かごめちゃん小説 『かごめとりんの生きる道』(+クール兄とおこちゃま弟) だい1話。 『私のお姉ちゃん』 ひなぎく団地2号と204号室。 ここがかごめとりん姉妹のお城だ。 「おねーちゃん。はい。おねぎ」 「ありがと。りん」 休日出勤のお母さん。 二人きりの日曜です。 「いい?おねぎはね、ごはんに火が通ったら すぐいれて、さっといためたらいい香りがするのよ」 りんが背伸びをしてフライパンの中をのぞく。 「わーほんとだー」 「ふふ。りん。お皿もってきて」 「はぁい!」 ミッキーマウスの絵皿をカタンと背伸びして テーブルに置く。 (湯飲みも!) 食器棚に再び手を伸ばす。 「あ・・・!」 ガッチャーン! マグカップが床に落ちて粉々に・・・ 「あ・・・!お姉ちゃんのミッキーが・・・」 りんは欠片を拾おうとする 「駄目よ!」 かごめがとめて箒とちりとりをもってきた。 「おねーちゃん・・・。ごめんなさい」 「いいの。謝ることはないのよ。形あるものは いつかは壊れるもの。りんの手が傷つくほうが私は痛い」 「おねーちゃん・・・」 さっさ。 マグカップのかけらたちは綺麗に片付けられて。 (おねーちゃんはやっぱりつよいなぁ。りんだったら、 泣いちゃう) ダイスキなマグカップが粉々に。 「りん、ご飯の後で、おねーちゃんのマグカップ 買ってくる」 「え?いいのよ。別に」 「買ってくる!りんのおこづかい全部つかって かってくる!これ使っていいから!」 りんは、くまのプーさんのちょこんばこを持ってきて かごめに差し出した。 「・・・。いいの。私は・・・」 「買うの!絶対買うの!!」 りんはめにこんもり涙を溜めて・・・ 「りん・・・。わかった。わかったわよ。 じゃあ200円だけ使わせてもらうわ」 「え?」 「100円のお店でね。とっても可愛いの、買うんだ。 りんとおそろいv」 (おねーちゃんとおそろいおそろい・・・) 大好きなかごめおねーちゃんとおそろいのマグカップ。 (”かっちん”ができる!) りんの”かっちん”というのはカップ同士を くっつける、いわゆる乾杯することだ。 「おそろい大好き!おそろい!」 なんでもおそろい大好きっ子、りん。 昼食を終えて。 「おねーちゃんとおそろい。かみのけも 一緒がいいな♪」 というわけで。 「〜♪」 大好きなかごめおねーちゃんと一緒のみつあみのおさげで、 黄色のおリボンをつけてもらって上機嫌。 「もう。言い出したら聞かないんだから。でも私も りんとおそろい、大好きよ」 にこっと大好きなかごめおねえちゃんに笑ってもらえて りんは・・・ 「〜♪♪」 スキップしだしました。 (おそろい!私とお姉ちゃんだけのおそろい〜♪) りんがかなしいとき、 幼稚園のお友達とけんかしたとき、 だっこしてくれた。 (お姉ちゃんは。もう一人のお母さん) 大切に、大切にしようとりんは思っている。 (はッ!) 丁度ブランコの前を通りかかったとき。 (・・・、い、いじめっ子だ!) 赤いシャツをきた男の子。 りんよりは少し年上のようでランドセルを背負っている。 ぎゅっとかごめの手を握り締める。 「?どうしたの?急に」 「・・・」 ”おうお前。今日はオレがこうえん使うんだ。 入ってくるんじゃねぇ” この前、そういって、公園から他の子供たちを全員締め出した 男の子。 背もおっきくてみんな怖がっていた。 りんもとても怖かったけど ”いつアンタのこうえんて決まったの!! みんなのこうえんだよ!” とちょっと言い返してやった。 そしたら ”うるせぇ!!怪我したくなかったら出てけ!” と突き飛ばされて・・・。 「なんでい。この前のガキじゃねぇか」 向こうから近寄ってきた。 (こ、こわいよ) かごめの後ろにひょいっと隠れてしまった。 「出ていけ。今日もオレの陣地だ」 男の子はかなり偉そうに威張って腕を組んでいる。 「聞こえなかったのか。出てけ」 「・・・」 (な、なんだ、この女!) かごめの方が背丈はおっきい。 仁王立ちして男の子を黙って見下ろすかごめ。 「き、聞こえなかったのかッ。出て行け! 怪我させるぞッ」 「・・・。脱ぎなさい」 「は?」 「・・・ズボン脱ぎな(睨)」 ぐいっと男の子のズボンをひっぱて睨みを利かすかごめ。 「・・・な、なんでい。お、おまえ・・・」 「・・・黙って脱ぎなさい」 「・・・怯」 男の子はかごめの睨みにちょっぴしびびって、 言うとおり、ズボンを脱ぎだ。 公園のベンチ。男の子は膝にピンクのタオルをかけて座らされ 隣のベンチでかごめが裁縫道具を取り出した。 「て、てめぇ。よ、よくもお、男にこんな・・・(照)」 「あーあ。やっぱり。ほら。破けてる」 「動くとタオル取れて前、見えるわよ?」 「・・・!!」 男の子はピタっと正座。 「な・・・なんてはずかしいこと言う女だ!///」 「威勢だけは買うけど、アンタ、穴の開いたズボンずっと 履いてた方が恥ずかしくない?」 「・・・!!」 りんは思わずくすっと笑ってしまった。 「暫く黙ってなさい。すぐ繕ってあげる」 男の子はそれきり黙りこくり、かごめはさっさと針仕事。 (すごいなぁ。お姉ちゃんはいじめっ子より 強い) りんの憧れはますます大きく(笑) 「さ、出来た」 「は、早く返せッ!」 「ハイハイ。何なら履かせてあげようか?」 「ばッ・・・!!じ、自分で履く!!」 ささっとベンチの後ろに行ってズボンをはく。 「ふふ。アンタのお母さんも苦労するわね」 「・・・。お、オレにお、お袋なんかいねぇ! ずっと一人だ!」 「・・・」 男の子が口走った言葉。 男の子の背中が 少しかごめとりんには寂しげに見えて・・・。 「きょ・・・。今日のトコロは勘弁しといてやる! けど今度会ったら、絶対ぶっとばしてやるぞ!!わかったか!」 男の子はかごめが繕った部分を手で押さえて すたこら走っていこうとした。 「待ちなさい。ボク」 「!?」 「はい。口あーん」 「!??」 かごめは男の子口をパクッあけさせ、何かを入れた。 (な、なんだ・・・?甘めぇ) 「あげるわ。その代わり、りんのこともう、いじめないでね。 じゃあバイバイ。犬ナントカ君」 「あっかんべー!!犬ナントカ!!」 りんは思い切り男の子に言ってやった。 「・・・!!」 かごめの後をとことこ、ついていく・・・ (・・・。な・・・。なんで姉妹だ!) ヒュウ・・・ 新聞紙がなんだか勇ましく風に靡く。 (そ、それにしても・・・。なんであいつら、 オレの名前・・・(上だけ)) 「!」 男の子のズボンのポケット。 『○年○組 犬・・・』←マジックが半分消えている。 「・・・。お、オレは”犬”ナントカ”じゃねぇぞ! モグモグ」 飴玉をほお張りつつ。。 (甘めえ・・・) 飴玉なんて久しぶりに食べた・・・。 小さくなってなくなるまで飴玉を味わったのだった。。 一方。 かごめとりん。 おそろいのマグカップにりんごジュースを 入れて二人でベランダでティータイムならぬ、ジュースタイム。 「お姉ちゃんって本当にすごいね!!」 「え?そんなことないわよ」 「だってだって!いじめっ子をやっつけたんだよ!」 りんの興奮はさめないようで・・・。 「・・・。あの子はいじめっ子じゃないかもね」 「え?」 「寂しかったのかもしれないわ」 かごめが意外なこと言うのでりんはきょとん。 「な、なんで?あの子、いっつもみんなのこと 睨んで・・・」 「仲良しさんになる方法を知らないのよ。だから ああやって怒ることで、みんなに近づこうとしてるのよ」 「そうなのかなぁ」 りんはりんごジュースをちびっと口に含んだ。 りんには乱暴者にしか見えないが・・・。 「今度会ったらまたキャンディあげてごらん。 きっと仲良しになれるかもしれないよ」 「う、うん」 (そういえば・・・。背中が寂しそうだったな) 犬ナントカ君の背中を思い出した。 「でももし、少しでもりんに乱暴なことしたら・・・。 お姉ちゃんに言いなさいね!!どんなことがあっても暴力だけは許さないわ!!」 「・・・お姉ちゃん・・・」 (やっぱり・・・。お姉ちゃんは”りんのお姉ちゃん”だ) 「?どうしたの。りん・・・」 ぎゅっとかごめの腰に抱きつくりん。 「・・・。ずっとりんのお姉ちゃんでいてね」 「・・・うん。私はずっとりんのお姉ちゃん。 りんが大好きよ」 かごめお姉ちゃんの匂いが好き。 かごめの膝に顔をうずめる。 ぎゅっと抱きつくりんを かごめもそっと髪を撫でて包む・・・。 「ずっといつまでも仲良くしていこうね」 「うん!」 カチン! お揃いのカップでかんぱい! 初夏の昼下がり、、 ベランダからりんごジュースの甘い香りが暫くただよっていた・・・