絆を探して
7
サワサワ・・・
今まで一番
心地いい爽やかな風が
二人の間に吹く・・・
(かごめ・・・)
(・・・犬夜叉)
色んな想いが溢れる
伝えたいこと
沢山あるのに・・・
「・・・。すまなかった・・・。本当に・・・」
「どうして犬夜叉が謝るの・・・。こうして助けに来てくれた・・・。
それだけであたしは・・・。あたしは・・・」
「かごめ・・・」
「犬夜叉・・・」
抱きしめたい
犬夜叉の胸に飛び込みたい
溢れる想いは
二人の足に伝わり・・・
距離を縮めようと動かす・・・
手を伸ばせばすぐ届くほどに近づける・・・
だが
(・・・!)
(!)
二人の足がピタリと止まる・・・
二人の真ん中に
突き刺さっているのは・・・
桔梗の矢。
たった一本の
一本の
桔梗の・・・矢・・・
「・・・」
「・・・」
まるで
犬夜叉のかごめの間を遮るように
それ以上近くなるなと言う様に
深く
固く
刺さって・・・
姿がなけれどその存在は
確かに重く 確かに強く・・・
「・・・犬夜叉・・・。あ、あの・・・。肩・・・。大丈夫・・・?」
「あ・・・ああ・・・。たいしたことねぇ・・・。心配すんな・・・」
「うん・・・あたしも大丈夫よ・・・」
差しさわりのない会話しかできない。
真ん中の矢を目の前にすると
溢れる想いが萎縮する・・・
かごめは桔梗の矢を静かに抜き、犬夜叉に手渡す・・・
「・・・。結局あたし・・・。また助けられちゃったね」
「何言ってんだよ・・・」
「桔梗の矢がなかったら・・・。私は白童子に殺され四魂のかけらをうばわれてた・・・。
まだまだだね・・・」
かごめは桔梗の矢を静かに抜き、犬夜叉に手渡す・・・
「・・・。犬夜叉・・・行っていいよ・・・」
「え・・・?」
「桔梗はきっとまだ近くに居る・・・。探しに行っても・・・。
・・・私のことは大丈夫・・・。ね・・・」
かごめはそういうと犬夜叉に背をむけ
静かに井戸のほうへ歩き出した・・・
サクサク・・・
かごめの背中が小さくなっていく・・・
自分から離れていく・・・
手の中の桔梗の矢・・・
(オレは・・・オレは・・・)
”・・・そばに・・・いてもいい・・・?”
”いて・・・くれるのか・・・?”
”・・・うん・・・”
風が伝える・・・
あの時の・・・
二人の決意
それから・・・
繋いだときの・・・手の温もり・・・
(嫌だ・・・。やっぱり嫌だ・・・)
「かごめーー・・・っ」
「・・・!」
フワ・・・ッ
犬夜叉の想いが
かごめの腕をつかみ
ただ・・・
抱きしめる・・・
ただ
抱きしめる・・・
「・・・かごめ・・・っ」
「犬夜叉・・・ごめん・・・迷惑かけてごめんね・・・。でもやっぱり私・・・
そばにいたい・・・ぞばにいたいの・・・」
「かごめ・・・っ」
力いっぱい
包む・・・
”そばにいてくれ・・・”
言葉にならない想い
溢れる想い
犬夜叉は
めいっぱいめいっぱい・・・
この世で一番大好きなぬくもりと匂いを
抱きしめる・・・
「かご・・・め・・・」
背負うべき罪
倒すべき宿敵
もしかしたら結ばれない未来
沢山の背負う運命があるだろう
だからこそ変わらないものがある
(かごめはやっぱりあったけぇ・・・。あったけぇ・・・
いい匂いがする・・・)
幸せな匂いに包まれ
犬夜叉はより一層
かごめを包む・・・
このぬくもりと匂いに
どれだけ支えなのか
心の底から分かる・・・
「犬夜叉・・・」
言葉はいらない
だた
誰かを
生きる力が湧いてくる・・・
一緒に泣いて笑って怒って・・・
培った
それこそが確かな絆
チチ・・・
小鳥が飛び立つ
御神木を二人
静かに見上げる・・・
「・・・犬夜叉・・・。本当にいいの・・・」
「・・・。ああ・・・」
桔梗の矢を握り締める犬夜叉・・・
やっぱり追いたいのだろう
気になるのだろう
その葛藤を消すことは誰にも出来ない。
「・・・。ごめんね・・・。私・・・ごめんね・・・
ごめ・・・」
犬夜叉はかごめの言葉を遮るように右手を握った
「・・・いいんだ。これで・・・いいんだ・・・」
「犬夜叉・・・」
目の前の矢の主を案ずる心は消えはしない
かごめの心もまた
揺れないはずはない
「・・・。これだけは言っとくぞ・・・」
「うん・・・」
「誰でもないお前にオレは・・・そばにいてほしいんだから・・・な・・・」
かごめの右手を握り締める犬夜叉の手が強くなる・・・
「・・・ウン・・・」
かごめは少し控えめに
静かに
犬夜叉の肩に顔を寄せた・・・
かごめは思う・・・
犬夜叉の断ち切れないもう片方の絆も
自分の中の沸き起こる嫉妬や迷いも
全部受けいれて
飲み込んで
それでもまだ迷って
泣いて
繰り返しながら
きっと自分は
強くなっていくと・・・
「犬夜叉」
「なんだ」
「あたしもっと強くなるね・・・」
「かごめ・・・」
犬夜叉は強く強く
かごめの肩を抱く・・・
「オレももっと強く・・・なるから・・・」
「ウン・・・」
もしかしたらこの恋には
切ない結末が待っているかもしれない
でも確かなのは
絆は
苦しいこと哀しいこと乗り越えて
きっと
想いあう二人の宝物になる
きっと・・・
きっと・・・
かけがえのない絆に・・・
FIN