絆を探して
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犬夜叉が一つの”決断”をしたころ。 かごめは・・・ 「・・・」 クラスメートの和美の家の窓から空を見上げていた。 気になるのは 戦国の世のこと。 仲間のこと・・・ それから・・・ ”桔梗・・・” ピシャッ!!!! 感情にまかせて乱暴に窓を閉めるかごめ・・・ (・・・今は忘れようっと想ってるのに・・・) 吐息まりじりのあの声が耳につく 離れない・・・ 「かごめ。なんか元気ないね・・・」 おぼんにオレンジジュースを入れ、風呂上りの和美は座る。 「どうした?その顔は恋の悩み・・・?」 「・・・」 俯くかごめ。 「恋・・・か。今の私にはなんともキツイネタですな〜」 (え・・・?) 和美は頭に巻きつけたタオルをとった。 「・・・だって・・・。和美は確か高校生の彼氏がいて・・・」 「・・・。振られちゃった」 (えっ・・・) 思わぬ和美の言葉にかごめは驚く・・・ 「・・・ができたんだって・・・」 微笑みながら軽く言う和美だがコップを握り締める手にぎゅっと力が一瞬入る・・・ 「そんな・・・そんなのってないよ!だって和美、先輩のこといっぱい支えていたじゃない。 勉強のこととか・・・」 和美が何だか今の自分のように思え、 かごめの感情移入もすぐスイッチがはいり声が大きくなる。 「・・・二股なんて・・・」 「・・・。そうだね。相手がもっと嫌な女だったら私も諦めなかったし 先輩が好きになった子がね・・・。すごく重い病気抱えてるんだって」 「・・・」 シリアスな和美の恋の状態にかごめはただ黙って話を聞く・・・ 「・・・先輩、私に頭を下げてこういったの」 『アイツは必死に病気と闘ってる・・・。だからオレも命がけでアイツと付き合ってる・・・』 「・・・参っちゃうよね・・・。何にもいえないよね・・・。命はるとか張らないとか そんなこと言われちゃったさ・・・。私の恋って小さいって たまらないよね・・・」 ”オレは・・・。桔梗に命がけで応えなくちゃいけねぇ・・・” (・・・) 和美の気持ちが 自分の気持ちと重なりすぎて 和美の涙が痛々しい・・・ 和美の涙は自分が流した涙にも見えた・・・ 「でもね・・・。悔しいくらいかっこよかったの・・・。私に別れてくれって 男が女に頭を下げるなんてかっこ悪いはずなのに・・・。あんな先輩の顔、 初めて見た・・・」 ”桔梗・・・” 長くそばにいるのに 決して決して 見せることのない 違う顔・・・ かごめの耳の奥で桔梗の名を呼ぶあの声が響く・・・ 「・・・かなうはずない。命を互いの命を見詰め合ってる二人に・・・ こんな下手なお守りしかつくれない私なんか・・・」 「それ・・・」 和美の彼は野球部で甲子園を目指していた 大会で勝利を願いを込めてひとはりひとはり縫ったお守り・・・ 「こんな切ない想いするなら・・・。出会わなくちゃよかった・・・!好きにならなきゃよかった・・・! 苦しいのよ。かごめ・・・私・・・。こんなものッ!!!」 和美は壁にお守りを投げつけた 「彼を責めることも相手の彼女を罵ることも何もできない・・・!! そんなことを思う自分が嫌で嫌で・・・っ」 「和美・・・っ」 感情的になる和美をそっと・・・かごめは抱きしめる・・・ (・・・今の和美は・・・私と同じ・・・) 心のやり場がなくて もどかしくて・・・ 誰かにぶつけることもできない・・・ 「・・・。和美・・・。泣いて良いよ。泣いていいから・・・。これだけは忘れないで」 かごめは和美の手を握った・ 「・・・例え・・・。辛い決別になったとしても・・・。でも 誰かとであって、その人を好きになったその気持ちだけは大切にしよう・・・」 「かごめ・・・」 かごめはお守りをそっと拾った。 「誰かを想って・・・。先輩を支えたいって思った和美の想い・・・。それを否定だけはしないで・・・。 お願いだから・・・お願いだから・・・」 和美に伝える言葉は 自分自身に投げかける言葉・・・ ”運命なのかもしれぬな・・・” (・・・例え私の生まれた意味が誰かの運命によったものだとしても・・・。 その先の時間や心は自分で変えていくもの。そうよ・・・) かごめはお守りをぎゅっと和美の手に握らせた 「・・・ね・・・?」 「・・・。うん・・・」 恋には色んな形がある。 愛にも色んな形がある。 実ることのない恋。 届かぬ愛。 消える愛。 ・・・未来を共にみられない愛・・・ 忘れてしまいたい辛い記憶になるとしても (・・・自分のこの想いだけは・・・。否定したくない・・・) 犬夜叉と桔梗のような命がけの愛もあれば かごめの誰かを一途にささえたいささやかだけど温かい愛もある。 どちらが重たいとか軽いとか 深いとか浅いとか 比べることなんて不必要なことだ。 (・・・私は私の・・・”応え”がある) 布団を並べて傷心の抱えた友の手をにぎりながら かごめはもう一度。 自分の心を見つめなおそうと 思いはじめていた・・・ 実家に戻ったかごめ。 帰ると草太がベットに座って待っていた。 「ただいま。草太。どうしたの・・・」 「・・・犬の兄ちゃんからの伝言・・・」 「・・・!」 (犬夜叉・・・。来てたんだ・・・) 嬉しさと切なさがこみ上げる。 迎えに来て欲しい気持ちとまだ会うのが怖い気持ちと・・・ かごめはバックを静かに置き、草太の隣に座った。 「・・・それで・・・。伝言って・・・」 「・・・」 草太の眉が歪む 「・・・どうしたの・・・。草太。犬夜叉は何ていっていたの・・・?」 草太の表情があまりにも曇るから かごめは不安になり焦る・・・ 「私なら大丈夫だから。もう本当に大丈夫だから・・・。だから言って。 お願い・・・」 懇願するかごめに 草太の重たい口が開く・・・ 「・・・サヨナラって・・・」 (サ・ヨ・ナ・ラ・ダ・・・?) すとん・・・と かごめの心のように バックがかごめの手から落ちた・・・ (そんな・・・。そんな・・・。まだ私は自分の”応え”を見つけてもいないのに・・・) 微かに盛り返した筈の気持ちが・・・ 再び沈んでいく・・・ 眩暈のように かごめの体はふらつく・・・ (犬夜叉にとって・・・そんなものだったの・・・?そんな簡単に 結論がでることだったの・・・?) 「姉ちゃん!姉ちゃん!」 草太の声にはっと我に帰るかごめ 「オレ・・・。オレ、兄ちゃんの言葉は絶対に本心なんかじゃないって 思うッ」 「草太・・・」 「オレ・・・。オレずっと見てた・・・。兄ちゃんが姉ちゃんのベットで・・・本当に 安心した顔で・・・嬉しそうに・・・触ってた・・・。眠ってた・・・。本当に姉ちゃんが好きなんだなって オレ思ったモン・・・!!姉ちゃん!!」 涙目で必死に姉を励まそうとする草太・・・ 「・・・姉ちゃん・・・!今すぐ行けよ・・・!!兄ちゃんから離れちゃだめだ・・・!! こんな別れ方したら絶対に兄ちゃんも姉ちゃんも後悔するだけだ・・・っ」 (・・・後悔・・・) ”後悔だけはしないでー・・・お願い・・・” 何かが動く・・・ このまま別れたら 別れてしまったら 私は一生・・・後悔する・・・ ガタ・・・!! かごめはリュックを背負いまっすぐに井戸に向かった 「姉ちゃん・・・!」 追いかけてきた草太。 「・・・草太・・・。ありがとね・・・」 「姉ちゃん・・・!ガンバレ・・・!!」 草太のエールにかごめは微笑み返してそして井戸に消えた・・・ 「ホントにホントに・・・ガンバレ・・・」 「犬夜叉・・・!!」 井戸からあがってすぐに かごめは叫ぶ。 弥勒たちは妖怪退治に出かけ 犬夜叉は昨夜から姿が見えない楓から聞いた・・・ 「犬夜叉・・・!!どこなのっ!」 ”サヨナラだ・・・” (そんな簡単に言わないで・・・!!私は・・・私は・・・っ) 焦る。 焦りと不安と切なさが 犬夜叉の名を呼ぶ声を荒げる・・・ (このままじゃ・・・このままじゃ・・・) 切れそうな糸。 早く結ばないと 早くつなげないと 永遠に切れてしまう・・・ 「犬夜叉・・・!!」 かごめは息を切らせて探す・・・ カサ・・・ (・・・いた・・・!!) 御神木の前で・・・ 赤い着物が御神木の傷を見上げていた・・・ 「犬夜叉・・・ッ!!」 「かごめ・・・」 犬夜叉に飛びつきたい だがかごめはグッと気持ちを抑え・・・静かに犬夜叉を見つめた。 それもまた 犬夜叉も同じだ・・・ 「・・・。サヨナラって何よ・・・」 「・・・」 黙って俯く犬夜叉・・・ 「全部聞いたわ・・・。私が見たのは白童子の幻だって・・・。 でも突然なによ!勝手なこと言わないでよ・・・っ!!そんな簡単なのっ!??アンタにとって その決断は・・・。簡単なことなのッ!??」 「・・・」 かごめから視線を逸らす犬夜叉・・・ 「どっ・・・どうして逸らすのよ・・・。犬夜叉っ!!」 かごめの訴えに 犬夜叉の視線がかごめに向けられるが・・・ (な・・・) その瞳は・・・ 他人をみるような 無機質な感情のない冷たい瞳だ・・・ 「・・・。色々・・・考えた・・・」 「い・・・。色々って・・・」 犬夜叉はそっと御神木に触れて語る・・・ 「かごめ・・・。オレはお前のそばにいる限り・・・苦しめてばかりだ・・・」 「そ・・・そんなこと・・・っ。あんたのそばにいるって決めたのは私って前に言ったじゃない・・・!」 「・・・。お前の大事な時間を奪って・・・。苦しめて・・・」 「苦しくなんかない・・・!!今、私が大切なのはあんたのそばにいることなのよ・・・っ!!」 かごめは犬夜叉の着物をぐっと掴んだ・・・ 「・・・離せ・・・」 「嫌よ・・・っ。あんたの身勝手な優しさなんていらないんだから・・・っ。いらないんだから・・・っ」 たまっていたものが溢れるように かごめの瞳の雫は濡れ、流れる・・・ 「・・・。もう・・・無理なんだ・・・」 「!??」 「わからねぇか・・・」 犬夜叉の声に怒りが篭る・・・ 「オレはもう二人も守れねぇ・・・。只でさえ・・・奈落は強くなってるってのに・・・」 信じられない 犬夜叉の言葉・・・ (犬・・・夜叉・・・) 体の芯が冷たくなっていく・・・ 「・・・。傷だらけなのは・・・。泣きたいのはお前だけじゃねぇんだよ・・・!」 グッと拳を握り締める・・・ 嘘だ。 心を絞ってかごめを抱きしめたい気持ちを抑えて ひねり出す 嘘・・・ かごめと分かるための 切ない嘘・・・ かごめを現代に帰す為の・・・ そして・・・ 最大の 嘘を 犬夜叉は・・・ 最後に・・ 一番痛い 嘘をつく・・・ 「かごめ・・・。 オレの生ていく道の先には・・・必ず桔梗が待ってるんだ・・・」 (犬・・・夜叉・・・) 犬夜叉の着物の裾を スッとかごめの手が・・・ 離れる・・・ ポタ・・・ ポタ・・・ 足元に生える露草の葉に・・・ 透明の雫が跳ねて飛び散る・・・ かごめの心のように・・・ 「かごめ・・・」 かごめの涙が痛い 痛い 痛い  痛い・・・っ 『嘘だ・・・!オレが言ったことは嘘なんだ・・・!!』 気を抜くとそう今にも叫びそうだ・・・ だが押し込める・・・ 本当の気持ちを・・・ 「・・・。これでわかったろ・・・。もう結論をださなけりゃ誰も前に進めないンだよ・・・」 「・・・」 かごめは放心状態のように 瞳が空を舞って・・・ ”そんなの絶対に犬の兄ちゃんの本心じゃないに決まってる!!” 草太の言葉が過ぎった (・・・) 犬夜叉の嘘の言葉かもしれない かごめはそう感じるが (・・・あたしが・・・。想えば想うほど・・・。犬夜叉の苦悩が増えるだけ・・・なの・・・? そうなの・・・?) かごめはすっと涙をぬぐって 犬夜叉をまっすぐに見つめた。 「わかったよ・・・。犬夜叉の気持ち・・・。あたしがあたしの気持ちが犬夜叉を苦しめてるんだね・・・。 あたしが・・・」 (違う・・・!違うんだ!) 犬夜叉のこころはそう叫ぶ・・・ 「・・・。桔梗と犬夜叉の絆の深さはわかった・・・。ホントにホントにわかった・・・。わかったから・・・」 かごめは犬夜叉に手を差し出した。 「かごめ・・・」 「切ないサヨナラなんていやだから・・・。握手して、笑顔でいたいの・・・。せめて・・・」 そう言うかごめは・・・ 一番切ない 強がった笑顔・・・ 犬夜叉は静かに・・・ かごめの柔らかな手に・・・ 触れた・・・ (・・・嫌だ・・・。離したくねぇ・・・!!この手を・・・) 犬夜叉の心の叫び (離したくない・・・。私と犬夜叉の絆が・・・。切れちゃう・・・) かごめの心の嘆き・・・ 見つめあい 互いを移す瞳の奥・・・ 決別をしようとしているのに 瞳の奥に映る互いの姿が 叫んでる ザワッ・・・ 風がざわめく・・・ 二人ははっと現実に引き戻されたように覚醒する 「・・・。犬夜叉・・・。あんたから先に行って・・・。お願い・・・」 「・・・わかった・・・」 犬夜叉の手と かごめの手が 今・・・ 離れ・・・ た・・・ 「・・・元気・・・でな・・・」 サク・・・ サク・・・ (犬夜叉・・・) 大好きだった広い背中が・・・ 小さくなっていく・・・ 離れていく・・・ サヨナラ 犬夜叉ー・・・ かごめはただ・・・ 御神木の前で立ち尽くすだけ・・・ 切れてしまった・・・? 犬夜叉に切られたの・・・? それとも私がきったの・・・? 何処にあるのかな・・・ 私たちの絆ー・・・ 心という見えない絆を かごめは 探していた・・・
なぁんか結局何かと似たような、ありきたりな展開になってしまった(汗) ・・・原作の犬はこういう下手な嘘はつかないだろうしつけない と思ったんですがちょっとカッコつけてもらいました。 ・・・って犬のアホーー!!!(自分で突っ込む) でも男ってこういう所ありますね。すぐ自分の殻に入るって言うか なんていうか(苦笑) これを書いているとき丁度、「愛し君へ」の最終回ビデオを見ておりまして 「好きだから別れを決意する」そういう想いも犬かごの間には 何か共通するものがあるなぁって感じました。 でも愛し君へで菅野ちゃんが言っていた台詞「彼(藤木直人さん)は好きだからサヨナラするって決めたけど、私は好きだから笑顔で側にいたいの」ってな 台詞がありました。 なんかいいなって想ったのでラストはその台詞をイメージしてます。