絆を探し求めて
〜白い羽根が舞う頃〜
13話 幻じゃないよな・・・?
「ん・・・」
足と背中に痛みを感じて目覚めるかごめ・・・
「痛・・・。あ・・・。そっか・・・。私・・・おっこちて・・・」
足に痛みが走って起き上がれない・・・。
(どうしよう・・・。今は夜だし・・・。朝にならないと見つけてもらえない・・・)
井戸の入り口には丸いふたが・・・
(まぁ・・・いっか・・・。なんだか・・・。朝まで待っていよう・・・)
眠気が襲ってくる・・・。
かごめの瞼は閉じられた・・・。
「ふふ。何度みてもいい出来の井戸じゃ」
真新しく輝く井戸に惚れ惚れしている七宝。
どうしてそんなに誇らしげなのか、翡翠はわからない。
「でもちっぽーちゃん。お水はいってないよ」
「この井戸は水を汲む井戸ではない。オラたちの願いの井戸なんじゃ」
「おねがい?」
「そうじゃ。かごめの国と繋がって欲しいというすばらしい
友情の証なんじゃ」
「ふうん」
ぺろん・・・と翡翠は井戸のふたをめくってみる。
(あ・・・!?誰か、人がいる!!)
「ねぇねぇちっぽーちゃん!!」
「なんじゃ。悪いがオラ、今遊んでいる暇はない。妖怪退治せねば!!」
「あ・・」
七宝は翡翠を一人置いて、意気込んで森へ入っていった・・・。
翡翠は井戸を覗き込む・・・。
(だ、誰だろう・・・。お、女の人みたいだけど・・・)
薄暗くて顔まではわからない。
(母上にいおうか・・・。でも変な妖怪とかだったら怖いな・・・)
「翡翠ー!!」
「あ、はーい!」
(・・・見なかったことにしよう。うん)
翡翠はそのままふたを閉めたまま珊瑚の元へ走り去る・・・。
「犬夜叉は?まだ隣村の妖怪退治?」
「そうみたいじゃな」
珊瑚の家で夕ご飯中の七宝と翡翠。
(・・・どうしようか・・・。井戸のことを母上に話したほうがいいかな・・・)
囲炉裏の前で珊瑚の顔をうかがう翡翠。
「こらッ!翡翠!」
「は、はいっ」
「ちゃーんとやさいもたべなさい!」
「は、はあい・・・」
ドキドキしながらきのこ汁をすする翡翠。
(・・・そうだ・・・。井戸の人にご飯だけはもっていってあげよう・・・)
翡翠は握り飯一個、こそっと笹のはにくるんでそうっと
懐に隠した。
そして夜、こっそり家を抜け出して井戸へ・・・。
カタ・・・
ふたをそうっとあけて、たいまつで奥を照らす・・・。
(あ・・・やっぱり女の人だ・・・。変な着物着てる・・・)
「ん・・・」
寝返りを打つかごめ・・・
(眠ってるのか・・・)
翡翠は笹に包んだオニギリを縄で縛って井戸におろした。
(・・・。ごめんなさい。明日、ちゃんと母上に言って助けて
もらってあげるからね)
かごめの膝の上に包みは落ちてそっと翡翠は再びふたをしめた
「・・・ん・・・」
ふっと何かの気配に感じて目をあける。
「ん・・・?何・・・これ」
カサ・・・
(あったかい・・・)
笹の包みを開けるとおにぎりが一個・・・。
(・・・草太が置いてくれたのかな・・・。だったら
梯子でもおろしてくれたらいいのに)
ぐうう・・・。
(・・・。梯子より・・・やっぱりおにぎりの方がよかったかも)
かごめはぱくぱくとおにぎりをたいらげた。
(はぁ・・・。井戸の底・・・か・・・ふふ)
戦国の世とこの時代が繋がらなかったこともあった・・・
(・・・あの頃の私は・・・一生懸命だったな・・・)
井戸の向こうに行きたくて
・・・会いたくて・・・。
(ふふ・・・。懐かしい・・・)
あの頃の自分にかえっていくように・・・再び睡魔がかごめを
夢の中に誘う・・・。
そして空には満月が。。。
「・・・ふぅ・・・。あんな雑魚に手間取っちまったぜ」
犬夜叉と弥勒が村に戻ってきた。
「疲れました。私は先に休ませてもらいますよ。
愛する妻と子がまっておりますので」
弥勒は肩をポンポンとたたきながら愛する妻と子供の下へ・・・(笑)
「けっ・・・かっこつけやがって」
でも少しうらやましい。
弥勒には還る”居場所”がある・・・
”おかえり。犬夜叉”
(・・・)
居場所・・・にいるはずの誰かがいない・・・
「っと・・・。オレも一休みし・・・」
(・・・?!)
・・・この匂いは・・・
ドキドキ・・・
確かに香る優しい匂いに緊張が走る・・・
匂いを辿ると・・・それは井戸の中から・・・
「・・・ま、まさか・・・」
以前・・・自分の目の前に現れたかごめは・・・
消えてしまった・・・
カタン・・・
井戸のふたを開け・・・そっと・・・降りてみる・・・
薄暗い井戸の底・・・
そこで寝息を立てているのは・・・
(か、かごめ・・・)
犬夜叉の心が躍る。
とりあえず井戸からかごめを引き上げてそっと地面に寝かせた。
そっくりだし似ているが・・・
(なんか・・・少し年食ってる)
くんくんくん。
犬夜叉、匂いをかいでみる。
(・・・間違いなくかごめの匂いはするけど・・・)
まだなんとなく・・・。
信じられない。
じーっとかごめの寝顔をおすわりの体勢で見つめる犬夜叉・・・
そっと髪をすくってみる。
髪の柔らかさも変わらない
少し震える手・・・
桃色の頬に触れてみる
・・・背中に感じていた温もりそのものだ・・・
(間違いねぇ。かごめだ・・・)
実感が沸いてくる・・・
もう一回
匂いを確かめる・・・
優しい匂いに・・・
(間違いねぇ・・・。かごめだ・・・)
「・・・犬夜叉。おすわり」
「ぐえッ」
かごめの寝言でおすわりさせられる犬夜叉。
(こ、こいつはーー!!何年たってもこれだけは変わらねぇってか(怒))
地面に埋もれながらも犬夜叉は確信した。
(ったく・・・)
すやすや眠るかごめをそっと抱き上げる
(・・・今度は・・・。ちゃんとあったかい・・・)
幻のかごめに出会った。
とても冷たく・・・
そして消えてしまった。
(今度は・・・。ちゃんと・・・あったかい)
本物だと確信して
嬉しさが抑えられない・・・
少しだけ・・・犬夜叉の瞳が濡れていた・・・
「・・・ん・・・」
「おっ。目をあけたぞ!」
目を覚ますとそこには・・・
「・・・七宝ちゃん!?弥勒さま!?珊瑚ちゃん!?」
懐かしい面々が・・・。
「・・・私・・・。夢・・・みてるのかな・・・。夢でなら何度も
皆に会ってたけど・・・」
「夢ではないぞッ!!おら・・・オラはここにおる」
うるうる目から涙いっぱい鼻水いっぱいの七宝。
「七宝ちゃん・・・」
「うう。かごめぇ・・・ッオラずうっと会いたかったんじゃぞ〜・・・」
かごめの胸で大泣きの七宝。
「うん。私も会いたかったよ」
「うわああん・・・」
七宝だけじゃない珊瑚も弥勒も・・・。
(・・・七宝の叫びは犬夜叉の叫びでもあるな・・・)
再会に感激し、弥勒達の家は高揚する。
・・・約一名。
どんな態度を取っていいかわからない半妖の男が囲炉裏の墨で背中を向けている・・・。
(・・・。か、かごめの奴・・・。他の奴らにはあんな・・・)
「犬夜叉」
「!!」
屋根に向かって声をかける
「・・・。久しぶり・・・だね」
「お、お、おう・・・っ」
ドギマギ。
犬夜叉は腕を組んで少し照れくさそう・・・。
「・・・。ホント・・・。久しぶり・・・。私・・・。
年とったけど・・・」
「べ、別にお、お前はかわっちゃいねぇよ、ってかむしろ・・・」
「むしろ・・・?」
(・・・、き、綺麗になったなんていえるわけねぇだろ)
「寧ろ・・・。け、健康そうだ」
「・・・。あ、ありがと・・・」
感動的な再会にはならないのがこの二人・・・。
不器用な言葉をかわしつつも
会えた喜びでいっぱい・・・。
「・・・きょ、今日はもう遅い。ね、寝ろ。足、怪我してんだろ」
「うん」
「・・・。明日、薬草採ってきてやるから・・・」
「ありがとう。犬夜叉・・・」
(///)
かごめの笑顔・・・
外でかけまわりたいような嬉しさがわっと沸く。
明日が早くくればいいっておもうくらいに
期待や希望や
あったかい気持ちが沸いて沸いて沸いて・・・。
(・・・明日になっても・・・。かごめはいるんだな・・・)
やっと会えた。
ぬくもりのある手に
やっと会えた
会えた・・・。
その夜は犬夜叉もかごめも・・・
嬉しさで興奮し眠れなかったのだった・・・。