私はそう決めた。
いつか、犬夜叉が桔梗の元へ行くとわかっていても。
私が今一番したいことだから。
犬夜叉に生きていてほしい。
私が一番望むこと。
でも桔梗は犬夜叉と共に 闇に落ちることを望んでる。
桔梗―。
犬夜叉の後を追って四魂の玉と共に死んだ・・・。
もしも私が桔梗だったらどうしただろう・・・。桔梗と同じことをしたのかな・・・。
犬夜叉への憎しみと想いを秘めたまま後を追ったかな・・・。わからない・・・。だって私は桔梗ではないから。
私、まだ、こころのどこかで桔梗に嫉妬してるかもしれない。
命までかけて犬夜叉を求めた桔梗にはかなわない。
犬夜叉にとって桔梗はずっと忘れられない人。彷徨う桔梗を救いたいと想ってる。
私もそう思う・・・。だってそれは犬夜叉を救うことになるから・・・。
犬夜叉が生き続けることができるから。
笑って怒って泣いて・・・たくさんたくさん生きてほしい。
犬夜叉・・・私、そのためだったら何だってするよ。辛いことがあってもがんばるよ。
犬夜叉が好き。犬夜叉が好きな自分も好き。それが今の私の全てだから・・・。
だからずっと・・・私は犬夜叉のそばにいる。そばに居続けるからね・・・。犬夜叉・・・。
やわらかくて・・・あたたくて・・・優しく・・・そして愛しくて・・・。
犬夜叉はそんなかごめの声が夢の中でした気がした。
母親が子供をそっと抱きしめるように傷の痛みを包み込む・・・。
気が付くと傍らには犬夜叉の手を握ったままかごめが横になって眠っていた。
妖怪との闘いで深い傷をおった犬夜叉を一晩中看病したかごめ。
(かごめ・・・一晩中・・・俺のそばに・・・?)
あの夢の中声は本当にかごめの声だったのか・・・。
(・・・。弥勒達は・・・起きてねぇな?)
犬夜叉はそれを確認するとそっとかごめの頬に触れた。
桔梗の事は忘れてねぇ・・・。忘れちゃならねぇけど・・・。
けど、桔梗・・・かごめがいなけりゃ俺は・・・奈落達と戦えなねぇんだ。
戦う力が湧くかねぇ・・・。
あったけぇな・・・。
いつからかこの温かさに俺は・・・。
ただ・・・ただ・・・この温もりが・・・とても恋しい・・・。
「なあ、弥勒。犬夜叉はかごめに何をしているのじゃ?」
「!!」
「大人になったらきっといつかわかりますよ。七宝そなたも男なら」
思いっきりすにもどる犬夜叉。
「結局あんたも法師様と同類だったのね」
珊瑚の白く冷たい視線がどこからともなく。
「こ・・・こんな奴と一緒にすんじゃねぇッ!お、おらぁ、か、かごめの間抜け面のハエをしとめただけだっ!」
「悪かったわね。間抜け面で」
眠そうにかごめはめをこすっている。
「人がどれだけ心配したとおもってんの?もう!」
少しおどおどしながらかごめをのぞき込む犬夜叉。
「な、なんだよ。また泣くのか?泣くのが好きな女だな」
「おすわり!」
「ぐえっ!」
「けが人は黙って寝てなさい。私はもう一眠りするからね」
「あ、こら、てめぇっ・・・」
そう言いながらも、かごめは喧嘩ができるくらいに犬夜叉が回復していたので少し安心していた。
「さ、我々も寝ますよ」
そう言いながらすました顔で弥勒は珊瑚の横へ添い寝しようとするが一発くらう。
「あっちへいけ」
「いや私はただ、七宝と珊瑚に子守歌でもと・・・」
「いらん」
いつものケンカ。いつもの仲間達。犬夜叉はそんな空気がとても可笑しくそして頼もしく感じる。そしてその傍らにはさっき夢で見た 温もりが確かに存在している。
犬夜叉はその温もりを改めて感じつつ再び眠りにつく。
そして、その犬夜叉をかごめが深く優しい瞳で見つめてつぶやく。
「明日も・・・がんばろうね・・・犬夜叉」
小窓の隙間から、明るく静かな満月の光が差し込んでいた。