは犬夜叉だね」
「あん?」
「犬夜叉のイメージする色は赤だから・・・」
かごめはそうっと風に風船を飛ばした・・・。
風船は勢いよく舞い上がるがすぐ落ちてかごめの背中にちょこんとのっかった・・・。
「きゃははは。本当に犬夜叉みたいじゃの。かごめの後ろにひっついてる!」
ゴン!!
七宝、今日2発目をくらう。
「うるせえ!!じゃあ弥勒や珊瑚は何色なんでい!!」
「そうだな・・・。弥勒さまは・・・。落ち着いているから“青”かな・・・。珊瑚ちゃんは・・・。強くて優しい・・・黄色かな・・・」
かごめはその色の風船を膨らませ、また、飛ばした。
青の風船はヒョロヒョロとあっちいったりこっちいったり・・・。それを追いかけるように黄色の風船も飛ぶ。
「きゃはは。確かに弥勒と珊瑚じゃな。女ひっかけに行く弥勒の跡を追いかける珊瑚みたいじゃ」
そして、最後に残った風船。
「おい・・・。じゃあ、その最後の色がお前か?」
「さぁ・・・。どうかな。あたしに似合う?この色・・・」
優しい色・・・。
暖かい色・・・。
桃色の風船・・・。
かごめにぴったりだと思う犬夜叉。
「さ・・・。さあわからねぇ!!」
「ふふ・・・。じゃあ、飛ばすね」。
ふわ・・・ふわり・・・。
不思議に犬夜叉の周りの踊るように飛ぶ・・・。
犬夜叉を包むように・・・。
“そばにいるよ・・・”
そうつぶやくように・・・。
しかし、 桃色の風船はゆっくりと風に乗りゆっくり犬夜叉から離れ行く・・・。
「何だかかごめの風船、犬夜叉に“さようなら”と言っておるみたいじゃな・・・」
七宝の言葉通り、風船は名残惜しそうに犬夜叉からふわりと離れていく・・・。
風が少し強まり、風船は高く舞い上がった。
高く、高く、高く・・・!
犬夜叉から離れる・・・。
犬夜叉から・・・。
「えッ!?犬夜叉??」
犬夜叉は突然、飛び上がり、空の風船を夢中で掴んだ。
かごめの風船・・・。
「犬夜叉・・・。一体どうしたの?」
「う、うるせえ!お、俺はこれが気に入ったんでい!!だからどこにもやらねぇッ!」
「・・・。犬夜叉・・・」
「も・・・。文句あっかよ!」
まるで、子供がおもちゃを後ろに隠すように、犬夜叉は風船を離さない。
「ふふ・・・。ふふふ・・・」
「な、笑うな!!」
「うふふふ・・・」
「だから笑うなって・・・!!」
子供のような犬夜叉。
だだっ子みたいに。
我が儘でこどもっぽいけど、だけど大好き。
犬夜叉らしい。
だから大好き。
かごめは何だか嬉しかった。
「犬夜叉」
「な、なんだよ・・・」
「その風船・・・。ずっと持っていてね・・・。ずっとそばに置いてあげてね・・・」
かごめは優しく微笑む・・・。
「・・・。お・・・おう・・・。絶対・・・。割れない様に傷つけない様に守るからよ・・・」
「うん・・・」
かごめの風船・・・。
あたたかく、柔らかく・・・。
ふわ ふわ ふわり
となりいて。
気がつくといつもとなりにいて。
何も言わず、ただ、そばにいる。
それが心地よく・・・。
どうか・・・
割れないように
傷つかないように
だから風に乗らないで。
俺のそばにいて。
飛んでいかないで・・・。
離さないから・・・。
割れないように、傷つかないように・・・。
ふたりの優しい気持ちがつまって、思い出がつまっている風船・・・。
永遠に膨らんでいて。
希望と一緒に・・・。
風船が飛んでいく、その時は・・・。
俺も一緒に飛んでいく。二人の未来へ・・・。
ふわ、ふわ、
ふわり・・・。
かごめの風船。
どうか割れないように、傷つかないように・・・。
俺のそばにいて。強い風が来ても絶対に離さない・・・。
割れないように、傷つかないように・・・。