違う魂
〜傷が糧になるまで、いつまでかかるか〜
・・・どうして女の子に生まれちゃったのかな。
女の子っていうイキモノに生まれなかったら
きっとこんな辛い気持ちには出会わなかった。
男の子に生まれていた方が上手く、ラクに付き合えたのかもしれない。
・・・。
ううん。どっちでもない。
私は私。
・・・どんなに強い想いで接しても
伝わらない温度があるって知ってる。
・・・。
私は私。
彼は彼。
彼女は彼女。
それぞれに、
強い絆があっても
濁してはいけない場所がある・・・。
※
「・・・一人にして。ほらあの・・・。勉強があるの・・・。だ、駄目?」
「・・・(汗)」
井戸の前。
少し自分の時間を過ごしたいとかごめは犬夜叉に気付かれぬようにと
こっそり抜け出してきた。
「お願い。日が暮れるまでででいいから」
「・・・。分かった」
以前ならばかごめの都合も考えずひっついてきたか、追いかけてきたものだが
最近は学習したのかすんなり引き返して言った。
(・・・。子供をしつけている気分・・・だわ。けど
なんか切ない)
母ではない
「そうよ。お母さんじゃないわ。まだ私は15なんだから!」
ちょっと腹が立ってきた。
(・・・妙な元気が出てきちゃった)
けどもう少し一人でいたい。
混乱渦巻く心のままでは次の旅路へ行く邪魔になるから。
「ただいま・・・」
(私は・・・。やっぱりこっちの人間なのかな・・・)
安心する自分に気がつく。
同時に妙な隔たりにも気がつく。
「ふー!元気出さなくちゃ!」
久しぶりにドレッサーの前に座り、鏡を開いた。
「・・・」
目の下に薄っすらくまが・・・
(・・・。私って・・・。こんなに疲れた顔してたっけ?)
はっと気付いてしまった。
(犬夜叉の前でこんな・・・。犬夜叉が一番辛くて疲れているはずなのに・・・)
気遣っていたつもりはもしかしたら
気遣われていたら・・・?
短期間でいろんなことがありすぎて・・・。
「・・・。私ってやっぱりまだまだだな・・・」
自分の顔と真正面に向かえない。
「・・・」
(・・・。桔梗は・・・。どうだったんだろう・・・)
痛々しさだけは
伝わってきたけれど・・・。
(・・・”死”って・・・
どのくらい痛いんだろう・・・)
救われた魂。
体の痛々しさは把握できても
(・・・自分が・・・。消えていく・・・怖さ・・・。
心・・・)
「・・・」
かごめは自分の両手をじっと見つめた
(温かい・・・。私は”当たり前”のことだけど・・・)
彼の女性にはそれがきっととても・・・
大切な大切な・・・感覚だったのかな・・・
(・・・。最後・・・。感じられたかな。そうだといいな)
召させる瞬間。
一瞬でいいから
感じていてくれたら
・・・そう信じるしか出来ない。
想像をめぐらすしかない
自分の心の大きさの範囲内だけれども
想像をめぐらすしかない。
だけど・・・。
けど・・・。
「・・・」
鮮明に焼きつく・・・
なんとも
なんとも
鮮明すぎる
・・・あの場面。
(・・・嫌・・・ッ!消えてッ!)
ドン!
自分の顔を覆ってしゃがみこむ。
”奇麗事言うな”
心の奥底から聞こえてくる
「・・・ごめんなさい。生きててごめんなさい。分かってあげられなくて
ごめんなさい・・・。想像力がなくてごめんなさい」
かごめは思わずシーツを頭からかぶり
体を隠した・・・
白いシーツで
隠した・・・
「犬夜叉・・・。桔梗・・・。弥勒様、珊瑚ちゃん、七宝ちゃん・・・ごめんなさい・・・。
みんなごめんなさい・・・」
”奇麗事言うな・・・!”
「ごめんなさい。ごめんなさい・・・」
(ごめんなさい・・・)
誰に対してなのか
何に対してなのか
ソレすら分からない
「・・・。逃げないから・・・。逃げないから・・・」
心の奥底のこびり付いた”ヌメリ”
「・・・。逃げないから・・・。少しだけ・・・。休ませて・・・」
この混濁した気持ちが
いつか
いつか
”糧”になるのか
「・・・頑張るから・・・」
絶対に言えない
外に出してはいけない。
濁った気持ち。
いつか
綺麗な何かに変わるのか・・・
「・・・ごめんなさい・・・ごめ、ごめ・・・ゴホゴホッ・・・」
かごめの部屋のドアの外。
好物のホットケーキを持ってきた母だったが・・・
(・・・かごめ・・・)
か細いすすり声
泣き声より小さな
かすれる声に
ただ・・・
母は
無力感と切なさが込み上げてくるのだった・・・
※
夕方。
「あー。お水も持っていかなくちゃえーと」
冷蔵庫からあれこれ出して、
見繕ってリュックに入れるかごめ。
「・・・かごめ」
「ん?何?」
「・・・。ちゃんと・・・歩ける?」
「え?」
かごめの母はそっとかごめの手を握った。
「・・・。ママは貴方を応援するから。応援し続けるから・・・。
それだけは忘れないで」
「・・・ママ・・・」
「・・・ずっとずっと貴方の応援隊だからね・・・!」
(ママ・・・)
母の胸に
飛び込みたい気持ち。
けど・・・
ぐっと堪えた。
(・・・頼っちゃいけない)
飛び込んでしまったら・・・
多分もう
(・・・私は”赤ちゃん”になってしまう)
「ありがとう。ママ・・・。私・・・。ママの子でよかった」
「かごめ・・・」
「私・・・。ちゃんと歩く。歩けるようになるから」
かごめは背筋を伸ばして
リュックを背負って玄関へ。
大きく膨らんだ背中のリュック。
今日は・・・
やけに大きく重そうに
見える・・・
(・・・。半分でいいから・・・担いであげたい)
「かごめ・・・。井戸の前まで荷物持とうか・・・?」
かごめは笑顔で顔を横に振った
「重そうで・・・」
「・・・。大丈夫・・・。疲れたらちゃんと自分で降ろして・・・
自分で休むから・・・!じゃあ」
玄関の引き戸に手をかけて・・・
去り際に一言・・・。
「ありがとう・・・ママ・・・本当に・・・」
ガシャン・・・
笑顔で・・・
行った・・・
(かごめ・・・)
地面に濡れた一滴の痕・・・
(・・・。あっちでも・・・せめて太陽であの子を包んであげて・・・
神様・・・)
母の願い
井戸の向こうの空まで続くか・・・
向こうに着いたかごめ。
荷物を降ろして・・・。
一息。
「・・・。ふぅ・・・」
上を見上げる
雲ひとつ無く
・・・快晴だ。
「・・・大丈夫!」
深呼吸して・・・。
(あ・・・)
ふと地面を見つめると
黄色い小さな花が・・・
「・・・。ごめんね。踏みそうになっちゃった」
芽を出したばかり。
「負けないでね。負けないでね」
大地にシッカリと根付いて
強い風に負けない花になってほしい。
そっと花びらに
呟いて・・・
楓の小屋で犬夜叉が
かごめの姿を見ると降りてきた
どことなくぎこちなく・・・
(逃げない。自分が選んだ道からは)
「・・・ただいま。遅くなってごめんね・・・」
いつもどおりに
犬夜叉の隣に並んで・・・
「あのね、井戸のふちで綺麗な花みつけたんだ・・・」
かすかに痛む心
犬夜叉もそうに違いない
違う心
それぞれに・・・
違う心で
寄り添って・・・。
・・・。
かごめちゃん視点でしか書けないので。。
やっぱりこの作品の主役は犬君なんだなって
半分悔しく半分納得。。
なので、
人の痛みも自分の本当の痛みでも、
”葛藤”できる子って私の憧れで神様に等しい位に大好きです。
だから、かごめちゃんの心の傷は
かごめちゃんのもので、原作で引っ張り出されなくてよかったと思っています。
というか留美子さんはきっとそういうスタンスなんだと。。
男とか女とかって性別で、もの言うのはおかしいかもしれないけれど、
男性作者さんだったらきっと安易に
”かごめの心の傷”を生々しく”中途半端な含みで”書いたかも・・・と少し思います。
”性(さが)”に関係する感情は”漫画は架空世界”通り越すほどに威力があるから。
特に女の子は。。
生々しくすると本当にもうシリアス一直線で・・・。
・・・私はすぐ途中退場、リタイアしますが(駄目な奴)
中途半端に”犬君の精神的な肥やし”になるなる位ならば・・・。
見えないほうがいい。
・・・かごめちゃんの人生背負う気満々の犬君に成長してから知ってください(何様)
犬君とかごめちゃん応援者としての本音は、
もっとじっくり煮物を煮るように犬君のことも星になった巫女様のことも
じっくり考える時間がみたかったな・・・ですが・・・。
つくづく・・・かごめちゃんは母性に磨きをかけたような気が。。
このまんまラストでは本物の”犬君の子供のママ”になってほしいですが(笑)
ではでは。。