「・・・」 風がざわめく 周りの音がかごめの耳だけには何も届けない。 御神木の前で泣いたのは二度目。 現代の御神木の前で・・・ (強くなった筈なのに・・・な・・・) 両足を抱え蹲る・・・ 大声で泣きそうな心を守るように (・・・あたしは・・・。何ができたのかな・・・。みんなと旅をしてきて・・・ 犬夜叉のためになにができたかな・・・) 『もう無理なんだ・・・』 多分、あれは犬夜叉の本心じゃない 別れるための嘘だ (私の想いは犬夜叉に・・・つらい”嘘”をつかせるくらい重いものなのかな・・・ 一緒にいることだけが・・・大事なことじゃない・・・のかな) かごめは心の記憶を辿る・・・ 共に危機を乗り越えてきた仲間との日々 大好きな人と一緒にいた時間 笑って泣いて (・・・なんか・・・。助けてもらってばかりだったな・・・。みんなにも 犬夜叉にも・・・) 『かごめ、大丈夫か・・・!?』 必ず犬夜叉が助けに来てくれる・・・そう信じていた (でも・・・。甘えていたこと・・・なのかな) 桔梗は一人でいつも闘っている 一人で自分の宿敵を討とうと・・・ 弓矢をじっと手に取るかごめ・・・ (私は・・・。私は・・・。犬夜叉の力に・・・なれていたのかな・・・。一緒にいても 足でまといだった・・・のかもしれない・・・) 妖怪も充分に倒せない 桔梗ならいい・・・?桔梗の方が・・・? 犬夜叉と共にいることで・・・自分が犬夜叉の”弱点”に なるのかもしれない (違う・・・。卑屈におもいたくない・・・卑屈になりたくないだけど・・・だけど・・・!) 桔梗は桔梗 私は私 わかっている わかっているけれど・・・! 「わからない・・・わからないよ・・・」 クシャっと前髪を掻き揚げえる・・・ 思考が定まらない 行ったりきたり 理屈と本音の狭間・・・ (ねぇ・・・。"私"は何処に在る・・・?私はどこに居ればいい・・・?) 何を信じたらいいー・・・? ザワ・・・ッ ザワザワザワ・・・ッ 「・・・!」 激しく葉が揺れる・・・ ザワ・・・ッ (え・・・?) ザワザワザワ・・・ッ ”私と犬夜叉が出逢ったのは偶然じゃない・・・” ザワザワザワ・・・ッ ”犬夜叉に会いたかったのー・・・” (・・・私の・・・声・・・?) ”笑って欲しいー・・・” ザワ・・・ッ 風がかごめに届ける・・・ あの時の気持ちを・・・ ”私に何が出来るかわからないけど・・・ずっと一緒にいるー・・・” 声 自分の心の 声・・・ まっすぐに自分の気持ちを信じた 心が (聴こえた・・・) 『私』を否定しないで・・・ 『私』が『私』で在ることに 誇りを持って 決して間違っていない 貴方が注いだ愛情 貴方が積み重ねた時間 貴方が信じて選んだ道 迷うことも 弱音も みんな みんな たった一つの全部"貴方"という心だから・・・ 止まらなかった頬を伝っていた涙が 優しい風で乾いていく まっすぐに背筋を伸ばし かごめは立ち上がる 真っ直ぐに・・・ 御神木に向かって呟く 「・・・見つけたよ・・・。私の”応え”を・・・見つけたよ・・・」 弥勒 珊瑚 七宝・・・ 大切な仲間たちに向かって そして 「犬夜叉・・・。見つかったんだよ・・・」 一番大好きな人にむかって・・・ (・・・!) 何かが吹っ切れたかごめ 自分達の心を弄んだ 淀んだ気配を感じる・・・ 「・・・白・・・童子・・・」 「お前の持つ四魂のかけらを貰いにきたぞ・・・ククク・・・」 不適に笑う白童子・・・ だがかごめの心に恐怖はない (守ってみせる・・・。絶対に守ってみせる・・・!) 胸の中の四魂のかけらを 力強く握り締める・・・