「きみのて」 エピソード1 彼の腕の中の青空 「うん。わかってるおかーさん。心配しないで」 引越しの荷物をわけながら、母親と電話。 「はい。だからもう心配しないで!」 ガチャン! 心配性の母。一人娘が大都会で一人暮らしなら仕方ないだろうが・・・。 (ふぅ・・・。長電話したくないのよ・・・。だって・・・) 彼氏・の犬夜叉からの電話がそろそろかかってくる頃・・・。 夜、10時になったらかける、と約束した。 時計の針が10時きっちりになる・・・ PPPPP!! 「!!」 かごめはすぐに携帯に出る・・・ 「・・・。かごめか・・・?」 「・・・うん・・・」 1週間ぶりの犬夜叉の声・・・ 「ん・・・?どうした」 「・・・。アンタの声に・・・。ドキドキしちゃって・・・」 (・・・///か、かごめッ)←腰の辺りがムラときたらしい(笑)) 「ど、どうだ・・・?そっちの様子は・・・?慣れたか?」 「うん・・・。なんとか・・・」 (ん・・・?なんか声のトーンが・・・) いつも元気で明るいかごめの声。 微かに暗い感じがした。 「ね、ねぇ。犬夜叉。アンタの方こそどうなの? 仕事はなれた?」 「おう。まぁな。まだ下っ端だけど良くしてもらってるぜ」 「そう・・・。よかった・・・ね・・・」 犬夜叉の新しい季節はどうやら 順調にスタートしたらしい。 (喜んであげなきゃいけないのに・・・。何でこんな 重たい気持ちになるんだろう) ”えー。嘘。○○県ってどこだっけ?” ”っていうかなまってるよ?やばいよ。直したほうがいいよ” 新しく出来た”友達”がかごめに言ったこと。 笑顔で自分の生まれた街と言葉を 否定された・・・。 そして自分自身で否定した・・・。 ”え、あ、そうだね。私なまりがコンプレックス なんだ。がんばって直すよ。へへ” 「・・・」 「おい・・・。本当にどうしたんだ?」 「えっ。ううん。なんでもないなんでもない。 ちょっと荷物の整理がつかなくて、片付けてたの」 「そうか・・・?何かつれぇことあったら・・・言えよ?」 キュン・・・ 本当にそんな言葉のように かごめの心が締め付けられた。 ・・・切なさと嬉しさで・・・。 「・・・。犬夜叉・・・」 「ん?」 「・・・。ダイスキ・・・」 (・・・ッ///) 溜めて溜めた息と一緒に 呟かれて・・・。犬夜叉は・・・ (・・・だ、駄目だ。オレ・・・。今度かごめんトコ 行った時、爆発しちまいそう・・・///) 携帯を持っていないほうの手が空を泳いでいる。 ・・・どういう意味だろう(笑) 「じゃあ犬夜叉。おやすみ・・・」 「お、おう。ちゃんと体温めて寝るんだぞ?」 「ウン・・・」 素直なカゴメの返事に・・・。 犬夜叉は・・・。 (・・・お、オレがあっためてやりてぇ・・・) 「え?何か言った・・・?」 「え?い、いやぁな、何でもねぇ。じゃ、じゃあな」 (・・・。か、かごめのヤツ。なんか勘が鋭くなったな・・・(汗)) P! 親指で携帯のスイッチを切る。 ・・・その瞬間がなんとも ・・・切ない (・・・こんな機械通してじゃ・・・。やっぱり 足りねぇ・・・) 会いたい。 会いたい。 (なんか・・・かごめの様子も変だったし・・・) 好きな女の微妙な変化。 元気がない理由を考える。 「はッ・・・!!ま、まさか・・・!!」 犬夜叉妄想劇場、開幕〜(笑) ”へへへ・・・。可愛い女じゃねぇか。新入生だな?” ”や、やめてください・・・私にはれっきとした彼氏が・・・。きゃああ!!” ってな妄想が繰り広げられて・・・。 「う、うおおおお!!!かごめぇええ!!」 大声を出して怒り出す。 「うるさいぞ!こらぁ!!」 犬夜叉の隣のアパートから苦情がきたという(笑) 桜が散った頃。 かごめの東京での大学生活も本格的に始まって 生活環境に慣れるため、かごめは毎日必死だった。 「年間単位数をその用紙に書いて・・・」 何もかもが新しい。初めてなことばかり。 大学のシステムのかってにもついていくのに必死。 都会の学校は全てが効率的。 「え、でも私、その教科は・・・」 「卒業するとなるとまぁ先にとっておいたほうが楽だよ? 必須だしね。”みんな”そうしてるよ?」 (みんな・・・) 周囲を見渡す。 希望科目より卒業に必要な科目を優先的に 取る。 (・・・私が勉強したのはこの科目じゃないのにな・・・。 でも一人だけ違ってるのも・・・) 一人だけ違う科目だと せっかく知り合った友とも付き合いづらくならないか・・・? かごめは不安になって 希望科目ではなく必須科目に書き換えて提出した。 (・・・。私・・・。何のためにここに入ったの・・・?) ”大学ぐらい卒業しておきなさい” ”地元の大学でもよかったのよ。でもせっかく東京行くのなら 悔いなく勉強してきなさい。いい?仕送りする親の気持ちに応える のよ?” 親からは、お決まりの文句を告げられ上京してきた。 「ねぇねぇ。かごめ。今日さ。メアド、教えて?」 「え?あ、い、いいけど・・・」 まだ数回しか喋ったことのない女子学生。 「・・・。何?なんか”教えたくない”ってオーラでてる?」 「や、そ、そんなことないよ。い、今教えるから・・・」 田舎じゃ、そうそう簡単にはメアドなんて教えなかっし、 携帯自体、持ってない子もいた。 (・・・。東京で持ってなかったら・・・。変人扱いよね。きっと) 東京という街は。 地方から沢山の若い人間達が上京してくる街。 皆、それぞれにふるさとがあるだろうが、東京に来てしまえば ”東京の価値観という標準化”しなければ、相手にされない。 知り合って間もない女子学生。 某○○ヒルズやら若い女の子がすきそうな店が紹介された雑誌を 見せられる。 「ここさ、結構イケてるんだよ。とりえずチェックしとこ」 (・・・。お金・・・。あんまりないんだけどな・・・。 それに休みの日は・・・。ゆっくりしていたいのに) 相手に合わせたくないのに 合わせなければ、はじかれて、ひとりぼっちになってしまう。 (・・・こんなこと・・・。高校じゃなかったのに・・・) 「ねぇ。かごめ、今日、かごめの部屋に泊まりに行くってことに しといてくれないかな?親にそう言ってあるんだ」 「え?」 「私。ちょっと・・・へへ。彼氏と・・・ね」 「え、ああ、わかった」 (・・・。私・・・なんか”ご利用”されてる・・・?) 金融会社みたいに 都合のいいときに都合よく使われてる・・・? 「はぁー・・・」 見上げれば。 空を覆いつくすようなビルに見下ろされている。 (青空が・・・見えない・・・) 鳥がいない。 いてもゴミをあさるカラス。 人間より頭がいいカラス。 「あ、『MANA』の新刊でてる」 本屋の前を通りかかると女子高生が、積んである少女コミックスを 手に取った。 『上京してきた少女たちのサクセスストーリー!!』 という宣伝文句。 (・・・。サクセスストーリーって・・・。 分からない) 漫画の中なら 悩んでいるヒロインも絵になって、綺麗になって。 でも現実はだた・・・ (・・・。気分が・・・。重い・・・) かごめはマンション近くの公園に一人ぽつんと座っていた。 その公園はかごめの家の近所の公園とよく似ていてほっとする。 (・・・犬夜叉・・・) 犬夜叉と高校帰りによく立ち寄って口喧嘩していた。 ささいなことだけど 喧嘩でも楽しかった。 (・・・。会いたい・・・。会いたいよ・・・) 自分が自分でいられたあの頃に・・・。 「かーごめッ!」 「え?」 振り返ると犬夜叉が・・・ 「ど、どうして・・・?来るの、週末じゃ・・・」 「・・・///お、おめぇの声が元気なかったからよ・・・。気になって・・・よ」 犬夜叉は照れくさそうに前髪をかく。 「それで・・・わざわざ・・・?」 「・・・///い、いけねぇかよッ!!」 「・・・ううんッ。嬉しい・・・」 (お、おわ?) かごめはぎゅ・・・っと犬夜叉に抱きついた。 「・・・な、なんだ。おい急に・・・」 「お願い・・・。少しだけこうしてて・・・」 「///」 犬夜叉はぜんっせんOKらしいです(笑) (神様・・・。ありがとう。犬夜叉を連れてきてくれて・・・) 自分が自分で居られる場所。 かごめは犬夜叉の胸の中でほっとしていた。 「そうか・・・。友達・・・つくんの、難しいのか・・・」 「うん・・・。なんか・・・いろいろ・・・ね」 かごめの部屋。 二人は肩を寄せ合って座っている。 東京での新生活の不安を犬夜叉に話した。 「オレは都会のことはよくわかんねぇけど・・・。 なんかあったらすぐオレに言うんだぞ?おめぇは一人じゃねぇ」 「・・・犬夜叉・・・」 「い、いつかお前がオレにいったことだ。 い、今返す・・・///」 「・・・アリガト・・・。大好き・・・」 (・・・ッ///) 身を寄せるかごめ。 柔らかい感触が腕に・・・ 「か、かごめ、あんまくっつくな(汗)オレ・・・。あ・・・」 「スー・・・」 かごめの可愛い寝息。 犬夜叉の肩にもたれて眠ってしまった。 「・・・。疲れて・・・るんだな・・・」 都会。 新しい世界。 希望だけじゃない。 不慣れな現実の方が正論になってしまう。 「・・・。大丈夫だ・・・。オレがいる・・・。 ひねくれたオレを立ち直らせてくれたお前だ・・・。きっと大丈夫・・・」 かごめの長い髪をそっと撫でて呟く・・・。 今まではずっと自分が甘えていた。 かごめの優しさと厳しさに。 (今度は・・・オレの番だな・・・) 支えよう。 惚れている女を。 支えたい。 「・・・。休め。かごめ・・・オレ、そばにいるから・・・」 手を握る。 大好きなかごめの温もりが 都会の厳しさに冷えてしまわないように・・・ (・・・///ね、寝顔見てるのも悪くねぇ・・・ケド、オレ、 我慢できるかな(汗)) かごめの温もりと 腕にあたる胸の感触に もじもじしながら・・・かごめを支える・・・ (犬夜叉・・・) かごめが見た夢。 犬夜叉と一緒に見上げた故郷の青空・・・ 不安が渦巻いていたかごめの心を 優しく照らしてくれたのだった・・・。
私は田舎モンなのでリアルタイムの 若者の事情はよく分からんと書いたのですがどんなもんでしょう?(汗) いざ、というときに助けてくれる人がいるっていいですよね・・・(遠い目)